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©2020 NHK, NEP, Incline, C&I

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 神戸で映画を撮る、という設定が企画の始まりであり、黒沢清は神戸生まれ。もっとも、いわゆる地域性や土着性を抽象化することこそ彼の映画の前提であり、〈故郷〉に特別な想いを抱いているとも考えにくいが……。

 「神戸出身だけど、それがどうした、というか、自分の作品に出身地を反映させようと思ったことはありません。その薄情さがいかにも神戸出身らしい、と神戸のひとに言われます(笑)。ただ、昔の風景が神戸にそう残っているわけでもなく東京近郊などでロケをしましたが、神戸を知っているだけに、これはさすがに神戸に見えない……といった、ふだんはあまりないような〈場所のリアリティ〉をめぐる葛藤はあった。言葉もそうで、さっきの話と裏腹に、偽の神戸弁を話されると物凄く厳密に矯正してしまう(笑)。ですからメインキャストを横浜出身にし、標準語でOKにしました。夫婦の屋敷の女中を演じた恒松(祐里)さんだけは大変だったでしょうね。彼女は関西弁なんか話したことがない。でも頑張っていました。演技がちゃんとしていれば、方言のリアリティは実はどうでもいいんですよね」

 


黒沢清 (くろさわ・きよし)
1955年7月19日、兵庫県出身。大学時代から8ミリ映画を撮り始め、「スウィートホーム」(88)で初めて一般商業映画を手掛ける。その後「CURE キュア」(97)で世界的な注目を集め、「ニンゲン合格」(98)、「カリスマ」(99)と話題作が続き、「回路」(00)では第54回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。2016年には初めて手掛けた海外作品「ダゲレオタイプの女」が公開されるなど、国内外から高く評価されている。「スパイの妻」で第77回ベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞。

 


映画「スパイの妻〈劇場版〉」
監督:黒沢清
脚本:濱口竜介/野原位/黒沢清
音楽:長岡亮介
出演:蒼井優 高橋一生 坂東龍汰 恒松祐里 みのすけ 玄理 東出昌大 笹野高史
配給:ビターズ・エンド(2020年 日本 115分)
◎10月16日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー!
wos.bitters.co.jp