ファイナル公演であらためて感じたASKAの強さと優しさ

 ASKAのコンサート、そのタイトルに躍る〈Premium〉――デビューから四十余年。あの頃から全身を震わせながら歌にエネルギーを込めていたASKAが、今も変わらずに目の前にいる、このすごさ。実際に同じ空気を共有することによって観る者は、その〈価値の高さを〉あらためて思い知る。言うまでもなく、この夜もそうだった。

 4月から始まった今回のツアーは、梅雨時の小休止をはさんで夏を駈け、7月終わりの福岡公演でファイナルという当初のスケジュールだったが、その1週間後に東京公演が追加され、ここが正真正銘のファイナルとなった。セットリストはツアーを通じてほぼ同じだったようで――同じく東京国際フォーラム ホールAで行われた5月の公演もそう。その時のステージが早くもパッケージになってリリースされるということで楽しみだ――懐かしきCHAGE & ASKA“Trip”ではじまり、昨年秋に出た最新アルバム『Wonderful world』からの“自分じゃないか”、澤野弘之とのコラボレーションから生まれた“地球という名の都”、それと“LOVE SONG”など。時代を往き来しながら、ひとつひとつ言葉を噛みしめるように歌うASKAの姿は、ファイナル公演ということもあろう。競走馬におけるウィニングランのような晴れ晴れしさとでもいうか、清々しさとでもいうか、本人もそのあとのMCで「これで終わりだから、この曲は今日で終わりだから、って思いながら歌ってるの、感づかれてるよね」と言ってたぐらいだから、ここまで気持ちよく歌えてきた、曲としっかり向き合ってこれた充実感のようなものがあって、それが観ている側にも伝わってきた。

 “風の引力”“どうしたの?”“青い海になる”というちょっとダークな楽曲を含んだ、ASKAいわく「凸凹な、でもここが肝」なセクションと、クラッシャー木村の優美なヴァイオリンが黄昏のムードを盛り立てる“C-46”を経て、イントロが鳴った瞬間から沸く“はじまりはいつも雨”……ちょっとひと休み。

 この日のコンサートは指定のセクションであれば写真&動画撮影がOKということだったが、それがメンバー紹介のセクション。バンド・メンバーをひとりひとりステージ中央の招き、ASKAが肩に手を回して2ショットでトークをするという撮っていただこうというものだったが、途中で「これは企画倒れだったかな」と、ひと通り紹介したところで「やっぱり演奏してるところと歌うところ、だよね」とアコースティックギターを。「適当についてきて」とBマイナーセブンスのコードを鳴らしてはじめると、そこから“ボヘミアン”。お遊びのようで、この夜のちょっとしたハイライト。

 愛娘の宮崎薫をステージに呼び、彼女も一緒に出演したデヴィッド・フォスターとのジョイント・コンサートの話になったところで、再演とばかりに薫がセリーヌ・ディオン“To Love You More”を、ASKAがケルティック・ウーマン“You Raise Me Up”を披露。

 さて終盤。『Wonderful world』のリード・トラックとなった“僕のWonderful world”ではじまって、同アルバムでのセルフ・カヴァーを聴いてステージでのパフォーマンスに皆が期待を膨らませていたであろう“太陽と埃の中で”、そして“モーニングムーン”――。受け手としては、ASKAが前半のMCで「ツアーが終わったら、大きな目標は新曲を書くことです。(拍手に応えて)長いことやってると、新しいものが喜ばれないことは知ってます(会場から笑い)。出すよ、新しいもの。でも、こういう空間に来てくださる方っていうのは、自分自身の時代を通り過ぎたというか、そういう楽曲を待っているわけでしょ。わかってるよぉ」と言っていたそのとおり! ……なのだが、こちらもそう正直に思えちゃうのは、それもこれもここまで完璧に通り過ぎた時代を呼び戻してくれる――歌声に枯れも衰えもなく、たくましいパフォーマンスができるASKAだから。

 そんなことをしみじみ感じながら、ステージは大団円へと向かう。“On Your Mark”で会場全体を温かく包むと、この空間を共有できる喜びが、『Wonderful world』でもラストを飾っていたナンバー“I feel so good”で最高潮に達する。〈君がくれた笑顔の数だけ 僕の幸せも増えてゆく〉――本当にその通りで、ステージに立つ人も、ステージを見つめる人も、みんな優しい顔になっていた。

 


RELEASE INFORMATION

ASKA 『ASKA Premium Concert Tour Wonderful World 2023』 DADA label(2023)

リリース日:2023年9月27日
品番:DDLB-0023
価格:11,000円(税込)
タワレコ特典:特製チケットカード(先着)

■商品形態
・Blu-rayには音源のみを収録したCD(2枚組)を付属
・Blu-ray+Live CDの購入者に〈TRAVEL TV〉によるストリーミング配信サービスを提供(シリアルナンバー付き)
配信サイトURL:https://era.travel.gr.jp/Page/wonderfulworld_live2023.aspx

Blu-ray
Opening 映像 ~
1. Trip
2. 自分じゃないか
3. 地球という名の都
4. こんなふうに
5. 憲兵も王様も居ない城
6. LOVE SONG
7. 風の引力
8. どうしたの?
9. 青い海になる
10. C-46
11. はじまりはいつも雨
12. しゃぼん
メンバー紹介
13. To Love You More / Kaoru
14. You Raise Me Up
15. 僕のwonderful world
16. 東京
17. 太陽と埃の中で
18. モーニングムーン
19. どんな顔で笑えばいい
20. 今がいちばんいい
21. On Your Mark
22. I feel so good
~ Ending 映像

Live CD
DISC 1
Opening
1. Trip
2. 自分じゃないか
3. 地球という名の都
4. こんなふうに
5. 憲兵も王様も居ない城
6. LOVE SONG
7. 風の引力
8. どうしたの?
9. 青い海になる
10. C-46
11. はじまりはいつも雨
12. しゃぼん
メンバー紹介

DISC 2
13. To Love You More / Kaoru
14. You Raise Me Up
15. 僕のwonderful world
16. 東京
17. 太陽と埃の中で
18. モーニングムーン
19. どんな顔で笑えばいい
20. 今がいちばんいい
21. On Your Mark
22. I feel so good
~ Ending

https://tower.jp/article/feature_item/2023/07/21/0701

 

MOVIE INFORMATION
2023年9月19日(火)、全国25か所の映画館にて、ASKAまさかの先行上映――一夜限りのWonderful World Live「ASKA Premium Concert Tour Wonderful World 2023」が開催決定しました。Blu-ray「ASKA Premium Concert Tour Wonderful World 2023」の発売を記念して、いち早く映画館の大スクリーンでお楽しみいただけます。全国25か所のユナイテッド・シネマで上映します。
上映日程:2023年9月19日(火)
開場/開映:18:30/19:00(全国同時開催)
前売/当日:2,500円/2,800円(いずれも税込)
ローソンチケット一般発売:2023年8月26日(土)10:00~9月16日(土)23:59
オフィシャルサイト:https://www.fellows.tokyo/news/?id=1205
映画上映特設サイト:https://www.fellows.tokyo/special/tour2023_release/index_movie.php