待ちに待った13年ぶり、そしてピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリーの2人体制となってからは2枚目となる新作。ノエル・ギャラガーらを手掛けたD・サーディとピート自身による共同プロデュースで、ほぼすべての曲が2019年に書かれたもの。内容は初期のブリティッシュ・ビート風から、名作『Tommy』を彷彿とさせる美しいナンバー、お得意のシンセのシーケンスが入ったハード・ロックまでザ・フーらしい曲が並ぶ。ただアルバムの持つ雰囲気は決定的に過去作と違い、どことなく悟りを開いたかのような美しさに満ちている。音楽的ピュアネスに溢れ、瑞々しく、良い意味で枯れた感がまったくないのだ。恐らくキャリア終盤の作品になるだろうが、常にクールさを追い求めるモッズ魂が健在の一枚だ。