生活者としての感覚を大事にしながら、日々揺れ動く心に正直に歌を紡いでいく、兵庫・神戸出身のシンガー・ソングライター、優利香。
彼女が初の全国流通盤となるミニ・アルバム『Newestrong』を2021年3月10日にリリースした。溌溂とした歌声が印象的なリード曲“眩しい朝日”で幕を開ける本作は、ネガティヴな感情も引き連れながらひたむきに前へ進んでいこうとするような、力強いエネルギーに満ちている。
そんな作品を作り上げた優利香とは、いったいどういう人なのだろう。新作についてはもちろん、ミュージシャンを志したきっかけから今後の展望に至るまで、たっぷりと話を訊いた。
背中を押してもらえる曲がほんまに好きやった
――そもそも優利香さんが音楽を本格的に聴くようになったきっかけは何ですか?
「中学に入ってからいよいよ本格的に聴くようになりました。家が学校から遠くて登下校に時間がかかったので、その道中が音楽を聴く時間になっていました。
(日本の)バンドものとシンガー・ソングライターものが特に好きで、バンドだとSPYAIRとかUVERworld、RADWIMPSあたり、シンガー・ソングライターだとYUIさんなんかをよく聴いてました」
――その頃に聴いていたアーティストの音楽は、いまのご自身の血肉になっていると感じますか?
「そうですね。背中を押してもらえるような曲たちがほんまに好きで。学生時代は、人間関係とか部活、勉強についてなどいろいろ考え込むこともあったんですけど、そんな中でいま挙げたようなバンドとかシンガー・ソングライターのメッセージ性の強い曲たちがとても響いたんです。その感覚はいまも強く残っていて、だから自分も聴く人の背中を押すような音楽を作れたらいいなと思っています」
ずっと夢だったミュージシャンの道へ
――ずっと聴き手のままでいるという選択肢もあった中で、どうして作り手側に回ろうと思ったんでしょう?
「自分が人生で一番憧れた存在がミュージシャンやったからですかね。そもそも中学生の頃からYUIさんとかの音楽を聴くうちに、そんな風に自分で作って表現している人たちってかっこいいなと感じるようになって。そこから、理屈抜きに〈自分もそうなりたい〉と考えるようになったんです。まあでも、実際にはなれるわけないと思っていたので、ずっと周りには(ミュージシャンが夢であるということを)黙っていたんですよ。
そんな中、高校で今後の進路を決めるタイミングが来たんですけど、そのとき本当にミュージシャン以外になりたいものが全然見つからなかったんです。それで、音楽の専門学校へ行ってミュージシャンになると決心しました」
――ではいま、昔からの夢を叶えられているということですね!
「いえいえ、まだまだですけど(笑)。これから頑張ります!」
――専門学校に入ってから、周りの人たちに教えてもらって聴いた音楽はありましたか?
「とりあえず幅広く音楽を聴くようにと先生たちから言われていたので、それまで聴いていた邦楽だけでなく洋楽のロックとかブルースなんかも聴くようにしていました。あとは、自分が好きなアーティストが影響を受けてきた大元の音楽を聴くというような、ルーツを辿っていく聴き方を勧められて実践していましたね。たとえば日本のバンドが結構U2に影響を受けていると知って、聴いてみたり……」
――たとえばMr.Childrenなんかも、U2から大きな影響を受けたバンドですよね。先ほどからバンドがお好きだという話が出ていますが、そんな中で優利香さんが弾き語りをベースにしたシンガー・ソングライターという形でやっていくことにした決め手は何だったんですか?
「そもそも専門学校で入ったのがシンガー・ソングライターのコースで、周りに〈ソロでやっていくんだ〉っていう志を持った子が多かった、というのは大きいかもしれないです。
とは言え、ベース・コースとかドラム・コースといった別のコースの人たちとバンドを組むことは自由で、実際にバンド・メンバーの募集なんかもあったんですけど、そういう集まりにいざ行ってみたら、その人たちのヴィジュアルがちょっと怖い感じで、〈あ、私が考えてたのとは違うかも〉と思っちゃって、結局やめました……(笑)」
――(笑)。シンガー・ソングライターとして活動していて、ソロならではの強みだなとご自身で感じているところはありますか?
「やっぱり〈これやりたい!〉と思ったときにすぐ動けるのが大きいですね。たとえばライブのオファーなども、バンドだとスケジュールが合わなくて受けられないということもあると思うんですけど、ソロだとそういうことがないので。
あとは、ギターさえ持っていけばどこでもストリート・ライブなどができるという機動力の高さも、シンガー・ソングライターならではの強みなんじゃないかなと思います」