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これでLEARNERSをまだ続けられるな

――紗羅さんが実際に歌詞を書き始めたのはいつごろからだったんですか。

紗羅「歌詞自体は以前からずっと書いてたんです。それをずっと溜めこんでいて。溜まってるんだけど、なかなか吐き出せない。そういう意味でずっとコンフューズしていて」

チャーベ「今回はそれを〈勇気を出して世に出してみました〉ということなんですよね。最初に送られてきたヴォイスメモがまさに〈これは勇気を振り絞って送ってきたに違いない〉というものだった」

紗羅「もうね、告白みたいな感覚(笑)。曲もないのにアルバムのリリース日が決まっている状態で、残された時間も少ないなかで〈こんなのができたんですけど……〉と恐る恐るチャーベさんに送って」

チャーベ「僕のほうはもう〈きたー!〉っていう感じでしたね。紗羅から送られてきたヴォイスメモのなかでもすぐイメージが浮かんだものをバンド内で共有したら、これまでバンドの核心にあまり触れてこなかった(古川)太一(ドラムス)が〈おお、これは!〉と盛り上がって、鍵盤ですぐにコードを拾ってくれたんです。そうやってできたものを“シャンブルの恋”にしました。これでLEARNERSをまだ続けられるなと思いました」

――終わりそうな流れだった?

松田"CHABE"岳二「僕はそう思ってました。でも、この曲ができたことによって次の扉を開けることができたんです。 太一だって何か変わらないといけないと思っていただろうし」

『HELLO STRANGER』収録曲“シャンブルの恋”
 

――“シャンブルの恋”の原型となるメロディーと言葉はどうやって紗羅さんから出てきたんですか?

紗羅「 “シャンブルの恋”のヴォイスメモは今年の1月3日に送ったんですけど、1日中換気扇の下に座りながら曲を考えていたら、ポンと出てきたんです。それまでに作り溜めていたものは自分のために書いていたものだったけど、この曲はLEARNESのことをイメージしているうちに出てきたメロディーと言葉だったので、バンドとしてもしっくりきたんでしょうね」

――この5人でこれまでカヴァー曲を散々やってきたからこそ出てきた言葉とメロディーだった?

紗羅「うん、それはあると思う」

チャーベ「イメージの共有もしやすかったしね。(制作は)本当にギリギリの進行だったんですよ」

 

生きることを肯定する歌、“つきかけ”

――“つきかけ”と“WIPER BLUES”という2曲の作詞作曲クレジットは紗羅さんとチャーベさん2人の連名になっていますが、こちらはどうやって作ったんでしょうか。

チャーベ「自分の歌詞を紗羅が歌うのはもう似合わないと思っていたんで、彼女にリライトしてもらおうと思ってたんです。自分が最初に歌詞を書いて、それを紗羅の言葉に置き換えてもらおうと。“つきかけ”は1行目だけ僕が書きました」

『HELLO STRANGER』収録曲“つきかけ”
 

紗羅「〈月の満ち欠けに僕ら心かき乱されるけど〉という歌詞とそれ以降のメロディーの鼻歌だけが送られてきたんです。チャーベさんが仮歌を歌っているからめちゃくちゃポップに聞こえたんだけど、私の当時の精神上、ポップなものを書ける気がしなくて一度断ったんですよ。〈ごめんなさい、私には書けないかも〉って」

――なるほど。

紗羅「でも、そのあとにハマ兄(浜田将充/ベース)が鎖骨を折ったり、太一くんに2人目の子供が生まれたり、チャーベさんの息子が高校生になったり、LEARNERS男子チームにもいろんなことが起きて。それで〈これは応援歌にしたほうがいいんじゃないか〉というアイデアが浮かんできて、そうしたら一行目以降の歌詞が出てきたんですよ」

チャーベ「〈すごいのがきた!〉と思いましたね。僕は今までいろんな歌を書いてきたんで、もう自分で歌詞を書かなくてもいいんですよ。自分で自分の言葉に飽きてるし、今は人から出てくるものに興味がある。紗羅の場合はまさに今溢れ出している状態だし、そんな状態に間近で接していられるのは本当に楽しいですよね」

――“つきかけ”は本当に名曲だと思いますよ。こんな曲をライブでやったら、フロアがめちゃくちゃなことになるんじゃないですか。

紗羅「えっ、嬉しい」

――あと、応援歌というより〈生きることを肯定する歌〉という感覚があるんですよね。その意味では2020年の歌としてのリアリティーがあって、まさにGEZANやNOT WONKと同時代の歌という感じがする。

チャーベ「わー、それは嬉しい。しかもその歌詞を書いてるのが紗羅っていうのがね。だからね、こんな未来が待ってるとは思ってもいなかったんですよ。紗羅との活動はもともと行き当たりばったりで始めたところがあったんだけど、それが2人で一緒に曲を作ることになるとはまったく想定していなかった。バンドって無理して続けるものじゃないし、LEARNERSも終わっちゃうのかなと思っていたので、〈よくここまで来れたな〉という喜びがあるんですよ」