シンガーとしての非凡な才能を披露したデビュー作から3年ぶりとなる2作目は、ストリングスやベースなどを除くすべてのサウンドを彼女自身の声の多重録音やヒューマン・ビートボックス、ボディー・パーカッションのみで構築。イギー・ポップのポエトリーやキース・スタンフィールドのラップをアクセントにしながらもレイドバックした世界観はそのままに、表現者としての野心を詰め込んだ会心作。

 


30~40年代辺りの空気感を湛えたノスタルジーな音楽性と、柔和で癒しをもたらす美声が評判を呼び、〈Tiny Desk Concerts〉やジュールズ・ホランドの〈Later〉へも出演を果たしたアラ・ニ。良くも悪くもそのレトロさが目立った感もあるが、このセカンド・アルバムでは前作の面影を所々に残すも、楽器をほぼ排除して〈声〉の多重録音を中心に制作。まるでビョークの2004年作『Medulla』に通じる手法だが、奇抜さや実験性に走るということはなく、ポップなアレンジにより聴き易さは担保されている上、彼女の〈声〉の持つ能力を最大限に引き出している。懐古主義を払拭するどころか、こんなにも先鋭的とは!