コラム

ジェシー・レイエズ(Jessie Reyez)『Before Love Came To Kill Us』ビリー・アイリッシュも惚れ込んだカナダの歌姫

ジェシー・レイエズ(Jessie Reyez)『Before Love Came To Kill Us』ビリー・アイリッシュも惚れ込んだカナダの歌姫

 「13歳の時にジェシーの音楽を見つけて、ファンになったの。それで私が音楽を始めてから、彼女の“Gatekeeper”を聴いてすごく感動したのを覚えてる。〈いままでの人生で聴いた中でいちばん素晴らしい曲だ〉って自分のアカウントに投稿したのよ。その後ジェシーに会って意気投合した。私たちは何度も会ったわ」。

 TV番組「ジミー・キンメル・ライブ!」に出演した際、そう語ったのはビリー・アイリッシュ。彼女がこの3月からスタートしたワールド・ツアーでサポート・アクトとして参加しているのが本稿の主役、ジェシー・レイエズだ。互いのファンの間ではもともと仲が良いことで知られていたそうだが、これをきっかけにその存在感はさらに大きくなっていくに違いない。

 コロンビアにルーツを持つジェシー・レイエズは、カナダはトロントの出身。子どもの頃から父親に教わってギターを弾き、ハイスクール時代には曲を書きはじめていたという。大学を辞めて自身の音楽を追求し、家族とマイアミに移り住んでバーテンダーやバスカーをしていた時期もあったそうだが、〈The Remix Project〉が運営するレコーディング・アーツ・アカデミーを受講するため帰国し、DVSNのダニエル・デイリーから指導を受けたことが道を拓いた。2014年のキング・ルイ“Living In The Sky”を皮切りにいくつかの客演を経験するなか、“K Goodnight”でリンクしたティム・サビーの後見を受ける形で制作に入り、2016年夏には代表曲となるシングル“Figures”のリリースに漕ぎ着けたのである。

 パーティーネクストドアのフロント・アクトとしてツアーに帯同した2017年は飛躍の一年となった。“Figures”が本国カナダでマルチ・プラチナ認定を受けるヒットとなったのだ。その成功に続いたのがファーストEPの『Kiddo』で、そこからショートフィルムも公開された楽曲こそ、冒頭の発言でビリーが挙げた“Gatekeeper”である。スクリューされた不気味な男声が挿入されるこの陰鬱なナンバーは、後にジェシーが明かしたところによると、音楽プロデューサーのノエル“ディテール”フィッシャー(ビヨンセ“Drunk In Love”他)から受けたハラスメントの実体験を描いたものだという(ノエルは複数の女性から性的不正行為で告発されている)。結果的に『Kiddo』はUSのR&Bチャートにも初めてランクインし、2018年のジュノ・アウォードで4つのノミネート、VMAでも2つのノミネートを受けるに至った。

 そんな躍進を後押ししたのが外部アーティストとのコラボだ。カルヴィン・ハリス『Funk Wav Bounces Vol.1』では2曲をコライトし、そのうち“Hard To Love”ではメイン歌唱を担当。彼女を気に入ったカルヴィンはサム・スミスとの“Promises”やデュア・リパとの“One Kiss”などでもジェシーを共作者に迎えている。他にもエミネム『Kamikaze』では2曲に起用され、ジョナス・ブルー“Wherever You Go”でもヴォーカルを担当。ショーン・メンデスやルイス・キャパルディら人気者との共演も実現させた。一方で、2018年には重鎮ベイビーフェイス制作の“Body Count”を含むセカンドEP『Being Human In Public』を発表。同作は2019年のジュノで年間最優秀R&B作品に輝き、先日のグラミーでも最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバムにノミネートされている。こうした着実な広がりを経て届いたのが初のフル・アルバム『Before Came To Kill Us』だ。

 

 先述の“Figures”やブラック(6lack)を迎えた“Imported”(オリジナルはセカンドEPに収録)など人気の既発曲も含みつつ、メランコリックな空間系のトラックと野性味のある濃厚な歌唱を軸にした作風はアルバムにも通底している。美しいバラードの“Love In The Dark”、コクのある歌い回しが光る幻惑的なトラップ・ソウル“Ankles”、オールディーズ風の味付けで送るフリオ・イグレシアスの素晴らしいカヴァー“Crazy”など、主役の幅広いポテンシャルを提示する内容に仕上がっている。控えめに言っても今年を代表する一枚になることは間違いないだろう。

 

 


ジェシー・レイエズ
カナダはオンタリオ州トロントの出身、91年生まれのシンガー/ソングライター。幼い頃からギターを弾いて音楽に親しみ、高校生の頃に曲作りを開始。2016年に“Figures”をリリースし、翌年の“Shutter Island”を経てファーストEP『Kiddo』を発表する。自身の活動と並行してカルヴィン・ハリス、ロミオ・サントス、ブギー・ウィット・ダ・フーディ、エミネム、ジョナス・ブルー、キャロルGらとのコラボを経験し、2018年にリリースしたセカンドEP『Being Human In Public』はグラミーにノミネートもされる。“Imported”や“Love In The Dark”などの先行ヒットを経て、このたびファースト・フル・アルバム『Before Love Came To Kill Us』(FMLY/Island)をリリースする。

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