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星野源とのコラボレーションも話題となった英・南ロンドンのシンガー・ソングライター/プロデューサー、トム・ミッシュ。スムーズなポップ・アルバム『Geography』(2018年)がここ日本でもロング・ヒットとなり、〈FUJI ROCK FESTIVAL ’20〉への出演が決まっている彼から、挑戦的な新作(そして、名門ブルーノートからのデビュー作でもある)『What Kinda Music』が届けられた。

同郷の個性派ドラマー、ユセフ・デイズとの共演アルバムである本作では、前作とは異なるミッシュの魅力が引き出されている。2人のアンサンブルを独特の音響でとらえた『What Kinda Music』。自由かつ実験的に音やリズムで遊ぶミッシュ&デイズのコラボ作に、ライターのimdkmが迫った。 *Mikiki編集部

TOM MISCH,YUSSEF DAYES What Kinda Music Beyond The Groove /Blue Note/Caroline(2020)

 

さまざまなジャンルがクロスオーヴァーする南ロンドンの代表トム・ミッシュ

マルチ・プレイヤーでありプロデューサーのトム・ミッシュは、さまざまなジャンルがクロスオーヴァーするサウス・ロンドンのシーンを代表するひとり。2018年にリリースされたファースト・フル・アルバム『Geography』は、ヒップホップ的なビートメイクとソウルやディスコ/ブギーのフィーリングが混じり合い、ダンスフロアとベッドルームを地続きに行き来するユニークな親密さを湛えた一作だった。

心地よくグルーヴするループの上で、絶妙なタイム感とメロディーセンスで紡がれるミッシュのギター。クラブ・ミュージックのプロダクションとプレイヤーとしてのスキルの幸福な融合は、ロック、ジャズ、ヒップホップ、ベース・ミュージックやビート・ミュージックが交錯するロンドンを映し出している。

トム・ミッシュの2018年作『Geography』収録曲“It Runs Through Me (feat. De La Soul)”

 

UKジャズの新鋭ユセフ・デイズとの〈大きな実験〉

そんなミッシュが、同じくサウス・ロンドン出身のドラマー、ユセフ・デイズとコラボレートした。ブルーノート・レコードからリリースされたフル・アルバム、『What Kinda Music』だ。デイズはユナイテッド・ヴァイブレーションズ(United Vibrations)やユセフ・カマール(Yussef Kamaal)での活動でも知られる、UKジャズの新鋭。音楽的背景は異なるものの、デイズのドラミングもエクレクティックだ。ジャズ・ファンクを基礎としながらも、現代的なダンス・ミュージックにも対応する鋭くタイトなサウンドを聴かせる。

育ちも年代も近いこともあり、ミッシュが10歳のときには地元のタレント・ショーでデイズの演奏を見かけていた……なんてエピソードもあるが、直接知り合ったのは『Geography』のリリースの頃だという。ビート・テープをつくるつもりでスタジオでセッションを重ねるうち、フル・アルバムでも足りないくらいの楽曲が生まれた。

「テーマがあるとしたら、〈元々はビート・テープのはずだったものがより大ごとになった〉ということ。完成した作品を改めて聞き返してみると、かなり繊細でドリーミーだよね。でも、それは最初から意図していたわけじゃない。やってみたらそういうものが生まれただけで。ある意味大きな実験のようなものさ」(トム・ミッシュ:以下同)。

『What Kinda Music』収録曲“Nightrider (feat. Freddie Gibbs)”