インタビュー

森下周央彌『Ein.』ピアノレス、ドラムレスの編成で〈いまない音楽〉を作り出すギタリストが語る

©Shinya Fukumori

〈ないもの〉を求めた楽曲を、独創的な編成で綴るギタリスト/作曲家

 大阪在住のギタリストである森下周央彌のデビュー作『Ein.』を聴いていささか驚いた。弦楽器その他を編み込んだ内容はとても静謐で、アート。その質の高い表現総体は、森下がどういう音楽遍歴を持つ人物か察しにくいオリジナリティを持っている。

 「(ジャズを専攻していた)学生時代は満遍なくジャズを聴いていました。ジム・ホールとか、白人系のギタリストが結構好きでしたね」

 そんな彼の音楽的な転機は、大学卒業後にチコ・ハミルトンやジミー・ジュフリーといった変則編成を取りつつ、ハード・バップとは一線を画す、ある意味ジャズ・ビヨンド的な指針を取るウェスト・コーストのジャズに親しむようになったことという。

 「それまではハード・バップや先輩の影響でコンテンポラリーなギタリストも聴いてはいました。その後、しっかりジャズ的な要素を含んでいながら新鮮な響きがあるウェスト・コーストのミュージシャンを聴くようになったというのが、ちょっと違う方向に行くきっかけだったんです」

森下周央彌 『Ein.』 S/N Alliance(2021)

 『Ein.』は2曲のカヴァーも含むが、もちろん自作曲ありきの作品だ。素晴らしく風情のある曲が有機的に紡がれている。

 「個人的には〈ないもの〉を作りたいという志向が強くて、誰かのような曲とかそういうのではなくて自分にとってあまり聴いた事のない曲というのを探してきました。今回収録している曲は自分の中からちょっとづつ新鮮なものを絞り出して、貯めたものです」

 その新鮮さは曲作りとともに、楽器編成の妙が導く。ギターとヴァイオリンとチェロのトリオを核に、そこにクラリネット、打楽器、ケルティック・ハープ、ダブル・ベース(1曲のみ)が曲により加わる。かようなピアノレス編成のもと、印象的なジャズ・ビヨンド表現が自在に編み込まれた。

 「ピアノレス、ドラムレスというのはギタリストにとっては、結構な挑戦ではあります。また、ベーシストによる低音の安定感がないところで音楽を作っていく方が緊張感がありますし、僕が求める浮遊感のようなものを強調しやすいですね」

 そんな作法を抱えた本作は、プロデューサー/ドラマーである福盛がディレクションし、彼の〈nagalu〉に続く第2のレーベルとなる〈S/N Alliance〉からの第一弾となる。

 「福盛さんの音楽力、音楽センス、美的感覚ってすごいものがあると僕は思っています。そして、今回デビュー作を作るにあたり、それを客観的に見てもらうために彼にディレクションをお願いしました」

 抱える〈心の嵐〉や我が道を行きたいという欲求は『Ein.』に見事に結実、聴き手に悠然と働きかける。

 


LIVE INFORMATION

URACHROME II
2021年12月27日(月)大阪・西梅田 Mister Kelly’s
出演:鈴木孝紀(クラリネット/バスクラリネット)/森下周央彌(ギター)/甲斐正樹(ベース)/福盛進也(ドラムス)

https://www.suomi-morishita.com/

タグ
関連アーティスト