この録音で初めてマーラーの第九交響曲が理解できた。アダム・フィッシャーは楽譜に書かれた細かな指示、旋律を余すことなく聴き手に届けてくれる。デュッセルドルフ響は、指揮者の左右に配置した弦楽器と、管楽器のバランスが良い、立体的で歌心ある熱演を聴かせる。第1楽章は旋律を丁寧に歌わせ、複雑な音楽をしなやかに聴かせる。第2楽章はウィーン風のリズムを表現したダンスが愉しい。第3楽章では急減速、急加速の繰り返しが興奮させられる。終楽章は情念を誇張することなく、しっとりと弦楽が歌を流麗に紡ぐ。静寂の終結部へ向けての高い緊張感が見事だった。