もともとレゲエ要素が多分に含まれているハイブリッドなサウンドが特徴だったTAMTAMは活動を続けるうちにヒップホップやR&B、ジャズやクラブ・ミュージックなどなど、その時々の現行の音楽から様々な要素を吸収し、どんどんジャンルレスになり、前作『Modernluv』(2018年)では大胆なポスト・プロダクションを施し、バンドというフォーマットのストロング・ポイントは活かしながらも、同時にバンドというフォーマットから解き放たれたような作品を作り上げた。その自身のサウンドを更新し続ける姿勢は高い評価を得ている。

と思っていたら新作『We Are the Sun!』ではこれまでで最もバンドのフィジカルな魅力を前面に押し出したサウンドに一気に振り切った。アフロビートやレゲエ、ハウスなど、様々なリズムを取り入れたカラフルなグルーヴが魅力なこのアルバムを聴いたときに僕が思い浮かべたのはダンス・ミュージック≒クラブ・ミュージックとしての側面だった。

ひとつの楽曲の中に複数のジャンルやスタイルが並走していて、もしDJなら自分が作り出したいムードに合わせて、そのジャンルやスタイルのどれかを選び、それを元に曲を繋ぎあわせながら、自由で多様な世界を描ける機能性が聴こえるように感じた。そもそもこの『We Are the Sun!』自体もアルバムを通して、楽曲が繋がりながらひとつの流れが生まれているミックスCDのようだとも思った。世界中のオルタナティヴな音楽や、アフリカやジャマイカのレベル・ミュージック、レフトフィールドなダンス・ミュージックの要素までもが混ざっているポップソングは、パーティーという祝福や許容のための場がもつポジティヴな力を思い起こさせる。

Kuroは『We Are the Sun!』とのタイトルに、そこにあるだけでいつの間にか誰かを癒していることのある存在のメタファーとしての〈Sun=太陽〉と、誰もがそんな太陽のように無自覚なうちに誰かを癒しているかもしれないことへの(希望のような)思いを〈We〉に込めた、というようなことを語っていた。

『We Are the Sun!』にある開放感や居心地の良さは彼らなりのひとつのメッセージなのかもしれない、とも僕は思った。ここではそのサウンド面をひとつずつ高橋アフィとKuroの2人に語ってもらうことにした。そのリファレンスの圧倒的な広さもまたそのメッセージに繋がっていると思う。

 

ライブ演奏の勢いと肉体性を追い求めた『We Are the Sun!』

――『We Are the Sun!』はいつごろから作り始めたんですか?

高橋アフィ(ドラムス/マニピュレート)「デモ自体は前のアルバム『Modernluv』を作り終わってからすぐに作り始めたんですけど、曲の形が見え始めたのは今年の2月くらいですね。3月上旬くらいに録音したので、自粛期間にギリギリ入ってないタイミングでした」

――その時期はまだスタジオは開いてたんですね?

Kuro(ヴォーカル/トランペット/シンセサイザー)「開いてましたね。でも、自分たちが録音・ミックス作業で使用した数日後に閉まりました。以後はスタジオ側が立ち会い作業をNGに切り替えてたと思います」

――ということは、ギリギリのタイミングではあるけど、これまでのアルバムと同じような感じでなんとか制作できたと。とはいえ、前作と作り方がかなり違いますよね?

Kuro「2月末に自主企画のライブ(〈TAMTAM presents FINEVIEW Vol.3〉)があって、そこでアルバムに入れた曲の半分くらいを披露しました。そのライブの雰囲気をパッケージングしたいと思っていたので、録音も、なるべくバンドで〈せーの〉で演奏するのに近い状態でやりたかったというのはありました」

アフィ「『Modernluv』では全員バラバラに録ったんです。僕はクリックだけを聞いてドラムを叩いて、みたいな感じ。

今回は、録音ブースは分かれているんですけど、バンドで〈せーの〉で録りました。あと、あまりポスト・プロダクションはしないで、エフェクトによる加工もできる限りしないって目標はありました。各自のプレイヤーの音に任せようっていうのはありましたね」

『We Are the Sun!』収録曲“Worksong! feat.鎮座DOPENESS”

――なぜそうしようと思ったんですか?

Kuro「今のメンバーになったことは理由の1つですね。特に新しく入ったベースの石垣陽菜さんと、サポート・ギターのYuta Fukaiくんと演奏していたら、バンドが肉体的になっていると感じていたので、前作と差をつけるならライブ的な演奏の勢いとアグレッシヴさを録音に残すことかなと。

最近のライブ演奏でも、セッション感覚で毎回違うアプローチができていたのも良い点で、そのフレッシュさをそのまま盤に出来たらいいなと思ってました」

――『Modernluv』はかなりポスト・プロダクションをやったアルバムで、その後に出たKuroさんのソロ・アルバム『JUST SAYING HI』(2019年)はプロダクション寄りのアルバムでした。僕は前作を聴いて、このままいくと高橋アフィさんが一人で作り込む感じになって、ゆらゆら帝国の『空洞です』みたいにバンド名義だけど、バンド的な要素から少し離れた感じになるかなと思ってました。でも、そこから一気に生々しいバンド・サウンドに戻ってきて驚きました。

アフィ「前作ではフレーズや音色を細かく指定したんですよ。すごく細かく話し合いながら決めていったので、極端に言えば僕が知らない音は鳴ってないという音像を作ったんです。

でも、今回は固定フレーズを弾いてもらうより、新しいベーシストもサポートのギタリストとキーボーディストもプレイヤー気質な人たちなので、〈コードとかこういう感じなので楽しく弾いてください〉って言って弾いてもらったんですよ。

ソロに関しても〈こういうのかっこいいと思うんだけどどう?〉って感じでYouTubeのリンクだけを送ると何かしら返ってくる感じだったので、それぞれに任せた要素がかなり大きいです」

Kuro「〈ここだけは必要〉ってフレーズはデモに入れてお願いするんですけど、理想は大喜利みたいな状態で、〈その心は!〉って訊いたら、マナーはありつつもそれぞれ予想を裏切るものが返ってくるほうが、バンドでやっている意味があるというか。

私はソロ名義でのリリースを経て逆にそういったバンドならではの楽しさを自覚した部分もあって、前作よりできるだけ正解を決めきらずにプレイヤーに任せたので、私個人の負担は前作よりかなり減りましたね。メンバーのスキルやセンスに信頼もあったのでスムーズにいきましたし」

 

今日のテンションにはこのサン・ラ

――アルバムのサウンドに関してコンセプトはありましたか? ダンサブルだし、僕はDJのときにかけたいなって思いました。

アフィ「そうですね。ダンサブルな感じにしたかったんです」

Kuro「もともとグルーヴィーでダンサブルな音楽が好きなんですよね。腰から下で踊れる系の音楽が自分のバンド演奏の原体験ではあるので、そういうパーソナルな好みに立ち返ってみようというのはありました。

実のところ最近は心が荒み過ぎて、家では逆にサン・ラとかメディテーション音楽のような、ビートの強くないものばかり聴いているんですけど(笑)」

――なぜにサン・ラ……。

Kuro「聴いてて〈やる気〉よりも〈癒し〉をくれるところが、今の気分に合っているんだと思います。『Cosmic Tones For Mental Therapy』(63年)をずっと聴いてました。

バンドのメンバーと遊ぶときもサン・ラをよく聴いてるんですけど、サン・ラのアルバムはいいサン・ラとよくないサン・ラがある、とか言って」

アフィ「邪悪なサン・ラとか、ポップ過ぎるサン・ラとか。最近はその日にあったちょうどいいサン・ラを見つけられるようになってきましたね。〈今日のテンションにはこのサン・ラ〉って感じで」

Kuro「このアルバムの“Sun Child”の曲名はサン・ラから影響を受けています。

最近、家ではひたすらチルアウトしたくて。他にはSpotifyのヨガとかチベタン・シンギング・ボウルのプレイリストや、雨音とか自然音などを聴いてました」

サン・ラの63年作『Cosmic Tones For Mental Therapy』収録曲“Moon Dance”

――ははは。話を戻して、ダンサブルにもいろいろあると思うんですけど、どんなダンス・ミュージックを目指しましたか?

アフィ「今回はゴールドリンクがやってるアフロ・ハウスっぽいものや、パーカッションがすごい多いのにウワモノはシンプルにエレピがコードを弾いているだけというような南アフリカや西アフリカの音楽にハマってたんですよ」

――ゴム(Gqom)とかクワイト(Kwaito)とか?

アフィ「そうですね、それ以外にも南アフリカの普通のポップスも聴いてました。ざっくり、みとこんさんがツイートしていたものを聴いていたってことなんですけど。

その辺の音楽の、トラップやアンビエント以降のニュアンスはありつつも、ウワモノはエレクトロな質感というよりも生っぽくて、ギターは普通にギターの音で、シンセではなくエレピで和音をきちんと鳴らすみたいな作り方が新鮮に聴こえたんですよ。今回はそういう方向に行こうと思ったんです」

Kuro「『NEWPOESY』(2016年)の“コーヒーピープル”をアフロビート・アレンジにしたものをライブで演奏して、手応えを感じていたのもあって」

アフィ「でも〈いかにもアフロビート〉っていうアフロビートじゃなくて、パーカッション無しのドラムのみでやるように変形させたアフロビートでしたね。8ビートとか16ビートじゃないリズムでやると踊りやすいし、盛り上がるし、演奏している方も楽しいし、いいよねっていう」

 

初めから全力でやる、TAMTAMらしいアフロビート

――アフロビート的な音楽で参照したのってどんなものがありますか? フェラ・クティとかトニー・アレンみたいなオーセンティックなものよりはもっとハイブリッドなものですよね?

アフィ「ジミ・テナーやオボンジャヤール(Obongjayar)を聴いてましたね」

Kuro「あと、デクスター・ストーリー(Dexter Story)とか」

アフィ「シンケイン(Sinkane)も。これはサイケ・ロック期のイラケレみたいな感じなんですけど」

ジミ・テナーの2018年作『Order Of Nothingness』収録曲“Mysteria”。テナーはフィンランドのプロデューサー/サクソフォニストで、トニー・アレンとの共演でも知られる

オボンジャヤールの2020年作『Which Way Is Forward?』収録曲“10K”。オボンジャヤールはナイジェリア生まれ、英ロンドンを拠点とするアーティスト

デクスター・ストーリーの2018年作『Bahir』収録曲“Gold (feat. Sudan Archives)”。ストーリーはLAのミュージシャンで、エチオピアなど東アフリカの音楽からインスパイアされた作品を作っている

シンケインの2019年作『Dépaysé』収録曲“Everybody”。シンケインはロンドン生まれ、スーダン系アメリカ人のミュージシャン

――このアルバムは純粋なアフロビートっていうより、アフロビートの要素がひとつかふたつどこかに入ってる感じですよね。例えば、リンガラっぽいギターだけが入っているとか。いろんなやり方でちょっとだけアフリカっぽいサウンドにしてあると思います。そこがTAMTAMらしいサウンドにも繋がってますね。

アフィ「実際、本格的なアフロビートって長い時間をかけてじわじわ盛り上げていく音楽なので、自分のライブでやろうとすると5分の尺で盛り上げようとした瞬間にグルーヴが壊れちゃって、アフロビートの良さが失われることもあるんですよ。それなら〈初めから全力でやってるアフロビート〉みたいなものを目指したらやれるかなと思って、うまくいったのはありますね」

 

バンドで演奏するクラブ・ミュージック

――さっき〈ジミ・テナー〉って言ってましたけど、彼の音楽のようにクラブ・ミュージック的な感じもありますよね。ハウスだったり、ハウスになる前のハウスとディスコの間のころのものだったり。バンドなんだけど、クラブ・ミュージックの〈プロデューサー〉っぽい部分もかなりある気がしました。

アフィ「そうですね。パーカッションを入れようと思ったのは、アフリカン・ハウス系のものと一緒にジットワム(Jitwam)やセヴン・デイヴィスJr.(Seven Davis Jr.)、セオ・パリッシュとかを聴いていて、ハウスの人がパーカッションを入れてるのが楽しそうだなって思ったからなんです。

しかも、そういう人たちは生々しい打楽器の音じゃなくて、〈歪ませてフィルターをかけたパーカッションが右上の方でずっと鳴っているのがかっこいい〉みたいな使い方をしてて、プレイヤーがいることを想像させない感じでパーカッションが鳴ってるのがいいなって思いましたね。エレクトロと生演奏を繋ぐクッションのような印象でした」

ジットワムの2019年作『HONEYCOMB』収録曲“opendoors”。ジットワムはインド出身、ブルックリンを拠点に活動するプロデューサー

セヴン・デイヴィスJr.の2020年作『Sev Was Here』収録曲“Lipstick”。デイヴィスJr.はLAのシンガー・ソングライター/プロデューサー

――パーカッションをリズムに組み込んでグルーヴを強くしたり、カラフルにしたりするよりは、それが空間的に聴かせるための味付けになっていたり、リズムでもウワモノでもないパーカッションがきれいに鳴ってることで得られる気持ちよさを出す意図を感じたんですよね。そういうバンドっぽくない発想がかなり入っている気がしました。

アフィ「一時期、Bandcampでジャザノヴァがよく流れてて、そこからクラブ・ジャズに改めてハマったんですよ。生演奏とエレクトロの絶妙な混ぜ具合が今聴くと新鮮で。ディスクユニオンで昔のジャザノヴァのリミックス盤が200円とかで売ってるので、それをありがたがって聴いてました。そこから4、5年経って花開いたジャザノヴァへの思いがあるかもです」

Kuro「私個人は最終的にはポップスを作っている意識で、アフィさんがサウンド面で現代性のバランスを取ってくれるので、まさにプロデュース・ワークだと思います。バンド内に信頼できるプロデューサーがいる感じ」

――トライバルなクラブ・ミュージックも好きなのかなと思いましたが、どうですか?

アフィ「ギターのユースケさんがその辺をすごく好きで、〈フジロック〉に出たときにみんなでニコラ・クルース(Nicola Cruz)のDJを観ましたね。

もともとユースケさんはバレアリックや、南米の〈アンデス・ステップ〉って呼ばれてる遅めの4つ打ち系クラブ・ミュージックがすごい好きで、その流れでみんな聴いてました」

ニコラ・クルースの2019年のライブ映像。クルースはフランスのDJ/プロデューサーで、南米の音楽をミックスした〈アンデス・ステップ〉のスタイルで知られる

 

ジャズ・ミュージシャンの力を借りて

――他に前作ではやってなかったことってありますか?

アフィ「初めて完全にジャズ系の人(杉本亮)にキーボードを頼んだら、エレピの音がすごく良くて。ジャズの人が和音を弾くとすげージャズっぽいなと思いましたね」

Kuro「今回はジャズ的な鍵盤がハマる楽曲も多かったですね。

デモ音源を作った後の肉付けはみんなで何度もスタジオに入って進めたんですけど、キーボーディストには最後2回のリハくらいにしか来てもらってなくて。そこで6、7曲のイメージを合わせたらすぐに本番だったので、鍵盤に関しては一番決めてなくて、杉本くんの即興にかなり頼りました。

かつ、デモを聴いて私たちが目指しているニュアンスを感じ取る能力も高い人だったので、私からの説明は雑だったと思うんですけど、すごくいい感じに仕上げてくれました」

『We Are the Sun!』収録曲“Beautiful Bad Dream”の〈Home Edition〉

 

レゲエ・バンドとしてのTAMTAM

――あと、最後の方はかなりレゲエですよね。TAMTAMはレゲエのバンドだって意識は今でもけっこうあるんですか?

Kuro「オーセンティックなレゲエはずっと好きなんですけど、初期のTAMTAMはそこを強調し過ぎた結果、それら以外も当然色々好きであることとか、その枠内で一生曲を作っていくわけじゃないっていう話が通りにくくなったというか。勝手に窮屈に感じて。

でも、ジ・インターネットのシドなど、現代のシンガーが〈親がレゲエとかスカのレコードを家でよく聴いていた(からその影響を受けている)〉と言うのはよくあることで、私もそれぐらいカジュアルな感覚なんですけどね。実際、TAMTAMが作る曲の多くは、もっと様々なジャンルがブレンドされていると思いますし」

アフィ「なんだかんだでアルバムには必ずレゲエをモチーフにした曲を入れていたんですけどね。とはいえ基本的にミクスチャーなことが多かったので、今回は久々にそれを隠さないでやりました」

Kuro「A面が“Work Song!”でB面がレゲエの“Summer Ghost”の7インチ・シングルを7月に出すんです。確かに、アルバムの中の1曲ではなくリード曲的なポジションでレゲエにスポットを当てたのは久々かも。

この曲でソロを弾いているサポート・ギターのFukaiくんはアール・チナ・スミスを好きで、彼に会いに2回ジャマイカに行っているんです。1回目は、アール・チナ・スミスが日本の職人さんが作ったギターを使ってて、それを修理するために〈日本に持って行ってくれ〉って頼まれて、預かって帰ってきて。で、2回目は修理したギターを持ってまたジャマイカに行ったりとか。彼もそういった音楽と縁深いギタリストです」

『We Are the Sun!』収録曲“Summer Ghost”

 

TAMTAMのアイデンティティーはベースラインにあり

――今年出たクレオ・ソル(Cleo Sol)っていうUKのシンガーの『Rose In The Dark』ってアルバムは、レゲエのビートは出てこないけど、他にレゲエやダブの要素がある絶妙な音楽なんですよ。その塩梅はレゲエをわかってるからできることって気がするんですよね。TAMTAMもレゲエに精通しているからこその崩し方をやってきたバンドだし、今回もそんな印象を受けました。

アフィ「たしかに。〈低音をもっと上げてください〉とかよく言ってましたし。あと、Kuroちゃんは曲をベースラインとメロディーから作るんですよ。レゲエっぽい音像に近づけば近づくほど曲が良くなるのは、ベースラインとメロがうまいこと重なると良くなる曲が多いからかもしれません」

クレオ・ソルの2020年作『Rose In The Dark』収録曲“Why Don’t You”

――なんでベースラインから作るんですか?

Kuro「ベース好きなんです。歌ってなかったら自分で弾きたいくらい。普通に音楽を聴いていると、どんなジャンルでもベースラインばっかりに耳が行きます。それゆえに、私が作曲するようになってから特にベースの音色やグルーヴにしっかり理想を持っちゃっているので、ベーシストは大変だと思うんですけど。幸い、前回までのサポートの溝渕匠良さん、今回メンバーとして加入した石垣さんと、ベーシストに恵まれていて。

溝渕さんは私の要望を逃さないようにデモ音源のフレーズを完コピするタイプだったので、前作・前々作は〈理想を形にしてくれた〉という印象で、それもそれで好きなグルーヴだった。

さらに今回、石垣さんになってからは〈デモ音源は6割くらいのつもりで聴いて、残りは自分で解釈してほしい〉って委ねているので、理想の延長線上にあるまた別物という感じです。今作は彼女がジャズ・ミュージシャンであることの恩恵を間違いなく受けていますね」

アフィ「でも、叩きになるベースラインは必ず渡すようにしているんですよね」

Kuro「コードだけ先にあって〈どんなベースでもいいよ〉ってなると、たぶんTAMTAMの楽曲らしさは損なわれる気がしてて。ベースラインがメロディー然としていて、ある程度私っぽさが入るのは、このバンドの1つのアイデンティティーだと思って維持してます」

――さっきのクレオ・ソルもそうですし、オマーの“There’s Nothing Like This”とか、ディアンジェロの“Spanish Joint”とかみたいな、ベースラインにレゲエやラテンの感じがある曲が僕は好きなんです。そういうハイブリッドさがTAMTAMにある気がするのは、ベースを中心にした曲の書き方があるからかもしれませんね。

アフィ「クルアンビンもそういうノリで聴いてますね」

Kuro「クルアンビンはレゲエだと思って聴いてます」

――そうそう、そういう感覚。クルアンビンはダブ盤も出してますしね。

 

現行オーストラリア・ジャズの音像

――あと、音像に関してはどうですか?

アフィ「全体的に生っぽくしてほしいっていうのと、普段、エレクトロな音楽やヒップホップ、R&B、クラブ・ミュージックを聴いていることが多いので、そういうジャンルの音圧と揃えてくださいとエンジニアさんにお願いしました。音が潰れてもいいから、ゴールドリンクとかと聴き比べたときに、音圧や派手さで負けないようにミックスしてもらったんです。ベースががっつり鳴ってて、低音もがっつり鳴っているヒップホップ系の音源と近い迫力を出したかったので。

あと、今回はライブ感を出そうと思って、オーストラリアの30/70コレクティヴみたいな、バンドだけど打ち込みっぽいバツッとした音像にしたいなと思っていました。最終的には30/70の作品とは別のやり方になったんですけど」

30/70の2019年作『Fluid Motion』収録曲“Tempted”

Kuro「今のオーストラリア・ジャズの人たちの音楽はクラブ・ミュージックとか野外レイヴっぽい感じがするもんね」

アフィ「オーストラリア・シーンの作品でいいなと思うものはマスタリング・スタジオがけっこう同じだったんです。サンファ・ザ・グレイトも使っている〈Satori Mastering〉ってところで、そこでマスタリングしている音源は30/70というか、クラブ・ミュージックのような音像になるんです。クラブ使用に耐えうるバキバキなコンプの圧を、ライブ録音っぽいラフで荒々しい音像として演奏に取り込んでいるのがいいなと思ってましたね。

ビート・ミュージックっぽいアプローチやエクスペリメンタルなヨレてるヒップホップ的なノリで生演奏も行っているんですが、ハウスやレゲエ、アフロビート、クラブ・ミュージックを混ぜて、もうちょっとダンサブルというか、小さい箱でライブが盛り上がる感じを入れるのがかっこいいんですよ。

僕はずっとアジムスが好きなんですけど、アジムスって〈王道のフュージョン〉というよりクラブ・ミュージックとしても評価されるジャズの人の音楽じゃないですか。〈謎なシンセが入ってるところが逆にエレクトロで良い〉みたいな感じがアジムスにはあって。同じことをオーストラリアの人たちにも感じるんですね。

例えば、30/70のドラマーのジギー・ツァイトガイスト(Ziggy Zeitgeist)がやってる〈Zeitgeist Freedom Energy Exchange〉のアルバム『ZFEX Vol.II』(2020年)は、ジットワムの作品をリリースしてるレーベル〈The Jazz Diaries〉から出てて、そこを見るとクラブ・シーンに向けてのリリースなんですよね。そういうふうにオーストラリアの人たちはイギリスのシーンと繋がりながら、いろんな音楽を一旦ダンス・ミュージックやクラブ・ミュージックとして聴いてから消化してる感じがある。

アフロビートをやるにしても本格的なアフロビートでズブズブ行くというよりは、クラブで盛り上がる感じのアフロビートをやるんです。生演奏を軸にしながら徹底的に現代のクラブ・ミュージックとしてまとめているところに惹かれて聴いてましたね」

ツァイトガイスト・フリーダム・エナジー・エクスチェンジの2020年作『ZFEX Vol.II』収録曲“Candy Flip”

 


LIVE INFORMATION
MoonRomantic Channel Streaming LIVE『TAMTAM』
2020年6月28日(日)
開演:20:30
料金:1,500円
配信URL:https://moonromantic-channel.com/0628
※さらに500〜2,000円の投げ銭も可能
※1,500円以上投げ銭した方には当日のライブ音源をデータでプレゼント