(左から)佐藤浩一、福盛進也
 

ミュンヘン在住時の2018年に、ECMから初リーダー作『For 2 Akis』をリリースしたドラマー/作曲家/プロデューサーの福盛進也。だがコロナ禍により、本来の予定よりも早く日本へと居住を移し、昨年設立した自己レーベルがnagaluだ。〈どこにもない、自分の音楽〉を鋭意送り出すそのさまを目の当たりにすると、世界を見た新しい日本人としてのジャズ・ビヨンド表現創作の気概が確かな形になっていることに気付かされる。そんな彼が2021年11月25日(木)~27日(土)に、同レーベルの全貌を伝えるイベント〈nagalu Festival 2021〉を東京・丸の内コットンクラブで信頼できる仲間たちと共に開催する。3日間4公演すべてに出演する福盛進也と、同レーベル第2弾アーティストであるピアニストの佐藤浩一に、レーベルやフェスについて話をうかがった。


 

日本人だからこそできる音楽を

――まず、nagaluレーベルのコンセプトについて語ってもらえますか?

福盛「流れる水は腐らないという〈流水不腐〉という言葉を父から聞いていて、そういう〈水が流れるような音楽〉というのを作りたいなという思いをずっと持っていたんです。それで、自分のレーベル名を考えた際に、流れるという言葉が一番しっくりきて、それでnagaluと名付けました」

――それは、侘び寂びに代表されるような日本人的な心持ちとつながるところもあるのでしょうか。

福盛「うーん。どうでしょう? 日本人だからそう思うところはあるのかもしれませんけど」

――福盛さんは高校時代からアメリカに音楽を学びに行き、その後にはドイツでも暮らしています。海外生活が長いと、逆に日本人的な何か、美点のようなものには敏感になったりもするのでしょうか? 

福盛「そうですね。行った当初は全然思わなかったですけど、途中からは自分はやっぱり日本人なんだというのを嫌でも認識するようになりました。どうしたって日本人でしかないわけで、日本人だからこそできる音楽をやろうと思うようになりましたね」

――佐藤さんもバークリー音大に行っていますよね。やはり向こうに住んで日本人としての意識が強くなったということはありますか?

佐藤「僕が行ったのはほんの2年ほどなので、進也君とは長さが違いますけど、短いなりに僕も当時は悩んだところはありました。当時はアメリカのジャズやブラックミュージックに憧れがあって行ったわけですが、いざボストンでいろんな国の人と会うわけですよね。そして、ブラックミュージックを演奏している学生たちと一緒にやったり、無宗教ですけどチャーチに行ったりもし、そうすると音楽への憧れはあるんですけど、精神的な部分で自分が演奏する音楽ではないと気付いてしまったんです。2年間いて日本に帰ろうと思ったのは、自分にしかできないことができるのは日本だということでした。その時点で、僕も日本人としての感覚というのは意識しました」

福盛「あれ、NYにもいなかった?」

佐藤「NYは半年弱ぐらいです」

――向こうの生活やノリをちゃんと知っているからこその、インターナショナルな日本人の音楽という思いにたどり着いたという部分はあるんじゃないかと思います。

福盛「そうですね。とくに作曲をしはじめてから、どこか日本人的なメロディーやハーモニーが無意識に自ずと出てくるので、そういうことを意識するようになりましたね。曲を書くと普段聴いているアメリカやヨーロッパのジャズとは違うものが出てきたりもしますからね。それに作曲という行為は、自分自身が何をやりたいかが見える一番の手段だとも思いますし」

福盛進也
 

――福盛さんがミュンヘンに行ったのは、アメリカのジャズに対する違和感もあったわけですよね。

福盛「そもそもテキサスに在住の頃はハードバップをやりたい思いが強く、その後コンテンポラリーも好きになりヴィニー・カリウタみたいになりたくてバークリーに行ったんですけど、途中でなんか違うなとなりました。そして、すでに存在するものをやってもしょうがないと思ったときに、ECMと出会ったんです。それでヨーロッパに行きたいなとなって。でも結局念願のECMからアルバムを出したらこれもちょっと違うなと……」

――(ECM社主/プロデューサーの)マンフレート・アイヒャーは個性が強いですからね。

福盛「どこまで言っていいか分からないけど、ちょっと残念なところがあって。自分が作り上げた世界観が彼の音楽となり小さくまとまってしまった。元々プロデュース業に興味もあったし、それだったら自分のレーベルでやりたいということになったんです」

――福盛さんと佐藤さんのデュオ公演をはじめ、何度か一緒になる公演を観させてもらっていますが、お2人が最初に出会った時のことを覚えていますか。

福盛「2018年に伊藤ゴローさんを介して知り合ったんですよね。最初トリオでやったら、いいピアニストだなと思い、その後ずっと密に付き合いが続いています」

佐藤「永福町のsonoriumでやった時(2018年1月)のリハーサルの段階で、すごくしっくりきたんですよ」

福盛「あ、それは初めて聞いた(笑)」

佐藤「進也君の曲もやるというので譜面を送ってもらって、リハーサルでポロっと弾いたら、僕の側にきて褒めてくれたんですよ(笑)。進也君の譜面を僕なりに弾いただけだったんですが、ピッと合った感じがあって、一緒に音を出した時の気持ち良さは今もよく覚えています」

2019年1月に行われた2人のライブの模様
佐藤浩一

60歳ぐらいになった時に作れればと思っていたピアノソロ

――そして、nagaluレーベルの第2弾として2021年11月30日にリリースされるのが、佐藤さんの『Embryo』です。1作目となる福盛さんの『Another Story』(2020年)も2枚組ですが、nagaluはすべて2枚組で出すんでしょうか? 第3弾となるRemboatoの『星を漕ぐもの』もそうですし。

佐藤浩一 『Embryo』 nagalu(2021)

福盛「そうなるんでしょうね」

――わざわざモノラルで録っているんですよね。

福盛「はい、モノラルで出します」

――そういう事実を知ると、これは酔狂というか、根性が入っているなあと思ってしまいます。ジャケットもそれぞれに特殊仕様の凝ったものですね。

福盛「まあ、普通にやっても売れないので……」

――他と同じことをやらないという指針は尊いです。でも、続けるのは大変ですよね。

福盛「ジャケットは(デザイナーの)佐藤ゆめちゃんにまかせっきり。すごくいいアイデアを出してくるんですよ」

――佐藤さんの『Embryo』は、ディスク1の“Water”はピアノソロ(通常ジャズでは用いない古典調律を施したピアノを演奏)、そしてディスク2の”Breath”は曲によっては弦楽四重奏も入った内容になっています。

福盛「2枚組を前提でソロとアンサンブルでやらないかと打診をしたんですよ」

――その二つの指針は、プロデューサーからなんですね。

佐藤「僕は最初、ソロを録るつもりはまったくなかったんです。でも、聴きたいと押してくれまして。僕はソロは60歳ぐらいになった時に作れればと思っていたんですよ」

――やっぱり、ピアノソロはハードルが高いというところはありますか?

佐藤「そうですね。今編成をどんどん増やしていきたいという気持ちがありまして。これまで1枚目はピアノトリオで、2作目は6人編成で録音して、人数が増えてきているんです。40〜50代でオーケストラものを書いて、その後にピアノソロを録れればと勝手に思っていました。とはいえ、ここのところはピアノソロでライブする機会も増えてきてはいるんですけど。ソロで演奏するのは、最初は苦痛でした。2人以上でやるのと1人でやるのとでは大違いで、すごいストレスだったんです」

――でも、そのディスク1を聴くと、ストレスとは無縁じゃないですか? 本当に自然体で、浮かんできたメロディーだけを拾ってピアノを弾いているという感じがします。

佐藤「そうなんですよね。アンサンブルとは違う、ソロの良さが分かってきたんです。全然違う良さがあって、シンプルにメロディーを弾くのが9割ぐらいで、いわゆるインプロは少ないんです。でも、メロディーを弾く瞬間というのは自分にとっては即興に対する新たなアプローチでもあるんですよ。だから、僕の中では即興から離れたつもりはまったくないんです。それから、ピアノソロは小曲集みたいなものを作りたいという思いがありまして、1曲は短くてシンプルで、聴いていると次の曲になっているみたいなものにしたいと思いました」

――そして、ディスク2の方はずっと追い求めてきたものなんですよね。

佐藤「そうですね。編成に関しては、進也君の提案で定まっていったんですよ」

福盛「nagaluを立ち上げようかと話が出た時に、メロディーがはっきりと出る小作品集のようなアルバムを録りたいねと浩一君に電話したんですよ。それが2年前かな。僕の中ではエレキギターと弦が入っているイメージがあって、それを話したら、そこから浩一君がどんどんアイデアを練ってくれました」

――アレンジは佐藤さんがやっているんですよね。

佐藤「弦はそうで、あとは現場でディレクションしていきました。弦に関しては、クラシックにならない感じで、自分のピアノを前に出しているつもりです」

――ディスク2のほうで福盛さんは半数の曲に入っていますが、どんな感じで叩こうとしたのでしょう。

福盛「僕は……ドラムが入らなくてもいいんじゃないかと思ったんですよ。そんなにプロデューサーが前に出なくても、と」

――では、プロデューサーとして、どんなことに気を使いました?

福盛「構成ですかね。浩一君が曲を作った段階から一緒に考えたり話をしたりし、そこから浩一君がアレンジし直したりしていって、そういうところに気を使ったかな」

nagaluフェス1日目〈佐藤浩一 〜 "Water & Breath" 『Embryo』リリース・ライヴ〉

――〈nagaluフェス〉の1日目は、この佐藤浩一さんの公演となります。これはアンサンブルとピアノソロの両方を披露することになるのでしょうか?

佐藤「今イメージしているのは、アンサンブルで始めて、中盤でソロを何曲か演奏して、またアンサンブルをやろうかなと思っています」

――参加者はほぼほぼレコーディング参加者が出演するという感じですよね。

佐藤「そうですね。ベースの甲斐(正樹)君だけがドイツに戻っているので、吉野弘志さんにお願いしました」

――吉野さんというのも渋いですよね。経験豊かなベテランですし。

佐藤「吉野さんとは以前から共演させていただいているんですよ。そして、進也君と吉野さんの3人でこの前演奏する機会があり、これは合うと思い今回お願いしました」

――『Embryo』をフォローするわけですが、ライブではどんな感じに膨らませたりするのでしょう? 

佐藤「照明が楽しみなんです」

福盛「今回、照明を外注でお願いするんです。だから、いつものコットンクラブのそれとは違うものになると思います」

――どうして、ライティングに凝ろうと考えたのでしょう。

福盛「先月、高知に2週間半滞在して舞台をやったんですよ。ミュージシャンは僕だけだったんですが、僕もちょっと演技をしたんです。やはり舞台の人たちは、音楽のステージの作り方と全然違うんですよ。劇場に入ってじっくりと照明や音響の人も含めて全員で作りあげていくのがいいなと思えたんです。いつものジャズの世界だと、場所や関わる人がどうしても被ってきてしまうしどれも似たり寄ったりで面白みがない。それに違和感を覚え、何か変えたいなと思ったんです」

――なんか、アンチの塊じゃないですか。

福盛「(笑)。それでやっているところはありますね。今まで関わってきた音楽の人と一度離れて、先月やった舞台のような作り方をもう少ししていきたいなと思っていた矢先にちょうどコットンクラブでのこの話があったので、照明をいつもと違う人に頼んでみようと思いました。演劇の方で照明大賞のようなものをとった方にお願いします」

佐藤「それが楽しみですね。音楽自体のほうはできるだけ長い時間、たっぷりやりたいなと思っています。最初はリズム隊だけの演奏から始まるかもしれないし、いろいろなことを見せていきたいと考えています。そして、基本的にはアルバムのアレンジを踏襲しつつ、エレクトロニクス音が入っている曲はアレンジを変えようかと思います。CDではバイオリンとチェロとエレクトロニクスでやっている曲があるんですけど、今回はそこにビオラとコントラバスも入れて厚くしようと思いますし、可能だったら1曲は新曲をやりたいですね」

(左から)市野元彦(ギター)、佐藤、ロビン・デュプイ(チェロ)

nagaluフェス2日目〈林正樹グループ 〜 "Blur The Border"〉

――続くフェスの2日目は、林正樹さんがリーダーとなる日です。

福盛「これはまだレコーディングしていないプロジェクトとなりますね。実はS/N Allianceという兄弟レーベルを今年立ち上げたんですよ。nagaluはモノラル録音だとか、2枚組だとか、日本のものしか出さないとか、いろいろ決まりごとを勝手に自分が決めているんです。アメリカやヨーロッパにずっと滞在している中で、海外(特にヨーロッパ)では活躍しているけどこっちではあまり知られていない人たちの音楽や、録音済みだけど発掘を待ち望んでいる世界中の素晴らしい音楽というのを、nagaluよりももう少し自由な感じでS/N Allianceから出したいんです。そしてもちろん、林正樹グループのような日本の音楽の新録もリリースしていきたいですね。

去年、森下周央彌という関西にいるギタリストのレコーディングに僕がディレクターとして立ち会ったんですが、素晴らしい音ながら自主レーベルからしか出していなかったので、それをレーベルの第1弾として出しました(『Ein.』)。それが8月で、10月にはバイオリン奏者の吉田篤貴さん率いる〈EMO strings meets 林正樹〉の『Echo』というピアノと弦楽器のアンサンブルのアルバムを出しました。正樹さんのライブには、その吉田篤貴さんも入ります」

佐藤「僕は挾間美帆さんのm_unitで彼と一緒なんです。そこでは吉田君はビオラなんですけど、それで僕のアルバムでもビオラを弾いてもらっていますし、今回の僕のライブにも入ってもらいます」

――2日目は、完全に林正樹さんがイニシアティブを取るわけですね。

福盛「そうですね。林正樹グループの名義で、全部正樹さんの曲をやります」

――メンバーが藤本一馬さんや福盛さんに加え、ベーシストが須川崇志さんであるのが興味深いです。林さんは須川さんのバンクシアトリオの一員でもありますが、須川さんは普段、本田珠也さんや石若駿さんとコンビを組むことが多いですから。

福盛「そうですね。須川さんと同じ現場になることはまだそれほど多くはないですが、音楽的にも人間的にもすごくやりやすい人だと感じています。実は、林さんが自分の名前が付いているグループをやるのは今回が初めてらしいんです」

――では、今回のライブのために林さんは張り切って、いろいろ考えそうですね。

福盛「新曲もあるし、今までやった曲もこのグループ用にアレンジしてやるので新しい世界が見えると思います。彼の“大和比”という曲があるんですよ。それって1:√2のことで割り切れない数字らしいんですけど、それを楽譜にして音楽にしている面白い曲なんです」

――林さんって、変な拍子の曲をよく作るんですよね。

福盛「それは最終的に41拍子と58拍子になって、限りなく1:√2に近くなるんです。正樹さんらしい曲で、僕は大好きなんですよ。正樹さんの素晴らしさの一つとして、楽譜上難しく見える曲も実はどこかキャッチーで、変拍子だけど変拍子という事実を聴き手に感じさせない美しい曲を作るところですね。だから楽譜を覚えるのも意外と簡単です。その最たるものが、さっき言った“大和比”だと僕は思います。はっきりとしたメロディーがあるわけではなく、ずっと同じ音が繰り返されるんですけど、そういう不思議な魅力があるんです」

林正樹グループ(左から藤本一馬/ギター、福盛、林正樹/ピアノ、吉田篤貴/バイオリン、須川崇志/コントラバス)

――佐藤浩一さんと林正樹さんって、リアルな研ぎ澄まされたジャズ感覚とジャズ・ビヨンドたる広い感覚を理想的に併せ持っている最たる日本人ピアニストだと、僕は思っているんです。その2人と親しい関係を築いている福盛さんって、なんて〈引き〉の良い人かと感心してしまいます。

佐藤「ありがとうございます」

福盛「それについては、めちゃくちゃ恵まれていると思いますね。そういう運は持っていると思います。まあ、運だけでやってきているので(笑)。浩一君と正樹さんは僕が一番共演の多いピアニストですが、全然違うタイプのピアニストであり作曲家でもあり、得る喜びが各々で違うんです。だから、初日と2日目はその対比が面白いし、楽しみでもありますね。何度かやってレパートリーも固まってきていますし、林正樹グループはどんどんグループらしくなっていますね。その流れで、レコーディングできたらレーベルとしても嬉しいなと思います」

nagaluフェス3日目ファーストショー〈Remboato 〜 "Nordo Al Sudo" 『星を漕ぐもの』リリース・ライヴ〉

――フェスの3番目の公演は、Remboato(レムボート)です。nagaluレーベルの第3弾アーティストですが、これはどういう意味なんでしょう?

福盛「これはエスペラント語で、手漕ぎ舟という意味です。西嶋徹さんから出てきたもので、“星を漕ぐもの”という徹さんの曲があってアルバムの中で印象深い感じがしたので、それと関連するワードがバンド名になればいいなと思いました。アルバムのディスク1とディスク2のタイトルもエスペラント語で統一して、北と南という意味です」

――ギターの藤本一馬さん、ピアノの栗林すみれさん、そしてベースの西嶋さんと福盛さんによるカルテットです。これは四者対等のグループと考えていいんでしょうか。曲も同じような数を、それぞれ出し合っていますし。

福盛「そうですね。別にリーダーが誰ということもなく、自然と集まった4人がライブをやるようになり、レコーディングしちゃおうという成り立ちです」

Remboato(左から藤本一馬/ギター、福盛、栗林すみれ/ピアノ、西嶋徹/ベース)

――どういう感じでこの4人に固まったのでしょう。

福盛「一馬さんと徹さんと僕はよく一緒にやる組み合わせで、一馬さんのカルテットの場合はそこに正樹さんが入るんです。今年の初めに僕以外のこの3人が集まっていた現場があったりもして、そこでの話の流れでこの4人でやってみようとなりました。一馬さんのカルテットの正樹さんの代わりにすみれちゃんが入る形なので、同じような感じにならないように最初は少し気を使いましたね。そしたら、同じ編成なのに全然違う音楽になって、みんなも個性的なものを出してくるし、すぐにしっくりきました。これが4組の中で一番ジャズに近い感じがします」

Remboato 『星を漕ぐもの』 nagalu(2021)

――2021年12月20日(月)にリリースされるアルバムは聴いていて風情があるというか、気持ちいいです。4人それぞれが曲を出し合っていても、どこか統一性があったりもするんですが、そこらへんは何も言わずにそうなったという感じですか。

福盛「そうですね。ライブを何回かやって、特にこのグループはライブの積み重ねが大きくて、ライブでやっていたけど録音しなかった曲もあるんです。そうした中、各々統一性のある曲を出してきた感じですね」

――この4人の共通性は?

福盛「なんでしょうね。みんな曲を書くことと、酒好きなことかな。あ、すみれちゃんはそんなに飲まないか。とにかくみんな自分の音に対して責任を持って演奏をしているのが伝わってきますね」

――ジャズにはなるんだろうけど、こういうジャズがあってもいいんじゃないかという提案になっていると思います。

福盛「僕の個人的な意見なんだけど、このグループはすみれちゃんにかかっているんじゃないかな。彼女はここ数年ですごく進化したと思います。だからこそ彼女と共にこのグループはどんどん変化していくと思っていますし、それがこのグループの面白みに繋がると思います」

栗林すみれ

――ライブは第1作『星を漕ぐもの』に準じつつも、変わる部分もあるのでしょうか。

福盛「アルバムでは4人が対等な立場であることを出したかったので、良い意味で違和感のある特殊な音作りになっていると思いますが、ライブになると阿吽の呼吸で変わっていくところはあるでしょうね。そういう意味でもnagaluの中では一番ジャズに近い感じのグループかと思いますね」

――福盛さんはフェスの4つすべてのライブに出てドラムを叩きますが、それらで叩き方や身の置き方を大きく変えるのでしょうか。

福盛「それは曲次第だと思いますね。このグループは特にジャズっぽいアプローチがあるから、他の3つではここまでリズムを叩き出さないと思います」

 

 

nagaluフェス3日目セカンドショー〈SHINYA FUKUMORI Another Story 〜 "美しき魂"〉

――そして、フェスの最後を飾るのは、福盛さんが主役となる公演です。nagalu第1弾リリースとなった福盛さんの『Another Story』を改めて振り返ると、どんな内容だと思いますか。

福盛 進也 『Another Story』 Nagalu(2020)

福盛「『Another Story』はもともと録音する予定じゃなかったんです。(ECMから2017年に『Near East Quartet』を出したこともある韓国人サックス奏者の)ソンジェ・ソンのアルバムを東京で録ろうとしたら、コロナ禍に入ってしまい来られなくなったんです。でも、スタジオを押さえているし、そろそろ自分の2枚目を作ってもいいかな、と。それで録音3週間前に急遽みんなに連絡したら奇跡的に全員スケジュールの都合がついて、じゃあやろうかとなりました。

ECMからの『For 2 Akis』の出来に納得いかない部分もあったので、『Another Story』でやっと自分の音が出せたなという気持ちがあります。僕は生まれつき左耳が聞こえないから、モノラルで自分が普段聴こえている音世界をそのまま出せたアルバムであり、自分が音楽を始めてからずっと思い描いていたものがようやく形になったアルバムです。思うまま作ってみたら、いつの間にか2枚組になってしまいました」

『Another Story』のメイキング映像
 

――それと、コロナ禍で日本に住むようになり、付き合いのできた日本人の音楽仲間たちとのやりとりが確かな形になった内容でもありますよね。〈福盛ファミリー〉のお披露目みたいな感じもあるように思えます。そして、今回のライブにはアルバムに参加していた奏者の中から5人、そしてやはりそこで歌っていた青柳拓次さんと、Salyuさんも加わります。

Salyu、青柳拓次
 

福盛「そうですね。『Another Story』を人前でやるのは初めてなんです。配信はやったことがあるけど、前に予定していたコットンクラブでの公演も2度延期になってしまったので、今回は満を持してという感じです。ようやく、ですね」

――サックスの蒼波花音さんは、佐藤さんのお弟子さんなんですよね?

佐藤「弟子というわけではないんですけど。僕が大学で教えていた時に、サックスとピアノのデュオで教えていたんです」

――そして、福盛さんは彼女がいいなと思い誘ったわけですか?

福盛「浩一君とSungjaeと一緒にやったライブを見に来てくれて、そこで知り合い、Twitterにアップしている映像を見て日本で一番可能性のあるサックス奏者だなと思ったんです。実際に生の音を聞いていたわけではないけど、直感的にいいなと思った。アルバムにはこれからのジャズを担っていくような人を誰か1人入れたいなと思っていたので、花音ちゃんに頼んでみようとなりました」

――『Another Story』はボーカル曲の存在も印象に残るアルバムですが、やはりシンガーを加えた形でライブをやりたかったのでしょうか?

福盛「そうですね。歌が入る曲もまた、『Another Story』の世界ですからね。この前、拓次さんと一馬さんと3人でライブをしたのですが、アンビエントな空気の中に歌やメロディーが存在する世界を前面に出しました。だから、そういう世界も入れたいと思いますし、童謡も取り上げたい。きっと〈『Another Story』、その後〉という感じになると思います」

――佐藤さんの、このセットに加わる抱負は?

佐藤「Salyuさんや拓次さんとは初めてだし、実は一馬さんともライブをやるのは初めてなんです。花音ちゃんとも学校ではずっとやっていたけどライブでやったのは数が少ないし、とにかく今は未知のことが待っていそうで、楽しみですね」

ゲストボーカルにSalyuを迎えた“可惜夜 (Improvisation)”
 

――『Another Story』が出て、もうすぐ1年。それを土台に信頼できる仲間たちともう一つ先にある世界を出すという感じになるような気がします。

福盛「そうなると思います。『Another Story』というプロジェクトは続いていきます。この先、3部作ぐらいになるんじゃないかと思っています。もう、2作目、3作目は自分で叩かなくてもいいかなとも思っていて、自分が出ないけど、自分の存在や世界観が出る作品というようにしたいんです」

――しかし、福盛さんは3日間の4公演すべてに出っぱなし。大変ですね。

福盛「ですね。大変は大変ですけど、どれも楽しみなので、大丈夫です。全体としては、nagaluを立ち上げた理由と同じなんですけど、こういう音楽って日本に根付いてこなかったので、それらをみなさんに見てもらいたい。そして、こういう音楽が日本から出てきて世界に発信できるということを知ってもらいたいです」

佐藤「奇跡的な3日間になりそうな気がします。(出演しない)2日目も行きたいし、こんな音楽を3日間体験できるなんて、本当に贅沢だと思います」

福盛「そうですね。nagaluとしてやるのは初めてですし、その3作品とS/N Allianceからも2作品が出ているので、僕たちの全体像が見えてくると思いますね」

 


LIVE INFORMATION

nagalu Festival 2021

佐藤浩一 〜 "Water & Breath" 『Embryo』リリース・ライヴ
2021年11月25日(木)東京・丸の内コットンクラブ
開場/開演:18:00/19:00
メンバー:佐藤浩一(ピアノ)、市野元彦(ギター)、吉野弘志(ベース)、福盛進也(ドラムス)、伊藤彩(バイオリン)、梶谷裕子(バイオリン)、吉田篤貴(ビオラ)、ロビン・デュプイ(チェロ)
★詳細はこちら

林正樹グループ 〜 "Blur The Border"
2021年11月26日(金)東京・丸の内コットンクラブ
開場/開演:18:00/19:00
メンバー:林正樹(ピアノ)、藤本一馬(ギター)、須川崇志(ベース)、福盛進也(ドラムス)、吉田篤貴(バイオリン)
★詳細はこちら

Remboato 〜 "Nordo Al Sudo"『星を漕ぐもの』リリース・ライヴ
2021年11月27日(土)東京・丸の内コットンクラブ
開場/開演:14:45/15:45
メンバー:藤本一馬(ギター)、栗林すみれ(ピアノ)、西嶋徹(ベース)、福盛進也(ドラムス)
★詳細はこちら

SHINYA FUKUMORI Another Story 〜 "美しき魂"
2021年11月27日(土)東京・丸の内コットンクラブ
開場/開演:17:30/18:30
メンバー:福盛進也(ドラムス)、佐藤浩一(ピアノ)、藤本一馬(ギター)、西嶋徹(ベース)、蒼波花音(サックス)、青柳拓次(ボーカル/ギター)
スペシャルゲスト:Salyu(ボーカル)
★詳細はこちら

料金(全公演/全席指定/税込):
テーブル席:6,000円
ボックスシート・センター(2名席):8,000円
ボックスシート・サイド(2名席):7,500円
ボックスシート・ペア(2名席):7,500円
ペア・シート(2名席):7,000円
※料金は1名様あたりの金額となります

通し券について
2公演以上のご予約から、限定・特別優待“通し券”のご利用が可能
限定数に達し次第終了いたします
※ご予約はお電話でのみ受付
2公演ご予約(1名様):8,400円
3公演ご予約(1名様):12,600円
4公演ご予約(1名様):16,800円

ご予約・お問合せ:03-3215-1555(12:00~19:00)