インタビュー

澤和樹『ヴァイオリンでうたう日本のこころ』童謡や唱歌など世代を超えて楽しめるプログラムでおうち時間を楽しく

写真:新津保建秀

澤和樹一家と東京藝術大学、2つの〈ファミリー〉が奏でる〈日本のこころ〉

 澤和樹は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(初代)、紀尾井シンフォニエッタ(現紀尾井ホール室内管弦楽団)のコンサートマスターを歴任、自身の弦楽四重奏団(澤クヮルテット)も率いるヴァイオリニストだ。教育活動にも早くから力を入れ母校、東京藝術大学音楽学部の教授、学部長を経て、2016年には美術学部も含めた全学の第10代学長に就いた。

澤和樹,澤亜樹,蓼沼恵美子 『ヴァイオリンでうたう日本のこころ』 キング(2020)

 新譜『ヴァイオリンでうたう日本のこころ』では“荒城の月”“故郷”“からたちの花”“浜辺の歌”など、長く親しまれてきた童謡・唱歌23曲をソロ、娘で藝大フィルハーモニア管弦楽団コンサートミストレスの澤亜樹との二重奏、夫人でピアニストの蓼沼恵美子を交え披露する。「故郷の和歌山で今も健在な92歳の母も、私たちファミリーの合奏を楽しみにしています」

 〈ファミリー〉には二重の意味がある。澤家と、東京藝大〈一家〉だ。ジャケットに使った日本画は第8代学長の平山郁夫の作品、題字は第9代学長で現文化庁長官の宮田亮平による揮毫と「私の演奏も含め、歴代3人の学長の合作です」。さらに音楽学部の前身、東京音楽学校を明治政府が1887年(明治20年)に設立した目的の1つが「国民に西洋音楽の基礎を植え付けるための歌の作詞作曲者を輩出する」ことにあった。「“椰子の実”を作曲した大中寅二さん以外、すべて東京音楽学校の教員や卒業生による作曲でした」。CDは年代順に収録、資料的価値も意識している。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、外出などの自粛要請が相次いだ2020年4月、澤は藝大が本拠を置く東京都台東区の服部征夫区長から「ステイホーム期間、家庭で世代を超えて楽しめる音楽番組を一緒につくっていただけませんか」と打診された。在学生による室内楽も候補にあがったが、服部区長が「誰でも知っている日本の歌」を現在は台東区に所属する「旧東京音楽学校奏楽堂で演奏してほしい」と重ねて要請した結果、現在の選曲に落ち着いた。

 「最初は声楽科の先生に歌をお願いしようとも思ったのですが、飛沫の懸念もあってヴァイオリンでの演奏に。歌詞は字幕スーパーで入れ、結果的にはカラオケ代わりに自宅で、テレビを見ながら一緒に歌えるメリットも発揮できたのです」。高齢者にとってステイホームは足腰のフレイル化(衰え)だけでなく声帯の機能低下も招き、声を出して童謡唱歌を歌う効用は大きい。

 澤自身による編曲は「あまり凝らずにオリジナルを尊重したので、誰にでも歌えるはずです」。二重奏では師のジェルジ・パウクとNAXOSに録音したバルトークの“44のヴァイオリン二重奏曲”の作曲手法も念頭に置いたという。近く楽譜にまとめて出版する。

 


LIVE INFORMATION

和歌山県民文化会館 開館50周年記念コンサート~奏でる50周年~
○11月22日(日)14:00開演
会場:和歌山県民文化会館
日本センチュリー交響楽団 飯森範親(指揮)澤和樹(vn)宮下直子(p)山澤慧(vc)
www.wacaf.or.jp/

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