瞬く間に社会の中枢部へと入り込み、人々のライフ・スタイルを一変させてしまった新型コロナウイルス感染症。コロナ禍を機に自宅で過ごす時間が増えたことで、リスニング環境をより快適にしたいと考えるようになった音楽ファンは少なくないはず。とは言え、いきなり高いオーディオを買って失敗するのは怖いし……。

そうした音楽ファンの悩ましい思いに応えるべく〈痒い所に手が届く〉サービスを提供しているのが、今回紹介するオーディオ・レンタルの会社、ONZOだ。比較的安価な製品から数十万円するような高額製品まで幅広く取り揃えるONZO、その特徴はレンタルの仕組みとしてサブスクリプションを採用しているところにある。つまり月ごとに一定の金額を支払えば、あとは自由に製品を借りることができるというわけだ。これなら、高額製品の購入に躊躇していた人も〈とりあえず〉の感覚で気軽に試せるだろう。

今回Mikikiでは、ONZOの魅力を掘り下げる特別企画を前後編に分けて実施。まず前編となる本記事では、ユニークなサービスを仕掛けたONZOの代表取締役・知場啓志氏のインタビューをお届けする(後編は近日公開予定)。ONZOのサービスとしての魅力やヴィジョンを紹介するだけにとどまらず、オーディオ業界、さらには音楽ビジネス全般の未来をも占うような、射程の長い内容になっていると思う。

なお2021年7月20日(火)からは、ONZOとタワーレコードがコラボしたポップアップ・ストアの展開も決定している。本記事を読んでONZOに興味を持たれた方は、そちらもぜひチェックしてみてほしい。詳細は記事下部のインフォメーション欄にて。


 

ONZOってどんなサービス?

――まずはONZOの概要を改めて教えていただけますか。

「オーディオ・レンタルのサブスクリプション・サービスです。月額固定で借り放題、全国どこにいてもネットを介して、ヘッドホンやアンプといった様々なオーディオ製品をレンタルしていただけるサービスです。

※レンタル可能な製品の一覧はこちら

レンタルの仕方は簡単です。レンタルできる製品のランクや同時にレンタルできる台数に応じて5種類の料金プランが用意されているので、ウェブサイト内でどれにするかを決めて会員登録をしたら、あとはオーディオを選ぶだけです。遅くとも3日以内には届くと思います。貸し出しの際はONZO特製の箱で送られてくるので、返却の際もそちらに入れて送り返していただければ問題ありません」

ONZOの料金プラン全5種

――オーディオのサブスク・レンタルというのは珍しいサービスだと思いますが、具体的にどんなところが強みだとお考えですか。

「普通はなかなか買いづらいような高額の製品なども手軽にレンタルでき、実際に所有する感覚で使用していただけるというところは、大きいと思います。あとはオンライン・サービスという性質上、都心に比べてオーディオ機器を試せる場所が少ない地方の方にも、そうした機会を提供できるところが強みですね。

また借り換え放題というところもポイントで、60以上のメーカーからいろんな製品を試していただく中できっと自分にとってのお気に入りが見つかるかと思います。コアなユーザーからライト・ユーザーまで、それぞれに合った方法で幅広く使っていただけるプラットフォームになってきたかなと感じています」

ONZOの取り扱いメーカー例

 

オーディオはあくまで音楽あってのもの

――ONZOのユーザーには、どういう音楽のリスナーが多いんでしょうか。

「ポップスからクラシックまで本当に様々です。たとえばJ-PopやJ-Rock、あとはアニソンとかも結構多いですね。いまのアニソンって他ジャンルから有名プロデューサーを招いたりして、いろいろなアプローチを試せるようになっていますよね。それでどんどん表現の質が高まっているのに応じて、リスニング環境にこだわる人も増えてきているんだと思います。たとえばヴォーカルを際立たせて声優さんの声をしっかり聴きたいという方もいれば、その背後で鳴っているサウンドをしっかり聴きたいという方もいるというように、ニーズも多様化していますし」

――ちなみに洋楽はいかがでしょう?

「もちろん洋楽リスナーも多いです。ロックやジャズ、クラシックと幅広くユーザー・アンケートで挙がっています。その辺りは昔からのオーディオ・ファンが多いジャンルというのもあって、ONZOのサービスをフル活用していただけると思います。年配のユーザーも比較的多い印象ですね」

――ジャズやクラシックと違ってロック、たとえばガレージ・ロックやパンクなどには、必ずしも高音質な再生機器が合うとは限らないような気がするのですが、そもそも音楽にとって音質はどの程度重要なものだとお考えでしょうか。

「もちろん音質を追求するあまり、オーディオありきの考え方になってしまうのは本末転倒ですよね。オーディオはあくまで音楽あってのものなので、その音楽の魅力を最大限に引き出せるものでさえあれば、必ずしも高音質である必要はないのかなと思います。

一時期スカルキャンディーというヘッドホン/イヤホンが流行っていましたが、それはちょうどクラブ・ミュージックがチャートに入ってよく聴かれていた時期と重なるんです。おそらくクラブ・ミュージックに最適化した製品だからこそ、多くのリスナーに支持されたんだと思います。そういう感じで、音楽ジャンルの流行に応じて求められるオーディオ製品も変わってくるんですよね」

――なるほど。ところで知場さんは普段、どんな音楽をどんなオーディオ機器で聴いているのでしょう?

「いざ訊かれると、難しい質問ですね……(笑)。たとえば最近は瞑想をしているので、それに合うような自然音を集めたコンピレーションやヒーリング系の音楽などをよく流しています。再生に使っているのはBoseのSoundLinkですね。360度すべての位置から同じ音が出るように設計されたスピーカーと相性がいいんです。あとは風の音とかって低域の音なので、そういうところまでちゃんと聴こえてくるような再生機器だと没入感を得られるので、合うと思います。

まあもちろん普段からそういう音楽ばかり聴いているわけではなくて(笑)、他にもJ-Popやジャズ、クラシックなど、わりとオール・ジャンルを聴いています」

――それはビジネスにおける必要性から、意識的に幅広く聴くようにしているという感じですか?

「いえ、この仕事を始める前からジャンル問わず幅広く聴いていました。昔ヴァイオリンをやっていたのでクラシックには親しみがありますし、中高生の頃にはロックにもハマっていました。

でも元々そういう聴き方をしていたことは、いまの仕事に活きているかもしれません。作り手側はそれぞれ〈こういう音のバランスで聴いてほしい〉などの意図を持っているでしょうけど、リスナーとして幅広く聴いてきていれば、ある程度正確に意図を汲み取ることができる。そしてそれは、作品に合った再生機器をユーザーに提案できるということにも繋がってくると思います。今後は、音楽作品とオーディオ機器をセットで提案するサービスなんかも始めたいですね」