花の色を溶かした土を踏みながら向かう、桃源郷への道のりのサウンドトラック。聴いていると、プリミティヴな色合いの絵画のなかを歩いているかのようだ。懐かしい幻想的な子守唄か、はたまた新たな知覚を拡げてくれる触媒か。
マンチェスター生まれで、現在はロンドンを拠点に活動するコンポーザー/サックス奏者のアラバスター・ デプルーム。そんな彼の新作は、ジェフ・パーカーやエンジェル・バット・ダヴィドの作品をカタログに持つシカゴのレーベル、インターナショナル・アンセム(International Anthem)からのリリースだ。UKジャズの爆弾、コメット・イズ・カミング(The Comet Is Coming)も参加。過去の音源と新曲を織り交ぜて編んだ作品ながら、各曲それぞれが自然と引き寄せられたかのように世界観が統一されている。ジャズがあり、古楽があり、チンドンがあり、エチオピアやケルトのトラディショナル・フォーク(民謡)がある。久石譲による「天空の城ラピュタ」のスコアにも感化されたそうだ。
つまり、これはあこがれの果てに鳴っているエキゾチック。それはいつも心のなかにあるはずなのに、いつでも辿り着ける場所ではない。その地図を失くしたとき、この音楽はあなただけの道標になるだろう。