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意味のある歌

 その¥ellow Bucksは客演した“Buss­in'”の中で影響源としてAKの名前を真っ先に挙げている。

 「小学生の頃に俺の“Ding Ding Dong~心の鐘~”を聴いて衝撃を受けたって話してくれた彼と、まさにその曲をサンプリングしたトラックで俺と一緒に曲と作るっていうのは、ヒップホップ的なストーリーですよね。それを企てたのは俺のDJもやってくれてるDJ RYOWで。俺らがデビューした頃は、名古屋は日本のヒップホップでも屈指の層の厚い街だったんだけど、最近は全国的な存在になるアーティストはあまり出てこなくて。だから、俺が現役中に推せるような奴が出てきてほしいと思ってたところに登場したのが¥ellow Bucksだったんですよね。やっぱりスター性があるし、〈ヤングトウカイテイオー〉と名乗るからには、駆け上がってほしい」。

 MC TYSONとSWAY、R-指定を迎えた“Speedin'”では、コラボする4人が〈車〉をテーマにマイクリレーを展開し、その切り口の違いの妙も興味深い。

 「レーベルメイトでもありつつ、華々しいエンターテイメントの世界にいるSWAYと、アンダーグラウンドで名前を上げてるMC TYSON、そしてフリースタイルの世界から登場したラップ・ゴッドのR-指定っていう組み合わせは、俺じゃないとできないだろうなって」。

 また、AKやSWAYと同じくDef Jamに所属するIO(KANDYTOWN)とは“B-Boy Stance”を通して、Bボーイとしての態度を形にする。〈ヒップホップ=Bボーイ〉という意識が以前よりも希薄になっている現在だからこそ、刺激を受ける曲であり、刃頭のトラックと共に、温故知新を感じるような一曲だ。

 「IOとは接点が見えづらいというか、生態系が違う感じがあるかも知れないけど(笑)、よく俺のライブも観に来てくれるし、曲も昔から聴いてくれてて、同じ波長を感じるんですよね。そしてヒップホップがハイブランドも含めたファッション業界と密接な関係になってきてるいま、持たざる者から、そういった世界と対等に仕事をするようになった二人で、改めて〈Bボーイ〉 ってことをラップで表現したいなと」。

 そして〈死〉や〈人生〉をテーマにした“If I Die”では、ZORNと共にシリアスな世界を歌う。

 「コロナ禍の中で、NYの友達のラッパーも亡くなったり、〈いつどうなるかわからない〉という情況が世界規模で起こった時に、このテーマを歌う必要があると思ったんですよね。もし俺が死んだとしても、受け継いでほしい気持ちや、届けたい気持ち、俺の背中を書こうと思ったんですよね。せっかくヒップホップを背負ってここまできたなら、ZORNと二人で意味のある歌を残したいと思って」。