2020年3月にリリースされたオリジナル・アルバム『Breath of Bless』以降も、コロナ禍の中、配信シングルのリリースなど精力的に活動を行っているASKA。そして、約2年振りとなるCDシングル『笑って歩こうよ』が発売! あたりまえの言葉を言えない今という時代に込められたASKAのメッセージとは何か。今後の活動などについても触れた独占インタビューを公開!
2020年3月に10作目のオリジナル・アルバム『Breath of Bless』を発表。9月には“幸せの黄色い風船”、“自分じゃないか”、“僕のwonderful world”を配信リリース。昨年以降も精力的な活動を続けているASKAから、CDシングル『笑って歩こうよ』が届けられた。ASKAのCDシングルは、新たな代表曲としてファンの支持を得ている『歌になりたい』(2019年11月)以来、約2年ぶりとなる。
「今は〈自信がある曲であれば、どれをシングルにしてもいい〉という感じなんです。『笑って歩こうよ』は、自分の中のポピュラリティをしっかり放っている曲だと思ったので、シングルに〈抜擢〉しました(笑)」
表題曲“笑って歩こうよ”は、古き良き洋楽の雰囲気を現代的なポップスに結びつけたミディアム・チューン。楽曲の軸になっているのは、1970年代の音楽を想起させるメロディーラインだ。
「70年代中盤は、アメリカの音楽が世界を席巻していて。カーペンターズやサイモン&ガーファンクルなどですが、もちろん僕も耳にしていたし、あの頃の懐かしい感覚を今の楽器やサウンドで構築してみようと思って。具体的な曲を参考にするのではなくて、〈こういう雰囲気の曲、あったよな〉と想像しながら作りました。メロディーは完全に70年代、アレンジは現代というバランスですね」
“笑って歩こうよ”というタイトルに象徴される、前向きな気分に包まれる歌も印象的。先が見えない状況が続く中、それでも笑顔で生きていてほしいという願いが伝わるこの曲からは、ASKA自身の真摯なメッセージがしっかりと伝わってくる。
「この歌詞の原型は4~5年前からあって、そのときは〈歩こう〉というタイトルだったんです。今歌うのであれば、今の記録として残したいと思い、“笑って歩こうよ”として書き直しました。本来の生活を失っている状況が続いていますし、感情を表現する場所もなくて。〈笑う〉〈泣く〉は、人として生まれたときから備わっているものですよね。昨年、そして今年。喜怒哀楽のバランスが大きく崩れている気がするんですよ。時代に試されているような状態です。今、時代から取り上げられてしまっているのは笑顔。哀しい顔はそこいら中にある。〈笑って歩こうよ〉は、自分に向かっての言葉。と、同時に世の中に向かっても言えますよね」
カップリング曲“プラネタリウム”は、アコースティックな手触りのラヴソング。〈幸せ過ぎて憂鬱だ〉など、愛し合う恋人たちの姿を描いた歌詞も素晴らしい。
「この歌詞を書いたのは50代のときで、当時は書いてはみたものの、作品として完成させるに至らなった。どこか、こっ恥ずかしい気がしたんですね。以前から10代、20代は美しい恋愛を歌える。30代は意味ありげな恋愛、40代になるとテーマ性が必要になると言ってたんですけど、50代のラヴソングって微妙だなぁ(笑)。でも、60代になると、なぜでしょうね? またラブソングを歌いたくなる。“プラネタリウム”は歌いたい歌になりました。こういう恋愛を作品にしたかった。違和感なく歌えました。また、これからラヴソングは増やしていきたいですね。だって人を好きになることに年齢は関係ないですからね」
シンプルな構成と装飾をそぎ落としたアレンジメントも、ASKAのロマンティックな歌声を際立たせている。制作におけるテーマは〈余計なことをしない〉ことだったとか。
「僕の曲には珍しく、Aメロのあとにすぐサビが来るんですよ。“プラネタリウム”を表現するためには、その形がいちばんいいと思って。(曲作りやアレンジにおいて)もともと決まった形にはこだわってないんですよ。以前はよく、音楽性に統一性や一貫性がないと言われたけど、ある時から、〈それこそが自分の個性。統一性のなさをスタイルにしてしまおう〉と思って」
初の配信ライブ「すべての事には理由がある」を6月23日に開催するなど、新たなトライアルも積極的に行っているASKA。この秋には待望のニュー・アルバム、そして、アルバムを引っ提げたツアーも予定されているという。
「アルバムの曲はもう揃っていて。サウンドは出来上がったので、あとは歌詞と歌ですね。僕の場合、ギリギリになって最初からやり直すこともあるので、まだ何があるかわからないです(笑)。ツアーに関しては〈何があっても必ずやる〉という気持ちでいます。危機感ばかりを目にし、耳にする社会ですが、僕は止まっているわけにはいかないなぁ」
「一つの事をやり遂げると、次のドアが現れる。それを開くと、見たこともない景色が広がっている。そこにはロマンがあるし、音楽を続けてる限り、ドアを開け続けると思います」と笑顔で語るASKA。その奔放なクリエイティヴィティ、普遍性と大衆性を兼ね備えた音楽はここから、さらに広がっていくことになりそうだ。