©A North American Star System Production / Rapid Eye Movies

宇宙こそが居住地

 「サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス」は、72年に制作され、74年に公開されたSF映画である。71年、サン・ラーは、カリフォルニア大学バークレー校で〈宇宙の黒人(The Black Man in the Cosmos)〉という講義を行なっていた。それが、サンフランシスコで実験的芸術を標榜するDilexi(1950年代末より活動するギャラリー)を主宰するジム・ニューマンの目にとまるところとなり、その講義を下敷きにしてプロットが組み立てられている。

 それは、一見するとB-movieの趣を持っている、というより本作はカルト映画の傑作として知られていたが、それゆえに、これまでにヴィデオやDVDでのリリースのたびマニアの話題となりながら、日本では一度も公開されていなかったのだった。しかし、この映画は、カーティス・メイフィールドが音楽を担当し出演もした「スーパーフライ」と同様、70年代的ブラックスプロイテーションのスタイルを使って、サン・ラーの思想体系が表現された、まさに傑作と言ってよい作品だ。それは、ジャンルとしてはSF映画になってしまうが、土星からやって来たと自称する、パーラメント、ファンカデリックへも多大なる影響をおよぼした、アフロ・フューチャリズムを体現したとも言えるサン・ラーであればこそのシチュエーションであり、その中でサン・ラーのインパクトは強烈だ(本気なので)。

©A North American Star System Production / Rapid Eye Movies

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 冒頭(どこか「ファンタスティック・プラネット」的な絵とそのセットの中で)、サン・ラーは、〈銃声、怒り、いらだち〉といった〈地球の音〉がない、地球とは異なる環境を持った惑星に降り立ち、〈白人のいない惑星〉に黒人の理想郷を作ろうとする。そして、音楽をエネルギー源として、黒人たちを惑星に移送するために1943年のシカゴにやってくる。ギャングや、〈宇宙空間会社〉、〈宇宙職業紹介所〉などが入り混じる様子はまるでウィリアム・バロウズの小説だ。

©A North American Star System Production / Rapid Eye Movies

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 ところで、アフロ・フューチャリズムという言葉は、前世紀末、サイバーパンクから、インターネット時代の到来をへたサイバー・カルチャーに、それまでとは異なる世界像を見出したマーク・デリーによって1993年に命名されたものなのだという。すっかり70年代当時に言われていた言葉なのかと思っていたが、90年代サイバー・カルチャーが、70年代ブラック・カルチャーにおける宇宙的イマジネーションに、アフロ・フューチャリズムという名前を与えたということか。BLMをへた2021年に、本作はどのように見ることができるだろうか。

 


CINEMA INFORMATION

映画「サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス」
監督:ジョン・コニー
脚本:ジョシュア・スミス、サン・ラー
製作:ジム・ニューマン
音楽:サン・ラー
音:ロバート・グレイヴノア、デヴィッド・マクミラン、アーサー・ロチェスター、ケン・ヘラー
出演:サン・ラー/レイ・ジョンソン 他
配給:ビーズインターナショナル(1974年 アメリカ 81分)
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◎2021年3月5日(金)よりアップリンク吉祥寺・新宿シネマカリテ・シネマート心斎橋にて、名古屋シネマテーク・アップリンク吉祥寺ほか順次公開
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