イベント&ライブ・レポート

大黒摩季や岩崎宏美、タケカワユキヒデらがバルカン交響楽団と平和を祈る

特別な祭典JAPAN-EUROPE CLASSICS FESTIVALをレポート

平和を祈念する音楽家たちが結集。
ポップス・ロック&オーケストラによる音楽の祭典が誕生!

 ステージ上も客席も距離を保った空間に今までとの違いを感じるなかで、コンサートは始まった。演奏するのはバルカン室内管弦楽団。指揮を務める栁澤寿男が紛争で心傷ついた音楽家を集めて、民族共栄を目的に設立したオーケストラだが、団員が入国出来ず、今回は日本人メンバーによる特別編成オーケストラが演奏を担った。

 出演するシンガーは5組、トップを切ったのは大黒摩季だ。鮮やかなピンクのドレスに心華やぎ、彼女の元気なMCにしばらく忘れていた興奮が蘇ってきた。ハスキーボイスで“夏が来る”や“ら・ら・ら”などのヒット曲を歌うなかで、「栁澤さんが選んだ曲です」と紹介されたのが映画「写真甲子園0.5秒の夏」の主題歌“latitude~明日が来るから~”。歌詞に込められた大黒摩季の思いと、バルカン半島で人々の苦悩に接してきた栁澤寿男の思いが共鳴し合うパフォーマンスだった。そして、“ら・ら・ら”では「ハミングなら大丈夫!!」と観客に呼びかける。これも逆境の時ならではの知恵。マスクのエチケットを守りつつ、嬉々としてハミングする声が会場に優しく響いた。

 2番目の登場は、黒のタキシードをスマートに着こなした尾崎裕哉。父・尾崎豊が遺した名曲“僕が僕であるために”や“I LOVE YOU”などを歌うが、父が学校や社会への反抗心を綴った曲を素直に、そして一音一音丁寧に歌っていく。オーケストラの演奏にのった時の、気品あるヴォーカルに親子の違い、尾崎裕哉の魅力をあらためて知る思いがする。

 3番目は、ソプラノ歌手の幸田浩子。歌劇「ロミオとジュリエット」から有名な“私は夢に生きたい”と、“アヴェ・マリア”をマイクなしで歌う。前者はロミオがジュリエットに初めて出会い、一目惚れした後、それを感じ取ったジュリエットが歌う歌で、美しいコロラトゥーラが夢見る思いに包んでくれる。一方で、後者は祈りを捧げる歌。選曲に込められた幸田浩子の思いが伝わる2曲だった。

 4番目に岩崎宏美が登場し、トリを飾ったのはタケカワユキヒデ。若者の間で昭和のカルチャーがブームになるなか、ともに昭和を代表する名曲を持つ。岩崎宏美は、“ロマンス”、“思秋期”、“聖母たちのララバイ”と、2018年にさだまさしが提供した“残したい花について”の4曲。タケカワユキヒデは、“ガンダーラ”、“モンキーマジック”、“ビューティフルネーム”、“銀河鉄道999”の4曲を歌う。世代を超えて愛されているメロディーに、自然と客席から手拍子が起きる。出演者の誰もが久しぶりのコンサートに、〈ライブで歌える喜び〉や〈日常の幸せのありがたみ〉といった言葉を口にするなかで、マスクをした観客がその歓びに応える最強の手段は、手拍子だ。日本人にとって音楽を楽しむノリであると同時に、出演者と、また観客同士が一体感を得られる表現方法なのだと痛感する。

 エンターテイメントを巡る環境は、少しずつ改善されている。観客の多くはこの日、その一歩を嚙みしめたのではないだろうか。

 


JAPAN-EUROPE CLASSICS FESTIVAL with バルカン特別交響楽団
World Peaceful Concert From Japan

会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
○出演
栁澤寿男(指揮)/バルカン特別交響楽団
岩崎宏美/大黒摩季/タケカワユキヒデ/尾崎裕哉/幸田浩子
○曲目
大黒摩季:“夏が来る、そして…”“latitude~明日が来るから~”“ら・ら・ら”他
岩崎宏美:“聖母たちのララバイ”“ロマンス”“思秋期”他
タケカワユキヒデ:“銀河鉄道999”“ガンダーラ”“ビューティフルネーム”他
尾崎裕哉:“I LOVE YOU”“想像の向こう”“僕が僕であるために”他
幸田浩子:グノー:歌劇「ロメオとジュリエット」~私は夢に生きたい 他
編曲・監修:宮本貴奈
編曲:岩城直也