コラム

ブルーノ・メジャー(Bruno Major)『To Let A Good Thing Die』憂いを秘めた歌声とジャジーなギターからロマンティシズムが香り立つ

ブルーノ・メジャー(Bruno Major)『To Let A Good Thing Die』憂いを秘めた歌声とジャジーなギターからロマンティシズムが香り立つ

 甘い歌声とジャジーなギターから香り立つロマンティシズム

 クラシカルでモダン。そして、普遍的でありながらパーソナルな温もりも感じさせる歌。イギリスのシンガー・ソングライター、ブルーノ・メジャーは、そんな優れたバランス感覚と才能の持ち主だ。毎月1曲ずつ新曲を発表して、1年間で1枚のアルバムにまとめたデビュー作『A Song For Every Moon』(2017年)で注目を集め、友人でもあるサム・スミスのUKツアーの前座に抜擢されたメジャー。新作となる本作にはビリー・アイリッシュの兄、フィネアス・オコネルがソングライティングのパートナーとして参加。妹の作品にも深く関わっているオコネルは、妹を通じてメジャーの曲を知って気に入り、何か一緒にやろうと声をかけたらしい。

BRUNO MAJOR 『To Let A Good Thing Die』 HARBOUR/BEAT(2020)

 もともとソングライターとして成功することを夢見ていたメジャーは、ジェローム・カーンやコール・ポーターといったアメリカの作曲家を意識して曲を書いていた。彼が敬愛するランディー・ニューマン“She Chose Me”のカヴァーも収録した本作でもアメリカン・スタンダードへの憧憬を感じさせて、クラシカルなジャズやソウル・ミュージックをベースに甘美なメロディーを紡ぎ出している。レコーディングはメジャーの家の庭にある小屋に作ったスタジオで行われ、マイクは一本だけの最少限度の設備。使用する楽器も最少限度に抑えていて、しっかりと練りこまれたアレンジにもメジャーのこだわりを感じさせるが、ギタリストとしてキャリアをスタートさせたメジャーのジャジーなギター・プレイも聞きどころ。オールドスタイルな曲なのに古めかしさを感じさせないのは、ヒップホップやクラブ・ミュージックを通過したビートが生み出す心地良いグルーヴや繊細にデザインされたサウンド・プロダクションのおかげだろう。そして、そっと胸の内を打ち明けるような憂いを秘めた歌声も魅力的。親密さと洗練されたソングライティングが溶け合うなか、気品に満ちたロマンティシズムが香り立つようなアルバムだ。

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