Photo by Hart Lëshkina

ビョーク他豪華ゲスト陣も参加! 更なる変化/進化を求めて辿り着いた先鋭的なポップ・ミュージック集

 前作『Arca』(2017年)では、奥行きのある音響空間のなかで内省的でフォーキーな歌を響かせ、これまでの過激で挑発的な電子音楽家としての側面だけでは捉えきれない魅力を開陳したアルカ。今年配信リリースされた60分を越えるシングル“@@@@@”では、『Arca』から一転するかのように、ビートと上モノが目まぐるしく変移していく衝撃の電子音絵巻を披露。そして、ここに届けられた通算4作目のアルバム『KiCk i』は、同じ場所に留まることのないアルカが更なる変化/進化を求めて辿り着いたエクスペリメンタルで革新的なポップ・ミュージック集だ。

 盟友であるビョークをはじめ豪華参加陣を交えながら、ほぼ全編で自身の歌がフィーチャーされた本作は、ほとんどが2~3分台のなかで声、ビート、シンセ音が激しく表情を変えていき、刺激的なサウンドを形作る。アブストラクトなビートとスペイシーな上モノ、ビョークのエモーショナルなヴォーカルが圧倒的な “Afterwords”、扇動的なシンセ・リフとトラップを思わせるビートに、〈ネオ・フラメンコ〉の旗手=ロザリアの妖艶な歌が乗る“KLK”、一定の像を結ぶことのない実験的な電子音で攻めるソフィーを迎えた“La Chiqui”などのハイライト曲はもちろん、〈レゲトン〉を未来的にアップデートしたサウンドが本作を象徴するような“Mequetrefe”、民族音楽と尖ったビートが衝突する“Riquiqui”、プロデューサー/シンガーのシャイガールを迎え、インダストリアルなビートと変調されたヴォーカルが高速で変移していく“Watch”、『Arca』に通じるフォーキーな歌とコーラスにフォーカスした“No Queda Nada”など、バラバラの個性を持ちながら、何れも実験性とポップさが拮抗した緻密で密度の濃い楽曲が連打される凄まじい内容。先鋭的なポップ・ミュージックの奥に、アルバム・タイトル通り変化することで状況を突破(キック)していこうとする意志を感じさせる傑作だ。