前作『Butterflies』以降に発表された配信限定シングルを多数収録し、3年半の濃密な歩みを凝縮した9作目。ジプシー音楽からトラップに至るさまざまな手法を駆使してアレンジをアップデートしながらも、弾き語りの“ジャングルジム”に象徴される藤原基央の歌の力はもちろん本作でも不変だ。ラストではネット上で段階的に公開され、拡散されていった“流れ星の正体”がついに全貌を表し、アルバムを見事に締め括っている。

 


オーロラが太陽からの贈りものだとしたら、『aurora arc』はBUMP OF CHICKENからの贈りもの。光を構成する要素は、電気の粒子じゃなくて、切なさと優しさと、彼らが辿ってきた〈ここ〉までの道筋か。

収録曲は、ドラマやTVアニメなどのタイアップで、すでに耳馴染みになっている楽曲が多く並ぶ。タイアップの際は、自分たちが表現したいことと対象作品とが重なるところを描くという歌詞。それはリスナー自身もきっとそうで、歌詞にいる自分を見つけ、重なり合ったところに強く共鳴する。人に容易に触れられたくないけど、誰かに気づいてほしいような、〈心の奥〉にある柔い部分。忘れていた、もしくは忘れようとしていた痛みと、確かな温もりが、彼らの音楽には一環として流れている。しかしアルバムになると、そういった曲もそれぞれ新鮮な輝きを放つから不思議だ。濃密で鮮やかな音と言葉、そして世界観に圧倒させられる。

煌めくようなサウンドと静かな決意に満ちた“Aurora”に、過去と現在の重層的な時間の表現が切なく美しい“記念撮影”、過去曲との言葉のリンクにストーリーを感じる“リボン”など、どこを切りとっても一曲一曲が宿すメッセージ性の光は強い。〈時間と距離を飛び越えて/君のその手からここまで来た/紙に書かれた文字の言葉は/音を立てないで響く声〉〈君の空まで全ての力で/旅立った唄に気付いてほしい〉と歌うミディアム・ナンバーの“流れ星の正体”は、メンバーとリスナーの関係性を思い起こす。あらゆるコラボレーションやライヴを経て、彼らが3年半で描いた美しい弧。BUMP OF CHICKENのいま〈ここ〉に至るまでの軌跡を記したようなアルバムだ。