2022年11月25日(金)に3年ぶりのニューアルバム『Wonderful world』をリリースするASKA。待望の新作の発表を前に、10月29日に東京・丸の内の東京国際フォーラムにて〈GET THE CLASSICS ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-〉を開催した。栁澤寿男が指揮を、京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団が演奏を、そして横浜少年少女合唱団が合唱を担当したこの公演で、ASKAはどんな歌を聴かせてくれたのだろうか? 当日の模様をお届けする。 *intoxicate編集部


 

 2022年、ドラマティックなライヴをいくつも残したASKA。そういうイメージを抱いた理由は、予期せぬ事態と対峙して動揺しながらも決して立ち止まらず進もうとする彼の不屈の根性が、ツアーやフェス、イヴェントなどさまざまなステージ上で炸裂していたのを体感できたからであるが、10月29日、東京国際フォーラム ホールAで行われた〈GET THE CLASSICS ASKA Premium Symphonic Concert 2022 -TOKYO-〉もまた劇的な瞬間がいくつも重なりあう忘れがたいライヴとなった。

 序曲“Breath of Bless”から“未来の人よ”へと続くオープニングから56人+1人による強固な一体感をあますことなく見せつけられる。オーケストラが奏でるシンフォニックな調べによって、歌詞に登場するセピア色の部分が魅力的に滲みだし、“MIDNIGHT 2 CALL”や“僕のwonderful world”といった楽曲がいつも以上に切なく迫ってくる。さらに言うと、ASKAの歌からこぼれてくるエモーションによってそれぞれの楽曲が内包するドラマ性が従来以上に鮮やかな色彩を湛えて表現されている印象だ。考えてみれば、演奏を担当する京都フィルハーモニー室内合唱団特別交響楽団との共演も今年に入ってもう3度目。これらの公演はツアーではなかったけれども、ここまで彼らと良き時間を共有してきたことがわかるような親密な空気感がASKAの歌声からまろやかさを引き出す効果を生んでいたことも記しておきたい。

 “君が愛を語れ”や“PRIDE”と快調に身体を鳴らしまくりながら、すべての音に魂を吹き込んでいくASKA。MCでは「年に何回か、歌いたくない!という気持ちになるけれど、今日はドンピシャだった」などと苦笑いしていたが、1曲歌い切るごとに、言葉の温度が徐々に上昇していくのが手に取るようにわかり、それに比例して曲に備わっているさまざまなメッセージの訴求力や説得力も強まっていき、より切実さをもって響いていく。

 ライヴに浸りながら、いつものようで、いつもではないと思っていたことがあった。あちこちの場面で垣間見たASKAの表情だ。“UNI-VERSE”を歌っていたときには少年のような笑みを浮かべていたかと思うと、次の“歌になりたい”では学校の先生を思い出させるような優しく温かい眼差しで舞台上を見つめていたりする。ちなみに彼を先生のような心持ちにさせたのは、コーラス隊として参加していた横浜少年少女合唱団の面々。どこまでもフランクなASKAに終始緊張しながら対応する彼女たちがなんともほほえましくてずいぶん和まされたものだが、23名の聖なる声が降り注ぐなか、ASKAが雄々しい歌声を轟かせる両者のコラボレーションは、個人的に本公演のハイライトとして記憶に残っている。

 “はじまりはいつも雨”にはじまり、“LOVE SONG”“SAY YES”“僕はこの瞳で嘘をつく”“太陽と埃の中で”へと連なる豪華メドレーで幕を開けた第2部。その後も“止まった時計”や“けれど空は青~close friends~”、そして沢田研二のカヴァー“君をのせて”など惚れ惚れするようなパフォーマンスが繰り広げられたが、いずれの場面においても、彼のこれまで歩んできた道のり、波乱万丈に富んだ歴史といったさまざまな情景が立体的に浮かび上がってきて、とても感慨深かった。そんな傾向は、ラストの“熱い想い”、アンコールの“FUKUOKA”でさらに強まっていき、最終的には大河ドラマのクライマックスに向き合っているような感覚をおぼえたほど。カーテンコールのASKAの顔を覗き込んでみる。すると、こんな結果になるとは思いもよらなかったよ、というような表情を浮かべていて、なんとなくそれが、予期せぬ素晴らしいドラマが生まれてしまったことへの晴れ晴れとした気分を伝えているように思えたのである。

 さてこの次に控えているのは、2020年3月リリースの『Breath of Bless』以来となる待望のニュー・アルバム『Wonderful world』である。この2年半、ASKAが辿ってきた道程が克明に刻まれたこの作品にもやはり、心を打つようなドラマティックな瞬間がいくつも詰め込まれていることをお伝えしておかねば。2022年のASKAを巡るストーリーにはまだまだ魅力的な展開が待っていそうだ。

 


SETLIST
第1部
1. Overture「Breath of Bless」
2. 未来の人よ
3. MIDNIGHT 2 CALL
4. 僕のwonderful world
5. 君が愛を語れ
6. PRIDE
7. UNI-VERSE
8. 歌になりたい

第2部
9. メドレー
・はじまりはいつも雨
・LOVE SONG
・SAY YES
・僕はこの瞳で嘘をつく
・太陽と埃の中で
10. 帰宅
11. 止まった時計
12. けれど空は青 ~close friends~
13. 君をのせて
14. 熱い想い

EN.
1. FUKUOKA