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曲のいちばん美味しいところを探っていく

――ただし、『Sessions』が、いわゆるリミックスやリエディットと異なるのは、人の曲ではなく、自分たちの曲を再解釈しているところですよね。

JxJx「そうかもしれないですね。で、自分たちの曲を再解釈するのに、客観的に楽曲を分析するという、オリジナルを作っていたときにほとんどやらない作業から始めるんです。リハーサル・スタジオに集まって、昔の記憶を辿りつつ、音を出しながら、ああでもないこうでもない、と。

ただ、作った当時は楽譜がないというか、厳密には今もコード譜くらいなんですけど。当時の曲の作り方が、基本のコード、メロディーに対して、どう応えるかを各メンバーがそれぞれ答えを出して、最終的に良かったところで完成。という、なんともややこしいやり方をしていたので、そんな作り方をしていた曲を冷静に分析すると、まあとんでもない構造の曲だったりするんです」

松井「違法建築(笑)」

MAURICE「そして、違法建築の箇所を直そうとするんですけど、直してみたら、曲が上手くまとまらないという現象も起こりましたね」

――つまり、音楽理論上はよろしくないけれども、バンドの初期衝動性や音のまとまりを活かす際に、理論上の不正解が正解になることがある、と。

JxJx「そうなんですよね。すべてを理論的に正しく直していけばいいわけではないことがわかったので、うまく聴こえるように工夫してみたり、曲によってはリアレンジの作業には結構手間暇がかかりましたね」

――作品のテーマに関してはいかがですか?

JxJx「作品のコンセプトは前作同様、〈程よく緩く、気持ちいい感じ〉をめざしたところは変わらずなんですけど、前作は今のバンドのモードに合う曲を収録したのに対して、今回の特徴は今のバンドがライブに組み込むのが難しそうな曲もぐっと引き寄せて挑戦したところですかね。これは自分で言ってて恥ずかしいところでもあるんですけど、うちらは時期によって全然音が違ったりして、リスナーの皆さんを混乱させたりもしてきたという反省点があり(笑)。

ただ、そうは言いつつも作ってる人たちは一緒ですし、バンドの基礎となる部分は昔も今も変わっていないということを伝えたい、と(笑)。だから、今のモードからいちばん距離がある2008年のアルバム『THE ACTION』収録の2曲“Move or Die”と“A Man From The New Town”を取り上げてみました」

――先ほどMAURICEさんは、一発録りの『Sessions』にはライブ・アルバム的な側面もある、と仰っていましたけど、じっくり聴いてもらうことを意識して、演奏が程よく抑制されているところは、いわゆるライブ・アルバムと異なるところなのかな、と。

MAURICE「そこは意識してました。ライブならではの熱気を演奏に注入して、あたかもライブを体験するように聴いてもらうのではなく、家でリラックスしながら聴ける一発録りの作品として、演奏のテンポをわずかに下げたり、上げたり、その微調整にギリギリまで時間をかけましたね」

JxJx「タイムレスで、ずっと聴ける作品。いつ聴いてもやっぱりいい感じ、ちょうどいい感じ。僕がリスナーとしてダンス・ミュージックの好きなところでもあるんですけど、その感覚を自分たちの作品でも実現してみたくて、録音自体は一発録りなんですけど、その後のミックスやポスト・プロダクションは丁寧にやりました」

――いつ聴いてもちょうどいい感じ、塩梅を実現するためには何が必要なんでしょうね?

JxJx「前作も同様ですが、今回も制作を通じて思ったのは、曲のいちばん美味しいところを幸運にも見つけることができたら、そこにフォーカスして、なるべくシンプルな形にしていってあげる、というところですかね。あと、このシリーズって、何か新しいことをやってやるぞっていう、そういう力みがないところも幸いしているような気がしてます」