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制作後の心境の変化

 こうした切実な思いに端を発した『Life is...』だが、参加したアーティストたちの個性と主役の変幻自在なヴォーカリゼーションが溶け合ったポップ・アルバムに結実しているのは入野作品らしいところ。先述の和田のほか、言葉遣いもユーモラスなMega Shinnosukeによるファンキー・ポップ“ユウランセン”、めくるめく昂揚感を与えてくれる津野米咲(赤い公園)作の“Sunny Side Story”、Kai Takahashiが書き下ろしたチルなベッドルーム・ポップ“Tokyo”、ノスタルジックなメロディーが光る佐藤千亜妃製の“グッド・バイ”など、偶然の出会いがあったり、もともとファンだったりという理由から実現した初タッグ曲が新鮮な風を吹かせるなか、歌唱における自身の挑戦となったのはこの2曲だとか。

 「向井太一君の曲、“Alive”はいまだに難しいなって思いますね。キーがすごい低いところからすごい高いところにいったりするし、あと太一君らしさ全開のグルーヴ感というか、聴いてて心地良いのに歌ってみると全然歌えないってことが発生したり。息継ぎも大変で……もう大変なことしかない(笑)。
 あとchelmicoもデビューしたときからずっと好きで、〈chelmico大好き、イェイ!〉っていうノリで曲をお願いしたんですが、上がってきたデモを聴いたときに、〈そうだ! ラップを歌わなければならないんだ!!〉と気付きました(笑)。流石にサビはメロディアスに……というオーダーをして、詞は全部お任せでした。二人は収録にも来てくださって、僕は基本的に二人の仮歌の完コピをテーマにやってたので、緊張しましたね。〈めっちゃいい〉って言ってくれてるけど、ホントかな?って(笑)」。

 作家が投げ掛けた意外性や驚きも楽しみながら制作した本作の13番目のピースとなったのはオープニングを飾る“やってみればいい”。尾崎雄貴が贈った80s趣味全開の開放的なエレクトロ・ポップだ。

 「尾崎君の“やってみればいい”は、彼がGalileo Galileiのときにやってた音楽と、今のBBHFとかソロでやってる音楽、いろんな方向性があるので、どんな曲になるんだろう、というドキドキやワクワクがありました。今回のアルバム、作りはじめたときはホントにどうしよう、つらい、自分のためにも、それで影響を受けて悲しんでる人たちに向けても何か良い〈気〉を作り出さなきゃみたいなのがあって、今もその気持ちはありますけど、それが楽曲の制作を通してもうちょっと前向きな考え方になっているので、作りはじめと終えたあとではだいぶ心境の違いがありますね。一番最初に作った“だって愛は半端ないじゃない”がアルバムの最後に、最後に出来た“やってみればいい”が一番最初になっているのはそういう理由なんです」。

 本作の楽曲を生演奏で楽しむ場も期待したいところ。世情を考慮しながら、今後の展望についての探究は続く。

 「せっかくここまでの曲が出来上がったので、ライヴはやりたいですね。僕が去年出演した『ボディガード』  という舞台で使用されていた曲をモチーフにして、〈終わりよければすべてよし〉みたいなものをテーマにDECO*27さんに書いてもらった“S.H.E.”って曲は、みんなで歌うことを意識して作ったりしてますし。だから本来はお客さんを入れてやりたいけど、無観客だからこそできる演出もあると思うので、いろんな可能性を考えていきたいと思います」。

『Life is…』に参加したアーティストの関連作品。

 

入野自由の近作を紹介。

 

『Life is…』に参加したアーティストの関連作品。