10代ミュージシャンの祭典〈未確認フェスティバル〉の初代グランプリ。全員19歳。BUMP OF CHICKENASIAN KUNG-FU GENERATIONRADWIMPSなど、小中学生の頃に聴いたバンドを〈レジェンド〉と呼び、地元・堺の先輩KANA-BOONをコピーしていたというから、なんたって若い。日本のロック・シーンに次なる新世代が現れたなと実感させる4人組、Shout it Out。彼らは初の全国流通盤となるミニ・アルバム『Teenage』を引っ提げて、シーンに高々と名乗りを上げる。

 「もうすぐ終わってしまう10代を締め括る一枚にしようと思って曲を作ったので。どの曲も、いましか綴れない言葉だと思います」(山内彰馬)。

Shout it Out Teenage Eggs(2015)

 本作は、山内が16歳の時に書いたという“光の唄”から始まる。シンプルでスピーディー、そしてメロディアスかつ爽快なギター・サウンドは、KANA-BOONと地続きとも言えるだろう。だが、バンド名の通りに熱い思いを大声で叫ぶ豪快なヴォーカルのおかげで、そのポップネスはグッとエモーショナルに響く。

 「その頃、スポーツをやっている友達が大きなケガをしてしまって、そのことを思いながら、少しでも背中を押してあげたいと思って作った曲です。思っていることを全部そのまま言葉にして、並べたら出来たという感じですね。“光の唄”で初めて人に対して歌うことを覚えてから、〈これが自分のやり方なのかな?〉って16歳ながらに思って、そこからはいつも、伝えたい〈あなた〉を歌の中に存在させるようになりました」(山内)。

 タイトル曲の“Teenage”は、学校や社会の中で抑圧を感じている同世代のために。“生きている”は、いつもそばで支えてくれる家族のために。テーマも表現も極めてシンプルだが、それが疾走するギター・ロックに乗せて〈あなた〉に向けて歌われる時、誰にも似ていない力強いメッセージに変わる。その象徴が、生きることに悩む同世代に向けて、〈その涙が生きてる証拠だ〉と歌い放つ“若者たち”だ。

 「ちゃんと自分の思ってることを言霊にできていて凄いと思います。〈僕の思っていたことはこれだ〉ということが、そのまま歌詞になってるんですよ」(細川千弘)。

 「10代って〈自分は何のために生きているんだろう?〉と考えることが多いし、周りにもそういう人が多くて、〈死にたい〉とかTwitterに書き込んだりするんですよ。僕もそう思うことはあるけど、〈じゃあそういう時に自分は何をしてほしいだろう?〉と思った時に、〈みんな誰かに認められたいんだな〉と思って書いたのが“若者たち”です」(山内)。

 スケールの大きな3拍子のロック・バラード“Teenage”や空間系のエフェクトによる浮遊感が心地良い“明日の空”など、歌と言葉をど真ん中にバックを固めるスタイルは確立済み。4人の結束力は抜群だ。

 「自分たちの一番の武器は、言葉とメロディーなので。どの曲も言葉を立たせるために、アレンジを考えてます」(新山大河)。

 「いままでは感覚でやっていたものを、全員で意見交換しながら作っていったので。どの曲も完成度が高いと思います」(露口仁也)。

 10代の現在進行形を鮮やかに切り取った、純度100%のロック・アルバム。しかし『Teenage』は〈10代の〉〈10代による〉作品だが、〈10代のための〉アルバムではない。彼らの視線はより先を見据えている。

 「僕たちが二十歳を超えて〈思い出した10代〉を書くんじゃなくて、10代の自分が〈10代のいま〉を歌うことによって、大人の人が聴いても〈こういう時代があったな〉ってちゃんと思い出せるものにしたかったんですよ。同世代だけじゃなく、聴いた人が少しでも前を向く力を持ってもらえたらなと思います」(山内)。

 今回はヒリヒリした感触の曲ばかりになったが、「次回からはもうちょっと優しい面も見せていけたら」と山内は笑う。どこまで成長していくか、しっかりと追い続けたい大器の登場だ。

 


Shout it Out
山内彰馬(ヴォーカル/ギター)、露口仁也(ギター)、新山大河(ベース)を中心として2012年に結成された、大阪は堺を拠点に活動するロック・バンド。2015年10月に前ドラマーが脱退し、新たに細川千弘を迎えて現体制に。同年は5月にミニ・アルバム『Prologue』を配信/ライヴ会場限定で発表し、8月にはタワーレコードの一部店舗でシングル“17歳”をリリース。さらには10代限定のロック・フェス〈未確認フェスティバル〉の初代グランプリを獲得したほか、〈イナズマロックフェス〉〈MINAMI WHEEL〉といった大型フェスにも出演を果たすなど知名度を高めるなか、このたび初の全国流通盤となるミニ・アルバム『Teenage』(Eggs)をリリース。