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コラム

ブルーノ・ジネール(Bruno Giner)「シャルリー~茶色の朝」全体主義への抗議小説を基にしたオペラが日本初演

神奈川県立音楽堂 室内オペラ・プロジェクト第4弾

©Derrière Rideau

全体主義への抗議活動として発表された短編小説がオペラ化されて思うこと

 ポスター/フライヤーのおもてからオペラ「シャルリー~茶色の朝」がどんなものなのかを知るのはむずかしい。唯一暗示されているのは「茶色のペット以外飼ってはいけない」の一文だ。

 作曲者も、もともとのテクストも、フランスの演奏団体も、あまりなじみがないかもしれない。一見、地味な公演にみえる。

 フランク・パブロフの書いた「茶色の朝」はとても短い一種の寓話だ。フランスではベストセラーになり、この列島でも20数版をかさねる。〈茶色のペット以外飼ってはならない〉の法律が発布され、自警団が違反者をとりしまるようになる。言われたことを遵守しているなら安穏、という状態へ疑問符をなげかける。

 かつて政治学者の丸山眞男は書いていた――「どんなに政治が嫌いでも、政治に無関心でも、政治の方であなたを追いかけてきてしっかり掴んではなさない」。

 できることなら先に大月書店刊の原作を読んでみてほしい。これがオペラになる意味、声と器楽アンサンブルになる効果を想像してほしい。

 (……シャルリーときくと、チャールズ・チャップリンを想いおこす。チャールズのフランス語読み。同時にヒットラーを茶化した「独裁者」を。また、2015年、フランスの風刺新聞〈シャルリー・エブド〉社へのイスラム過激派の襲撃事件も、か。)

 作曲家ブルーノ・ジネールは60年生まれ、「シャルリー」以後、コンパクトなオペラをいくつかつくっていることでも知られる。コンサートの第1部では、パウル・デッサウのピアノ曲“ゲルニカ”とこの作品にもとづくジネールの“パラフレーズ”がプログラムされ、第3部では作曲家への公開インタビューがおこなわれる。

 ちなみにピカソの「ゲルニカ」はドイツ軍によるスペイン・バスク州ゲルニカ爆撃への怒りを描いた作品としてよく知られるものだが、デッサウは同年、この絵画に反応してピアノ作品を作曲(献呈はルネ・レイボヴィッツ)。ドイツ出身のデッサウは1933年フランスにわたっているが、ピカソとはちかいところにいたのではなかったか。そうした音楽作品と、その背景にあるもの、社会や個人といったものを、この3部からなるコンサートは提起することになるだろう。

 ネットの普及で活字メディアの文化欄は縮小を余儀なくされた。ジャンルごとにわけて掲載されていた情報や批評はひとつところにまとめられ、すべてを〈エンタメ〉にくくるようになってしまった。〈アート〉と〈エンタメ〉を扱う?

 来場者に問いをむけ、思考させるアートを、公共ホールで実現できるのは、はたして、いつまで可能なのだろう。

 


LIVE INFORMATION
神奈川県立音楽堂 室内オペラ・プロジェクト第4弾
ブルーノ・ジネール オペラ「シャルリー~茶色の朝」日本初演(フランス語上演・日本語字幕付)

2021年10月30日(土)神奈川・横浜 神奈川県立音楽堂
開場/開演:14:15/15:00
2021年10月31日(日)神奈川・横浜 神奈川県立音楽堂
開場/開演:14:15/15:00
※JR桜木町駅前ターミナルより無料シャトル・バスあり

作曲:ブルーノ・ジネール
原作:フランク・パヴロフ「茶色の朝」 (日本語版:大月書店)
演奏:アンサンブルK/アマンディーヌ・トラン(ソプラノ)
演出:クリスチャン・レッツ
照明・舞台監督:アントニー・オーベリクス
プロダクション:アンサンブルK/CCAMヴァンドゥーヴル・レ・ナンシー国立舞台センターの共同プロダクション

■公演プログラム
第I部 室内楽コンサート
パウル・デッサウ「ゲルニカ~ピカソに捧げる」
ブルーノ・ジネ「パウル・デッサウの“ゲルニカ”のためのパラフレーズ」

第II部 ブルーノ・ジネ―ル作曲 「シャルリー~フランク・パヴロフの小説に基づくポケット・オペラ」日本初演(仏語上演・日本語字幕付)

第III部 作曲者ブルーノ・ジネ―ルを迎えたクロストーク(通訳付)

■チケット(全席指定)
一般:5,000円
U24(24歳以下):2,500円
高校生以下:無料(要事前予約)
※関連企画(詳細はオフィシャルサイト)参加者に優待制度あり
※車椅子席有り(付添1名無料)
お問い合わせ(チケットかながわ):0570-015-415(10:00~18:00)

主催:神奈川県立音楽堂(指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)
助成:一般財団法人地域創造 文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力:株式会社大月書店

https://www.ongakudo-chamberopera.jp/?p=511