相鉄線とJR線の相互直通運転が11月末に実施されるのを記念して発表された映像作品〈100 YEARS TRAIN〉。大正から令和まで、100年の移り変わりを美術や衣装で細かく再現し、二階堂ふみ、染谷将太の両者が歴史のなかで彩られた2人を演じている。そんな時を旅する壮大な物語を支える音楽が、くるりの“ばらの花”とサカナクションの“ネイティブダンサー”をマッシュアップした本作。歌うのはFLOWER FLOWERのyuiとodolのミゾベリョウである。

マッシュアップとは複数の音源から演奏や歌声を抽出して組み合わせ、1つの音楽作品として混ざり合わせる手法。単独の音楽作品としても隙間が無いほどに完成されているこの2曲を混ぜ合わせた本作は、100年という膨大な時間のなかで移り行く暮らしと、それでも変わらない人々の感情を表す映像作品のための、大切な土台となっているように聴こえる。

思えば、くるりは京都と東京、サカナクションは北海道と東京という異なる土地土地と、そこで生まれた文化や生活を自分たちの音に重ね、表現を続けてきたアーティストではなかっただろうか。くるりの代表曲とも言える“ばらの花”は、過去と現在を比べ、未来へと〈旅に出ようぜ〉と想いを馳せるような楽曲だし、その一方でサカナクションの“ネイティブダンサー”は、冬の雪景色を通して、故郷と〈街〉を重ね合わせた楽曲とも言えるだろう。過ごす環境が変われば、生み出される言葉や音にも違いが生まれることを体現し、なおかつ、普段は混ざることのないものを重ねることで輝く〈良い違和感〉の価値を証明してきた。そんな2アーティストの楽曲が組み合わさることで、さらなる〈良い違和感〉を生み出している。

相鉄線とJR線の直通運転が始まり、これまでは起こり得なかった人や物事との出会いがあったり、過ごすはずのなかった時間を誰かと共有することになったりするかもしれない。それは決して利便性の追求だけでなく、異なる文化や生活が融合することも意味し、街のどこかで〈良い違和感〉が生まれるかもしれない。そんな期待に胸が膨らむ。