インタビュー

福盛進也、世界が注目のドラマーが立ち上げたレーベルnagalu。そこから発信する新しいジャズの形とは?

福盛進也『Another Story』

©Yuma Maehara

自己レーベル〈nagalu〉から発信する、新しい日本のジャズの形

 2018年にECMからリーダー作『For 2 Akis』を出して多大な話題を呼んだドラマーの福盛進也が、また大きく動く。新たに自己レーベルnagalu(流る)を設立、その第一弾として、2作目となる『Another Story』をリリースする。近年新たに出会った感覚派の日本人知己たちと自在に協調しあい、墨絵のようなという形容もしたくなる、幽玄な佇まいを持つ彼だけの表現群がそこには収められている。その2枚組大作で、彼は何を表現しようとしたのか。またそのレーベル、nagaluは今後どういう方向に向かうのだろうか。

福盛 進也 『Another Story』 Nagalu(2020)

――前作リリース後、ミュンヘンと日本を行ったり来たりしているんですよね。

「そうですね。今もそういう状態なんですけど、コロナで帰れずに(日本に)いるという感じです」

――自分のレーベルを立ち上げようと思ったのはいつごろですか?

「去年の末か今年の最初ぐらいから、徐々に水面下で進んでいきました。日本の新しい形のジャズというものを作り世界に出していきたいというところがあって、それが運良く形になったわけです。自分がプロデューサーとして、nagaluという一つのカラーを持つ新しいジャズを提供していきたいと思っています」

――レーベルを作るにあたり、日本なり、アジアの新しいジャズを外に発信できるものにしようという考えはあったのですね。

「外に出したいというのもあるし、欧米のジャズがたくさん入ってきている中、独自のジャズ色を出している日本人は少ないなとドイツから帰ってきて思ったりもしたんです。でも、面白いことをやっている人はたくさんいるので、なんとか自分たちで作れないかなという思いがありました」

――ぼくは福盛さんのECM盤を聞いて、日本人的な侘び寂び情緒とジャズとのこんなにフレッシュなマリアージュがあるんだと痛感させられました。

「前作がどれだけできたかはともかく、今作みたいなことを18歳ぐらいからやりたいなと思っていたんです。そして、やっとちゃんとした形になったなと思います」

――いろんな編成で録っているんですが、録音時の顔ぶれをちゃんと想定して曲を作っていたりもするのでしょうか。

「レコーディングが決まってから作った曲はそうですね。既存の曲は、すぐにこの組み合わせがいいかなとなりました」

――しかし、個を持ついいミュージシャンとしっかり出会っていますよね。たとえば、ピアノは佐藤浩一さんと林正樹さんを贅沢に使い分けています。ぼくはこの2人のことを、リアルなジャズ流儀とオルタナティヴなジャズ・ビヨンド感覚を併せ持つ最たる日本人ピアニストだと思っています。こういうミュージシャンは自分としては一緒にやりたくなる、というポイントはあったりしますか。

「音をよく聞く人。あと、自分の何かを持っている人。ここに参加しているメンバーは、そういうところがある人ですよね」

――青柳拓次さんとSalyuさんが歌う曲もいくつか入っています。やはり、ヴォーカル・ナンバーは入れたかったのでしょうか?

「うーん、そんなに分けて考えていませんね。Salyuさんは想像以上に素晴らしくて度肝を抜かれました。拓次さんは伊藤ゴローさんから紹介してもらって、一度藤本一馬さんと3人でやってそこからですね。そのとき、(ここに収めている)“Walk”もやりました」

――そして、新作『Another Story』は2枚組になりました。

「2枚組になると思わなかった。いっぱい曲を持って行って、録ったものの中からいいものを選ぼうと思ったら全部良かったんですよ。それで2枚組になったんですが、自分の伝えたいことがちゃんと出来上がったと思います」

――2枚組だと、インパクトがありますよね。ジャケットも凝った作りになっていて、所有欲を満たすと思いました。

「今作のコンセプトは、手紙なんです。大切な人に渡す手紙……。好きなアーティストからのアルバムって手紙が届く感じがあるなと、最初にチーム内で話が出て、アイデアが膨らんでいったんです。不特定多数ではなく、一人一人に宛てた手紙のようなデザインをお願いしました」

――ロマンチストですね。

「(笑)。そうだと思います」

 


福盛進也 (ふくもり・しんや)
バークリー音楽大学卒業。2013年に拠点をミュンヘンに移し欧州各国で活動を開始。独特で繊細なシンバルワーク、メロディック且つリズミックなドラム・プレイに加え、作曲家としても高い評価を得る。2017年に自身のトリオで、ECMレーベルから日本人二人目となるリーダー・アルバム『For 2 Akis』を録音し、2018年2月に世界リリース。現在、トリグヴェ・サイム(sax)、ウォルター・ラング(pf)との新たなトリオの他、リー・コニッツ(as)、フローリアン・ウェーバー(pf)、山下洋輔(pf)など様々なアーティストとの演奏活動、また日本では伊藤ゴロー(g)、佐藤浩一(pf)とのプロジェクト〈land & quiet〉や藤本一馬カルテット、林正樹グループなどで活躍中。自身のレーベルを立ち上げ、『Another Story』をリリースする。

 


LIVE INFORMATION

Shinya Fukumori presents
蒼波花音トリオDEBUT CONCERT

○2021年1月5日(火)19:30開演
【出演】蒼波花音(sax)福盛進也(ds)佐藤浩一(p)
【会場】公演通りクラシックス

「冬の調」
○2021年1月6日(水)19:30開演
【出演】藤本一馬(g)北村聡(bandneon)福盛進也(ds)
【会場】公演通りクラシックス

"Another Story"
〇2021125(月)
[1st.show] 17:00開場 / 18:00開演
[2nd.show] 20:00開場 / 20:45開演
【会場】COTTON CLUB
【出演】福盛進也(ds)、林正樹(p)、藤本一馬(g)、西嶋徹(b)、北村聡(bandneon)※2nd.showのみ出演
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/shinya-fukumori/

www.shinyafukumori.com/

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