アダム・フィッシャーならではのリズム感やアイデア、ユーモアが一番表現された部分は第3楽章に置かれたスケルツォ。独特のテンポの揺れや木管の歌いまわしが巧い。第1楽章の低弦の行進からオーケストラのこの演奏にかける意気込みと集中力が伝わってくる。マーラーの楽譜の指示を忠実に表現して作品の自然な姿を伝える。デュッセルドルフ交響楽団の実力は素晴らしい。この“悲劇的”によりフィッシャーによるマーラー交響曲全曲録音が完結。彼のハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの交響曲全曲録音に続くこの録音達成は空前絶後である。この快挙はより広く、高く評価されてしかるべきと思う。