ただ良い音を探究してきた3つの流れが、ふたたびひとつの強靭なアンサンブルを紡ぎ上げる。ついに登場したセルフ・タイトル作品に込められた思いとは……?

うちらこういうのやってたよね?

 クラブ寄りの新たなセッション・カルチャーの盛り上がりを体現した『DON’T CARE WHO KNOWS THAT』、よりジャンルレスなポップ・ミュージックへとシフトした『DAWN』という2枚のオリジナル・アルバムを発表し、多くのリスナーの耳を虜にするも、2013年に活動休止をアナウンスしたOvall。その後、Shingo Suzuki、関口シンゴ、mabanuaの3人はそれぞれプロデューサー/サポート・ミュージシャンとして多岐に渡って活動し、国内外におけるネオ・ソウルの再評価や、新たな世代のジャズ/ヒップホップの台頭を受けて、復活が待望視されるようになると、2017年に再始動。幅広いフィールドでライヴを行ってきた。

 「4年間はお互い別の仕事やソロ活動をしつつ、同じ現場になることも結構あったので、コミュニケーションはずっと取ってて。そんななかで、誰からともなく〈そろそろやろうか〉って話になったんです。〈Ovallやらないんですか?〉って言ってもらうことがすごく増えたのもあって、そこは音楽シーンの移り変わりもいくらか影響してるんでしょうね。ヒップホップをはじめ、ブラック・ミュージック熱が世界的に強まってきて、〈うちらこういうのやってたよね?〉みたいな感じもあって」(関口)。

 2017年12月に再始動ライヴを渋谷WWWXで開催してから約2年、3枚目のオリジナル・フル・アルバム『Ovall』がついに完成。フィーチャリング・ゲストは最小限に抑え、インスト・バンドとしての在り方を見つめ直した作品となった。

Ovall 『Ovall』 origami(2019)

 「作りはじめてから、実は一回軌道修正をしてるんです。最初は歌モノがけっこう多くて、でもその全部を僕が歌うとソロとの差がつかなくなっちゃうし、とはいえフィーチャリングに頼りすぎると、自分たちはやっぱりプレイヤーなわけで、演奏を見せるっていう意味ではどうなのかなって。あとサブスクの話で言うと、言語の壁は少なくなってきたとはいえ、やっぱり日本人アーティストはインストのほうが回るんですよね。そういう話をスタッフともして、じゃあ、半分以上インストでいいんじゃないかなって」(mabanua)。