京都のトラックメイカー、HALFBYが今年2021年で活動20周年。10月6日(水)には〈ハワイ3部作完結編〉となるニュー・アルバム『Loco』をリリースします。そんなHALFBYが20年のキャリアを振り返るのが当連載〈HALFBYのローカリズム 2001~2021 僕と京都とあちこちの20年〉。ポップでユーモラスな文体で綴られた、HALFBYから見たポップ/インディー音楽20年史。どうぞお楽しみください。 *Mikiki編集部

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2021年のシングル“Let's Stay Out feat. Ginger Root”
 

小西さんからの直電ではじまった2003年

こんにちは、HALFBY(ハーフビー)です。さて今回は、2005年のデビューアルバム『GREEN HOURS』リリース周辺にフォーカスしていきますが、いきなり前後しますので、その辺ゆるめにお付き合いよろしくお願いします。

ということで、デビューEP『And The Coconut E.P.』が売れてご機嫌な僕がレコードショップで働いていたある日のこと、一本の電話がかかってきます。同僚「高橋くん、小西さんって人から電話かかってきてるけど」。僕「小西さん?」。〈金ちゃんバンドのコニタンかな?〉とユルく受話器を受け取った僕はびっくり仰天! 電話口のお相手は、何と! 元PIZZICATO FIVEの小西(康陽)さんだったのです。というわけで小西さんからの生電話に無防備でアクセスしてしまった僕は、言われるがままに「はい、はい、はい」と頷き続け、READYMADEからのデビューが決定してしまいます。タイトルはまたまたキッド・クレオール(Kid Creole)ネタの『And The Coati Mundi E.P.』。それが2003年。思えば小西さんのこのフックアップによってHALFBYが本格的に稼働しはじめたんだなーと。本当感謝してもしきれません。ありがとうございます小西さん。

2003年作『And The Coati Mundi E.P.』収録曲“No Connection B-JR(DJ 440’s Top Billin’ Mix)”
小西さんの覆面ユニットによるキラーフレーズ満載のメガミックス的なリミックス。氏のDJを彷彿とさせるクイックミックス感が肝。ちなみにカップリングの“Your Adress”は近年の韓国のTV番組「ユン食堂」のシーズン1でエンディングとして使われてたようです
 

ということで同年にリリースしたミニアルバム『HALF WORKS』はノンプロモーションなのに大型CDショップでも謎のヒットを記録してしまい(累計1万枚)、楽しげなお仕事のお誘いが殺到。DJとしても各都市に召喚されて、レコ屋の店員が素人のまま色々と並走していきます。ちなみに2001年以前、まだHALFBYでもなかった僕を、DJとして初めて呼んでくれたのは岡山の藤原くん(祐介、SAINAS)という男。知らない男に知らない街へと呼ばれて、美味いものを食べて可愛い女の子を紹介してもらってという間違った妄想虚しく、DJとしての初めての晩餐が〈白木屋〉で藤原くんと二人飲みだったのは一生忘れません。その後各地で男飲みが多発していくことも。そして岡山での夜「古都だか京都だか知らねえけどいい気になってんじゃねーぞ!」と、オルガンバークラシック的なDJで威嚇しまくってたのが森野くん(義貴、Handsomeboy Technique)。いま考えても相当ダサいし変わってないなーって感じ。

ミシェル・フーガン・アンド・ル・ビッグ・バザール(Michel Fugain & Le Big Bazar)の73年作『Fugain Et Le Big Bazar』収録曲“La Fete”
森野くんが当時かけていたような記憶の曲。梶野彰一さんがサビを〈おしゃれ~だ~〉に置き換えて歌っていたのが秀逸でした。ちなみに先程の小西さんミックスネタでもありました。繋がり!

 

YOUR SONG IS GOOD&カクバリズムとの出会い

この頃のパーティーを一つあげるならUKのブレイクビーツ・ユニット、スキーウィッフ(Skeewiff)の来日DJツアー。そこで初めてYOUR SONG IS GOODに出会いました。カクバリズムからの7インチ“Super Soul Meetin’”(2003年)で衝撃を受けて、当時JET SET下北沢勤務だったコサオ経由で出演してもらうことになったんじゃなかったかなー、確か。もちろんDJでもプレイしまくっていたんだけど、クボタ(タケシ)さんのMIXCDに”Super Soul Meetin’”が収録されちゃったのもあって、カップリングの”Sweet Spot”をいかにスムースに組み込むか!みたいなところが楽しかった。この曲は世界中で僕が一番上手くかけたはずだ。

それでツアーの京都編METROでは、ユアソンのライブで最前列で散々暴れまくったイベント終了後に、ユアソン&カクバリズムチームが急遽僕の実家に泊まることになって、小屋の二階で10人に雑魚寝してもらったなー。そんでJ氏だけ朝風呂入ったなー。美代子(母)はごはん作ろうとしてた。最終的に市内の高速入り口付近まで送って行って将軍塚の辺りでみんなで記念写真を撮った。角張(渉)くんも小山内も若かったし、僕はSILASを着ていた。これを機会にカクバリズムとの距離がグっと近まってイベントの〈カクバリズムとセカンドロイヤル〉に繋がっていくし、そこで角張くんが急性アルコール中毒になるんだけど、それは2007年みたいだしまた次回かな。

HALCALI、m-flo、「サマータイムマシン・ブルース」……ビッグな仕事をこなす

そして、同時期に印象的だったお仕事。まずはHALCALI“ギリギリ・サーフライダー”のリミックス。RIP SLYMEのRYO-ZくんとFUMIYAくんがプロデューサーだったのでFUMIYAくんを介して担当者の方から『HALF WORKS』に掲載したアドレスにいきなり直接連絡が来て、一同泡を吹きます。何故なら2001年リリースのリップの『FIVE』は長らく心のベストテン堂々1位のアルバムだったから。本当によくできたアルバムで影響受けまくりました。

肝心のリミックスはネオアコ・ネタから引っ張ってきたトロピカルなピアノループとスカのリズムでポップなFRESKANOVA(2000年代のBIG BEAT人気レーベル)をめざしました。HALCALIちゃんはこの後“スラローム‘03 “ゲレンデの女王””(2003年)って曲を作った際に、中目黒かどっかのレコーディングスタジオにて初めて対面するのですが、学校帰りのブレザー姿でやってきて、ラップ担当のKOHEI JAPANさんのディレクションを聞いて、お菓子食べながらチョイチョイってカジュアルに録音をこなしていて「スーパー女子高生!」とマジで口に出して言いました。

M.I.A.の2005年作『Arular』収録曲“Bucky Done Gun”
よく考えたらこの頃の僕はディプロ(Diplo)に夢中だったはず。マイアミベースがブラジルまで南下して生まれたバイレファンキ、創始者DJマルボロによるロッキーのテーマ使いを元に、当時M.I.A.の彼氏でもあったディプロが手掛けたフロアアンセムがこちら。世界の中心がここにありました
 

次にリミックスワークの一つの節目となったのがm-floのリミックス。しかも野宮真貴さんとクレイジーケンバンドをフィーチャーした“Cosmic Night Run”(2004年)が依頼曲だったので、西野カナの5億倍震えました。武者震い。もちろん横山剣さんの〈いぃーねっ!〉 をカットアップするところからレコーディングがスタート。憧れの野宮さんのアカペラに感激しながら、ファンカデリック・ブレイク史上最高のリミックスが完成。デモを聴いた☆Taku Takahashi氏から「ブレイクをもっと派手に!」と発注を受けて「はい!」と答えたのがドンキホーテの駐車場だったのよく覚えています。後にミッチー申し訳さん現ミッシェル・ソーリーさんがこのリミックスを激しく気に入ってくれて、新潟にもよくDJで呼んでもらいました。近年、okadadaくんが「たまにかけるんですよ」と言ってくれたのもとても嬉しかったです。

※ミッチー氏は新潟でクラブ、The PLANETを経営していた
 

m-floの2004年のリミックス・アルバム『ASTROMANTIC CHARM SCHOOL』に収録されたm-flo loves 野宮真貴&CRAZY KEN BAND“Cosmic Night Run”(HALF & HALFBY MIX)
 

そしてファーストアルバム『GREEN HOURS』の制作途中にぶっ込まれてきた大仕事が「サマータイムマシン・ブルース」のサウンドトラックの仕事。京都のカフェを借り切って、完成した映像をスクリーンに映しながら、本広(克行)監督に直接レクチャーしてもらいつつイメージを共有していく打ち合わせを経て、トータルで1か月も作業期間がないなか、(橋本)竜樹くんにもSTRAUSSとして共同タッグを組んでもらい、完全分配作業でひたすら猛進。デモ・タイトル“カッパの唄”や“キュウリのファンク”など楽しげな曲も含めどうにかこうにかフィニッシュ。僕が担当した“GIRLS & BOYS”という曲は、「いきなり!黄金伝説。」の人気コーナーにて、よゐこ濱口が獲ったどー!と絶叫するシーンでずっと使われていたのはたぶん僕しか知らないはず。

映画「サマータイムマシン・ブルース」の原作は、京都の劇団ヨーロッパ企画の舞台で、ヨーロッパ企画主宰の上田(誠)くんや、映画にも出演していた永野(宗典)くん、本多(力)くんなどヨーロッパ企画のメンバーとも知り合えたし、そのほかの俳優の皆さんもとても親切で、ムロツヨシくんとはその場のノリで連絡先を交換しました。超ミーハー。何より映画も舞台もめちゃくちゃおもしろくて、参加できて本当にいい経験になりました。「サマータイムマシン・ブルース」のサウンドトラックはTOY'S FACTORYからのリリース。そう、この頃にはトイズ・チームにもすでに色々動いてもらっていました。

小山田圭吾に育まれたHALFBYの〈ネオアコ〉

さて、いよいよ『GREEN HOURS』の話。すでに楽しいから一発屋で消えたくない!と色気が出ていた僕は、軽く〈二番煎じのムード〉も高まっていた、大ネタ偽ラップ的なノリを捨てることに。シグネイチャー的に使いまくっていたファンカデリックのドラムからも卒業を決め、BPMを115以上に設定(重要)。ディスコのようなブレイクビーツのようなヒップハウスのような、そして上物はカントリーとかオールドタイミーな感じと、お得意のボンヤリ展望を胸に小野(真)くんの家へと急ぎます。とは言っても基本のサンプリングという手法は変わらずですが、機材面でMacBookとLogic Proを導入し、セッション・ウインドウでのEDITに明け暮れるように。

そのうえで大きな影響源となったのが、高校生時代に聴いた小山田圭吾氏のラジオDJ(PIZZICATO FIVEのアルバムプロデュースを担当した際の)。テープに録音し、ミシェル・ルグラン(Michel Legrand)から、アンリ・サルヴァドール(Henri Salvador)、アストラッド・ジルベルト(Astrud Gilberto)、ポール・ウィリアムス(Paul Williams)、ジョージィ・フェイム(Georgie Fame)、ムー一族のテーマ、パティ・オースティン(Patti Austin)、リカルド・マレーロ(Ricardo Marrero)などが奇跡のバランスを保ちながらスムースに選曲されていく流れに、繰り返し聴く度に感動していました。

情報が無いということも相まってその時間があまりにフレッシュな体験となり、ジャンルや時代は違えど世界にはこんな素晴らしい音楽があるのか!? というかこれ全部がネオアコなんじゃないか!? この名も知らない楽曲たちを一つ一つ明らかにしていきたい!という音楽への初めての欲求が生まれ、レコード収集の波にのまれていったのです。そのなかで選曲されていたフォーク歌手のダン・ヒックス(Dan Hicks)を聴いたときも、これがネオアコか!と、半分間違った、でもHALFBYマインド的には間違っていない、自分のなかの指針みたいな感覚が生まれた瞬間だったのです。

※アーティスト名はリアルタイムではわからず、その後に知りました
 

という事件があったことで、ジャジーでスウィンギーなカントリーやフォーク周辺の音楽も、elレーベルやヴィック・ゴダード(Vic Godard)、80’Sのネオアコやファンカラティーナと称される作品を掘り下げていくようになったこともあり、ある種のレアグルーヴ的なテクニック思考とは真逆にあるような〈フェイク〉としての魅力にどんどん惹かれていきます。そのフェイクの感覚がネオアコという結論ではないですが、あの時ラジオで聴いたノーミックスのDJ体験が、大袈裟ではなくHALFBYというアーティストを成形していったのです。ありがとう小山田くん。ありがとうCornelius。そうしたムードが渋谷系以降の京都代表という自称の元に、小野祖母の部屋のコタツの上でフロアユース化したのが”Rodeo Machine”。次は馬でしょ!とそのとき思ったような気がします。

ダン・ヒックスの78年作『It Happened One Bite』収録曲“Cruzin’”
当時はShazamとか無いからこのレコード見つけたときは本当に嬉しかったなー。確か大阪のジェリー・ビーンで買ったのかな。嬉しくて学校の昼休みに放送部に頼んで流してもらったんだっけ。当然誰も反応しませんでした

HALFBYが僕らの国の王様になったんだ

“Rodeo Machine”を初めてかけたのは、当時新宿のOTOにて毎月レギュラーでやってた〈FREAKY!〉。森野くんが「これ誰?」って訊いてきたな。イベント名は松野くん(光紀、FREDO)考案。いま考えるとフリーキーなとこ1mmも無かったけど、店長の落合(一哉)さんが「HALFBYのレギュラーやろう! 毎月京都から来い!」って言ってくれて延べ10年間やりました。なので、アナザースカイ的な東京での思い出を振り返るなら新宿一番街になるんですよね。色々あったな~。初期レギュラーは松野くんとTaKaHi-Rock、MU-STARSの大ちゃん(藤原大輔)と僕だっけ? レコードを聴いてくれた東京の同世代のDJたちもたくさん遊びに来てくれてすごく嬉しかったのを覚えてます。HALFBYが東京で受け入れられたような気がして。

『GREEN HOURS』収録曲“Rodeo Machine”
 

その“Rodeo Machine”をきっかけとしてようやく人生初のアルバム制作に入るわけだけど、例によってあまり覚えてません。散り散りのピースを集めると、モノクローム・セット(Monochrome Set)の“Jacob’s Ladder”(84年)を意識して教会の鐘の音をサンプリングしたこと。当時働いていたレコード屋でイギリスの有名ライブラリー・マニアからの大量の買取があり、そのレコードを店出し前に試聴して色々サンプリングネタが買えたこと。制作途中から竜樹くんが小野家を出てひとり暮らしを始めたこと。近所の〈唐子ラーメン〉の隠し味はかぼちゃだったこと。80KIDZの林(JUN)にCDのデザインをお願いしたこと。そのアイデアのなかにソニック・ユース(Sonic Youth)『A Thousand Leaves』が入っていたこと。翁長(良平)くんが始めたレーベル〈Rimeout〉のアーティスト、キュムラス(Cumulus)とロブ・ラッシュ(Rob Rush)にラップを頼んだこと。などが肉付き『GREEN HOURS』が完成していったように思います。

トイズのバックアップで“Rodeo Machine”のMVをgroovisionsが担当し、それきっかけで映像担当の住岡(謙次)さんとはタッグを組むように色々な仕事をさせてもらいましたし、映像はニコニコ動画発足時の中曽根オフというムーブメントのきっかけにもなりました。小西さんから〈HALFBYが僕らの国の王様になったんだ〉と絶賛コメントをいただき、川勝正幸さんの著書「ポップ・カルチャー年鑑2006」にも取り上げてもらいました。思えばここがHALFBYのピークだったような気もします。

groovisions制作のアニメーション「当代熈代勝覧」
住岡さんが映像を担当、僕は音楽をつけました
 

さて、今回のSpotifyのプレイリストも1年しばり。2005年リリースの音源のみで作りました。いまのムードがかなり反映されてますし、当時リリースされていたことも知らなかったアルバムなどからもセレクトしてるので、ヒット曲はよりエモく響くはず。自分で作っといて「めちゃくちゃいいやん!」と5回言いました。という感じで今回も縦横にブレながら書いていきました。そろそろ肝心のアルバムがリリースされますので、みなさん是非聴いて下さいよ! 自信作!自信作!自信作!裏声で自信作! また次回お会いしましょー。アロハ。

 


RELEASE INFORMATION

HALFBY 『Loco』 felicity /Pヴァイン (2021)

リリース日:2021年10月6日
配信リンク:https://p-vine.lnk.to/nJ9sjy

参加ミュージシャン
サイトウジュン(YOUR SONG IS GOOD)/Ginger Root/mei ehara/Ruru/Richard Natto/MC sirafu/あだち麗三郎/上田修平

TRACKLIST
1. Loco
2. Everything Needs Love feat. Jun Saito
3. Calm As Day feat. Ruru
4. Beach Baby Be Mine feat. Richard Natto
5. A Lei, A Kiss, And Aloha
6. Quiet Rain
7. Fushigi feat. Mei Ehara
8. Hawaii Calls 2021
9. Let's Stay Out feat. Ginger Root
10. Fish And Poi
11. Sleepy Lagoon
12. Sunset Cruise Club
13. I'll Remember you feat. Ruru
14. Love Aloha