ほとんど実話!なブルーノ・メジャーの歌詞
――歌詞は誰にでも起こりそうな日常の一場面を切り取ったものが多いようですが、いま話に出た“Regent’s Park”のようにストーリーのあるものもあって、そのバランスもいいですね。何割くらいが実際のあなたの体験に基づいたもので、何割くらいがフィクションなんですか?
「じゃあ、1曲ずつ振り返ってみようか。まず“Old Soul”は間違いなくリアル。フィニアスと共作した“The Most Beautiful Thing”もリアル。“Nothing”は2つのパートからできていて、前半はフィクション、後半はリアル。“Regent’s Park”は先にも話したロジャー・ラドクリフの視点で書いてみたフィクションだけど、実はかつての自分の恋愛事情も含まれているから、フィクション+リアル。“Old Fashioned”は自分の気持ちを述べてる曲だけど、特定の誰かについての歌ではない。
“She Chose Me”はランディ・ニューマンの歌だから除外するね。“Figment Of My Mind”は間違いなくリアル。“Tapestry”もそう。“I’ll Sleep When I’m Order”も実話だし、最後の“To Let A Good Thing Die”も実話だ。ってことで、大半が自分の経験をもとに書いたことになるね。いまこうやって考えてみるまで気づかなかったよ(笑)」
――気づいてもらえてよかったです(笑)。ところで、前作でも今作でも組んでいるファイロとはどのように出会って、どういう部分で息が合っているんですか?
「彼と会ったのはリヴ・ドーソン(Liv Dawson)という素晴らしいシンガーのために“Tapestry”を書いたときだったんだ。今回の僕のアルバムにも入れた曲だけど、それはファイロと初めて会った日に一緒に作った曲なんだよ。そのときに彼と僕の相性はすごくいいんじゃないかと感じて、僕のアルバムもプロデュースしてほしいと頼んだんだ。彼はエリザ(Eliza)やサム・ウィルズ(Sam Wills)といったアーティストとも一緒にやっている、ものすごい才能の持ち主だよ。
素晴らしいギタリストであり、ピアニストであり、プロデューサーでもある。でもそれより何より、彼はとんでもなくポジティヴなエネルギーを持っているんだ。実は僕はけっこう落ち込みやすいタイプで、書きあげた曲に対して〈こんなのクソだ!〉って口に出しちゃうこともあるんだけど、ファイロはその曲を聴いて〈めちゃくちゃいいじゃん! アルバムに入れるべきだよ〉って言ってくれたりする。そういう彼の熱意がなければアルバムに入らなかった曲もあるんだ」
限りがあるから人生は美しい
――今回のアルバムのなかでは、まずオープナーでリード曲でもある“Old Soul”に惹きつけられました。メロウな曲ですが、ドラムンベースのように小刻みなビートがリードしていくアレンジがとても新鮮で。
「この曲はアルバムのなかで唯一、本物のドラム・ビートで始まるんだ。ほかの曲のビートはファイロか僕がプログラミングしたものなんだけど、これはそうじゃないから新鮮な感じに聴こえるんだと思うよ」
――〈時間はたっぷりあるけど やることはあまりないんだ〉という歌詞は、ロックダウンされてみんながおとなしく家にいる現在の状況を歌っているようですね。
「うん。まったくの偶然なんだけど、いま僕らが置かれてる状況にピッタリくるものになっちゃったね(笑)」
――歌詞に関して言うと、最後の“To Let A Good Thing Die”がとりわけ胸に響きました。ここでは〈永遠を望んではいけない だって永遠に続くものなどないのだから〉〈ときには良いことも諦めなきゃいけないからさ〉と歌っていますが、最近になってこのような境地に至ったわけですか?
「前に付き合っていた人がいて、お互いにすごく好きだったんだけど別れることになってしまった。僕は世界中をツアーで回っていたし、僕はロンドンだけど彼女はLAに住んでいて、それで関係を続けていくのは無理だった。いい関係であるはずなのに続けられないってこととか、素晴らしいはずなのに終わってしまうことってあるんだよね。
今回のアルバム全体に流れているのはそういったセンチメントであり、もっと言うと、それが人生なんじゃないかって思うんだ。僕だっていつかはここからいなくなる。でも人生が美しいのは、そういう儚さがあるからなんだよ。きっと、限りがあるから人生は美しいんだと思うんだ」

LIVE INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL ’20
2020年8月21日(金)、22日(土)、23日(日) 新潟・湯沢 苗場スキー場
https://www.fujirockfestival.com/
※ブルーノ・メジャーは23日に出演