俊英ヴァイオリン奏者が鋭意送り出す、眩く織り込まれるストリングス表現の魔法
ストリングス表現と聞いて、どういう音を思い浮かべるだろうか。確かな技量や審美眼の先に斬新な佇まいや情緒の数々がたおやかに百花繚乱している吉田篤貴EMO stringsの『Echo』は、そんな問いかけに対する新たな答えを用意してくれる。
「マレー飛鳥さんがかつて金子飛鳥ストリングスというのをやり、チームとして作品作りをしたり、コンサートをやったりしていましたよね。弦楽器の集合体としてとてもアイデンティティがあったのですが、それ以降そういう事をする人がいなくて、僕の世代でもそういう事ができたらと思いEMO stringsを組みました」
吉田篤貴は4歳からクラシック・ヴァイオリンを習い音大で学んでいる。だが、「4年生の時にこのままクラシックをやっていくことに意味があるのだろうかと考えました。ちょうどそういう時にピアソラやジャズなどもやっていて、やっぱりこっちの方が面白いなとなり、動いていきました」
様々な活動をしている吉田にとって、EMO stringsはその柱となる。2019年に第一作『The Garnet Star』(T-TOC)を発表、続く『Echo』は〈meets 林正樹〉というリーダー名義が加えられた。今作では吉田だけでなく林も曲や編曲を提供し、どの曲においても含蓄に満ちたピアノ音を加えている。挾間美帆や三宅純といったインターナショナルなクリエイターからの信任も厚い吉田は、林正樹グループの一員でもある。
「林さんを介して、前作と違う表情のアルバムにしたかったんです。アンビエントな弦楽器の側面を出したものを作りたいと思いました。1作目は具体的な分かりやすい曲が多かったので、その次にある雰囲気を出せたらいいかなと」
クラシックが根にありつついろいろな方向を見すえ、生まれ出たアイデアを斬新な棘も埋め込みつつ上質な音の波として紡ぎ出していく。そんな説明もできる作品はは、『Echo』と表題付けされた。
「響きあう、共鳴するみたいな。そういう意味合いで、そう付けました。また、今作が遠くまで届いたらいいな、という意味合いもありますね。様々な聞き手の人に届いたらという願いも込めました」
鋭敏な発想や豊かな知見が息づく、もう一歩先にある高潔かつジャンルレスな音楽の地平の具現……。この『Echo』は福盛進也が主宰するボーダーレスな音楽を送り出す〈S/N Alliance〉からのリリースとなるが、本作は同レーベルのコンセプトにも合致するのは言うまでもない。
LIVE INFORMATION
吉田篤貴EMO strings meets 林正樹
2022年3月4日(金)神奈川・横浜 象の鼻テラス
開場/開演:19:00/19:30
出演:吉田篤貴(ヴァイオリン)/青山英里香(ヴァイオリン)/梶谷裕子(ヴィオラ)/島津由美(チェロ)/西嶋徹(コントラバス)/林正樹(ピアノ)
ご予約・お問い合わせ:emostrings@gmail.com
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