今から60年前、ブリティッシュビートが燃え盛り、英国から世界に飛び火していった。ザ・ビートルズの大成功によって決定的になったビートバンドのブーム。彼らの出身地にあやかってリバプールサウンドやマージービートとも呼ばれたこのロックムーブメントにおいては、UK各地からグループが登場、1964年以降全米を席巻し、ブリティッシュ・インヴェイジョン(イギリスの侵略)と称された。そんな流れが大きな波になった1965年の作品を紹介しよう。掲載は概ねリリース順になっている。
英国での2ndアルバム。収録曲はチャック・ベリー“You Can’t Catch Me”やマディ・ウォーターズ“I Can’t Be Satisfied”、オーティス・レディング“Pain In My Heart”、デイル・ホーキンス“Susie Q”といったロックンロール、R&B、ブルースのカバーが中心。後年に比べてバンドの個性が十分に発揮されているとは言い難いが、ミック・ジャガー&キース・リチャーズのコンビで3曲を書き下ろしており、特に“Off The Hook”はのちのザ・ローリング・ストーンズの萌芽を感じさせる軽快なロックナンバー。
ロンドンのトッテナム出身、前年にシングル“Glad All Over”でザ・ビートルズからチャートの1位を奪い、人気を競ったザ・デイヴ・クラーク・ファイヴ。彼らの5作目は、カール・パーキンスの名曲“Blue Suede Shoes”のカバーなどで聴けるようにデイヴの力強いドラムによる勢いに満ちたロックンロールで突き進む。マイク・スミスの熱いシャウトを交えた嗄れ声も魅力的だ。収録されているのはシングル“Come Home”を筆頭にオリジナル曲が大半で、ザ・ビートルズっぽさを感じるコーラスワークの“Your Turn To Cry”などバンドの底力を感じさせる充実作。アルバムタイトルも最高。なおオリジナルアルバムには未収録だが、この年はシングル“Over And Over”で全米1位を獲得。
1960年代のロンドンを象徴するザ・キンクスの2作目。“Tired Of Waiting For You”“Set Me Free”といった曲は前年のヒットシングル“You Really Got Me”のギターリフ作法を受け継いでいるが、演奏も歌詞も内省的に深化している。アコースティックギターを用いたフォーキーでブルージーな“Nothin’ In The World Can Stop Me Worryin’ ’Bout That Girl”や“So Long”、軽快なロックナンバー“Wonder Where My Baby Is Tonight”、リフ主導の“Come On Now”といった曲の数々でレイ・デイヴィス率いるバンドの個性が表れている。3曲を除いてレイの自作曲が占めているのもポイント。


