INTERVIEW

H ZETTRIO 『RE-SO-LA』 愉快なトリオはオリンピック・イヤーも止まらない!!

H ZETTRIO 『RE-SO-LA』 愉快なトリオはオリンピック・イヤーも止まらない!!

〈笑って踊れるピアノ・トリオ〉、H ZETTRIOが前回Mikikiに登場したのは2018年3月リリースの『Mysterious Superheroes』のインタヴューのこと。それ以降、ツアー、ライヴ、フェス出演、TVにラジオ、H ZETT M氏の独演会に外部仕事、そして2019年に入ってからは毎月1日に新曲を配信リリース(しかもその全曲がiTunesジャズ・チャートで1位を獲得)と、彼らの活動をざっと洗い出しただけでも超多忙ぶりがうかがえる。そんな彼らが、今年配信リリースした楽曲を1枚にまとめたアルバム『RE-SO-LA』を2020年の1月1日にリリースする。2019年も突っ走り続け、2020年も継続して毎月新曲リリースすることを発表。まったくとどまることを知らないH ZETT M(ピアノ/青鼻)、H ZETT NIRE(ベース/赤鼻)、H ZETT KOU(ドラムス/銀鼻)の3人に、この1年を駆け足で振り返ってもらいつつ、オリンピック・イヤーでもある来年についての抱負も伺った。

H ZETTRIO RE-SO-LA (EXCITING FLIGHT盤) apart.RECORDS(2019)

H ZETTRIO RE-SO-LA (DYNAMIC FLIGHT盤) apart.RECORDS(2019)

マグロのように泳ぎ続ける

――先日、「ミュージックステーション」を観ていたら椎名林檎さんのバックに3人が出ていらして驚きました。SNSを見ていても結構ザワついて。

H ZETT NIRE(以下、N)「やっぱりみなさんよく観てくださっていたみたいで。けっこう反響はありましたね」

H ZETT KOU(以下、K)「ああいう現場も刺激になりますね」

――3人がMikikiに登場されるのは前作『Mysterious Superheroes』以来で、そこから今作まで1年以上空きましたが、その間もそういったいわゆる外仕事もこなしつつ、毎月新曲を配信リリースもして、ツアーやライヴも開催し、ずっと休みなく活動されている印象があります。

H ZETT M(以下、M)「そうですね、もうマグロのように。止まると死んじゃう、みたいな(笑)」

一同「(笑)」

――(笑)。この1年を振り返ってみて、〈疲れた〉とか〈休みたい〉みたいな気持ちはないですか?

M「瞬間瞬間ではありますけど、こうやって通して振り返ってみると、やっぱり動き続けていないとダメだなって思いますね」

N「あと、休むのがうまくなったかもしれないですね。移動中、瞬間的に気持ちを緩めて寝る、みたいな。昨日の帰りの飛行機もすぐにうつらうつらして、両隣見たら2人ともすでに寝てて(笑)。そういうところでバランスを取るのがうまくなってきたんじゃないかな」

K「こないだは帰りに真ん中がMさんで、2人(NIREとKOU)にMさんが寄りかかって寝てたもんね(笑)」

M「(笑)。そういうのはありますね。こないだも新幹線に東京から乗って、気付いたら(目的地の)福山だったんです。そこらへんはうまくなりました」

――なるほど。そんな走り続ける3人が、12か月連続でリリースした配信シングルをまとめたアルバム『RE-SO-LA』が2020年元日にリリースされます。一方で、アルバムの完成形がある程度見えていて、そこから毎月シングルを切っていったようにも考えられるかなと思います。

M「鋭い!」

――(笑)。アルバムの全体像はいつごろから見えてきたんですか?

N「録ってる時期はけっこうバラバラなので、徐々に徐々にという感じですかね」

M「実は全体像が見えたのはここ何日かだったりして……(笑)。マグロとしてひたすら泳いでいると海がどれだけ広いか見えていなくて」

K「(笑)」

――〈虫の目・鳥の目〉なんていう言葉もありますが、〈マグロの目〉ですか(笑)。

M「横しか見てないっていう(笑)。まあ実際に全体像が見えてきたのは(9月の)“NIRE The Bassman”あたりですかね」

――ということは楽曲が4分の3ほど出揃った辺りですね。 “NIRE The Bassman”は今作のカギになる曲ですか。

M「そうですね。2020年に向けた曲です」

N「そうなんですか(笑)?」

――Twitterで、2020年を〈ニレニレ〉と読んでる方もいらっしゃいましたね。

N「(笑)。今作で2020年の活動に備えてほしいなと思いますね。2019年に出たものがまとまっているので」

――よくミュージシャンであるのが、まとまった制作期間があって、リリースして、ツアーをするというサイクルを繰り返すスタイルですけど、H ZETTRIOがそうではない理由はなぜですか?

M「このスピード感が我々にフィットしてるというか、やりやすいんですよね。作ったらすぐ出したい。もう、自分の動きを止められない。マグロですから(笑)」

K「(爆笑)」

――(笑)。よくレコーディングからリリースまで、ミックスやマスタリングの期間があって数か月空くなんてアーティストもいますが、H ZETTRIOはやはりその期間も短いんですか?

N「曲によりけりですけど、直前に録ってすぐミックスしてすぐリリースっていうことはよくありますね」

M「レコーディングからミックスまでがすごく短いですよね、一週間くらいか」

――なるべく旬をお届けする。

M「マグロだけに(笑)。何か月もじっくりレコーディングするっていうのはやったことないですね」

N「リリースしてすぐにお客さんの前で〈出来立ての新曲を聴いてください〉って言えるし、そういうサイクルを回していくのが合っているんでしょうね」

――楽曲を制作する脳と、演奏する脳の使い分けみたいなところではどうですか? 常にマルチタスクで動いていなきゃいけない気もするのですが。

M「別と言えば別なんですけど、作曲も演奏も互いに関与し合っているので一緒でもあるんですよね。ただ、重きを置くのは演奏のほうで、演奏はけっこうカロリーを使うし、技術を上げるためには練習が必要なので、その時間は必要です。分析と研究は絶えずしていますね」

――ずっとそういう状態に身を置いているというのは大変なことではないですか?

M「全然苦痛ではなくて、楽しみながらやってます。曲はサッと出来ちゃうんで(笑)。潮の流れをうまく泳いで、エサを見付けたらガッと食べるだけ。……もうこの例えは合ってないかもしれないですけど」

一同「(笑)」

N「〈エサを見付けたらガッと食べるだけ〉、太字で書いておいてください(笑)」

M「ただ口を開けていればエサが入って来るんですよ。どう環境に適応して生き抜くか、サヴァイヴァルです」

――アルバムを13曲通して聴いてみると、どの曲も雰囲気だったりBPMだったりがバラけていて、ちょっとマグロの例えに引っ張られすぎかもしれませんが、いつも同じエサを捕まえているわけではないように思えます(笑)。〈前回がバラードだから今回はロック寄りで行こう〉みたいなことはあるのでしょうか?

M「そういうのがまったくないわけではないです。〈次はどんな曲が出るんだろう?〉っていうお客さんの期待に応えたいし、前とは違うほうがおもしろいですからね」

――そういう時にレパートリーが尽きたり、手癖が似てきちゃったりとかはないですか?

M「おもしろい音楽を聴いてインプットするといろいろアイデアが湧いてくるので、レパートリーが尽きるってことはないような気がしますね」

 

収録曲とともに振り返る2018年後半~2019年前半

――それでは駆け足にはなりますが、今作の収録曲について伺っていきます。まず曲が出来た順番は、シングルのリリース順と一緒ですか?

M「そういうわけでもないです」

N「でもあらかじめ全部出来ていたわけでもないですね。入れ替わったり、ちょっとずつ録ったりしながら、ですね」

――では制作時期と前後するかもしれませんが、配信のリリース順に伺います。まずは2018年の7月に、今作の「EXCITING FLIGHT」盤のボーナス・トラックである“Make My Day”が配信リリースされています。この曲は高校野球の応援ソングでもあったからか、爽やかな風が吹く感じや、勇気が出るような印象を持ちました。

M「この曲は本当爽やかですよね」

K「スポーツが似合いますよね」

M「水泳とか、スポーツ系が似合う曲にしようって話があったんです。タイトルは意味深ですよね。曲の雰囲気にあった単語を選んだと思うんですけど」

――そして〈秋の大感謝祭〉やホールツアー〈Feel Good !!! 18/19〉があり、今年の1月1日の“Journey”より、毎月1日に12か月連続でシングルを配信リリースする企画が始まります。この曲はタイトル通り旅立ちをイメージさせる曲で、新たな一年のスタートに合いますよね。

M「そうですね。〈始まり〉っていいですよね」

K「2月にあった静岡のグランシップでのライヴで、この曲のMVをお客さんと一緒に録るというのが決まっていたので、そういうテーマで作った曲ですね。大きな船をかたどった場所だったので」

――なるほど。そして2月は“幻想ノスタルジック”。この曲はイルミネーション・ショーをイメージして作成されたそうで。

M「そうです。沖縄の東南植物楽園のショーとCMソング用に作った曲で、そこが広大な敷地にものすごい数のイルミネーションがあって、すごいキレイなんです。その説明書きに〈幻想的なノスタルジック〉って書いてあって、タイトルはそれをそのまま使いました(笑)」

――(笑)。3月の“Lovely”はかわいらしい曲で、特に細かく動くベースに耳を奪われました。

M「はい。ベースが聴きどころですね」

N「そうですかね(笑)。でもリリースしたら〈何ですか、このベースは!?〉って言われました。ジャズっぽい解釈だとジャズですけど、ジャズじゃなくてロックというか、ポピュラー音楽に馴染む弾き方をしていて、そういうのはずっと研究してきたので、その〈いま版〉という感じです」

――4月の“Relax Time”は、前からあった曲だそうですね。

N「はい。前のアルバムを作っていた頃に一度録音した曲で、そこから作り直したりもして」

――癒し系の曲で、MVも涼しげですよね。

K「しますよね。あのMV、好きです」

――そして4月と5月に、東京と大阪でこどもの日のライヴがあって、そのサブタイトルにもなったのが5月リリースの“Virtual World (Jazz)”です。怪しさもあり、カッコよさもあり、3人の爆発力もある曲です。

M「この曲はYAMAHAの〈Real Sound Viewing〉という、プレイヤーの演奏を記録して、本人がいなくても楽器が鳴るという技術がありまして、そこに我々が起用されまして」

K「楽器だけ置いてあって、人がいないのに弦が揺れてたり、スネアが鳴ったりしてね」

M「それで〈Virtual〉という単語を使ったタイトルになりました。ちょうどこの曲が出る時期だったので、こどもの日のライヴ・タイトルもこれになったということです」

――ライヴのタイトルということで言うと、続く6月の“気分上々 -Woo - he!! -”は、現在まで続くツアーのタイトルにもなっています。

M「そうですね。〈ツアーが始まりますよ!〉という曲です、時期的に」

――オフィシャル・サイトの曲の説明には〈ロングツアーで演奏が長く熟成されていくように〉とありますが、半年以上に及ぶツアーで楽曲は熟成されていってますか?

N「いい感じになっていってますね」

K「例えば1か月にバッと日程を詰めてツアーをやるよりも、長いスパンでやったほうが熟成具合もいいんですよ。やっていくうちに変わっていくこともあるし」

――前回のインタヴューでは、KOUさんはドラムスのセッティングがどんどん変わっていってると仰っていましたが、今年も変わっていますか?

K「そうですね。特にシンバルの種類だったり位置だったりはいろいろ変わっていってます。あとはドラムの材質がバーチっていう硬い素材からメイプルに変わりました。ご機嫌です」

――そして7月にリリースされたのは“Birds Fly”。アルバムに収録されているのは〈Album ver.〉です。

M「はい、イチから録り直しました」

――この曲は来年公開の映画「囀る鳥は羽ばたかない」のテーマ曲でもあって、原作コミックを読んで書き下ろした曲ということで。何と言いますか、けっこう……アレな設定の漫画で。

K「(笑)」

M「けっこうなアレです」

――簡単に言ってしまえば、暴力団員のBLモノと言いますか。禁断の愛というか、そういう要素は曲にも反映されているんでしょうか?

M「僕は個人的に、音楽に性的なものを感じるというのはよくわからないことなんで、ダイレクトなフィーリングは入ってはいないですけど、周りの雰囲気とか、心情とか、情熱的とか、硬派なイメージとか、そういったところから攻めました」

――キーボートとベースがユニゾンで寄り添うところもあって、これも禁断の愛的な……(笑)?

一同「(爆笑)」

N「それは……(笑)」

M「それは意識してなかったです(笑)」

――それは冗談ですけど(笑)、MVでも原作漫画とコラボしていて、映画でどうマッチするのか楽しみになりました。

「囀る鳥は羽ばたかない」の原作コミックとコラボした配信シングル版“Birds Fly”のMV。これとは別にアルバム・ヴァージョンのMVも公開されている
 

N「この曲だけでなく、映画の劇中曲をかなり録っていて。劇伴なので一曲一曲は短いですけど、それもどう使われるのか楽しみです。〈こういうキャラクターのこういうシーン〉って指定されたんでしょ?」

M「そうそう。〈この人はこういう性格で、こういうことしてるシーン〉っていうのをもらいました」

N「この映画の音楽を担当することが決まりましたっていう発表をしたら、海外の人からもコメントがたくさん来て、作品のファンが世界中にいるんだなあと実感しましたね。〈やったー!〉って歓喜している女性ファンの方が世界中でいらして、すごくうれしいことですね」

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