コラム

アタッカ・クァルテット(Attacca Quartet)『Of All Joys』ルネサンスから現代音楽までを接続するグラミー受賞四重奏の試み

©David Goddard

ルネサンス音楽から現代音楽まで接続する、グラミー賞受賞弦楽四重奏団の創意溢れる試み

 軽快にして洗練された音色と、卓越した技巧で聴衆を虜にするジュリアード音楽院卒業生からなる若手実力派弦楽四重奏団、アタッカ・クァルテット。2020年にキャロライン・ショウ作品を演奏した『オレンジ』でグラミー賞最優秀室内楽賞を受賞し話題を集めたのは記憶に新しい。ヴァイオリンが徳永慶子に代わりドメニク・サレルニが加入し、最近どうしているかといえば、彼らもコロナ禍において合奏ができない試練を味わっていた。それでも本格的に次のステップへの準備をしていたようで、それはただならぬものになってきたようだ。ソニークラシカルに移籍後の第1作『REAL LIFE』(デジタル配信限定)ではスナーキー・パピーのマイケル・リーグと共作し、フライング・ロータス、スクエア・プッシャー、ルイス・コールからトキモンスタまでのエレクトロニック・ミュージックを料理する前代未聞の展開を見せ、ネット上で大きな反響を見せている。

 今作『オヴ・オール・ジョイズ』では、〈クラシック〉の世界に帰還、ジョン・ダウランド、オルランド・ギボンズ、アレグリなどのルネッサンスの作曲家たちと、そしてフィリップ・グラス、アルヴォ・ペルトと、現代の作曲家2人による作品が選曲された。最長にして400年以上も隔たりのある楽曲世界だが、そのメロディとハーモニーはどれも明快で、聴きやすい。アンサンブルの完成度や新鮮なエネルギーに加え、今の時代に相応しい精神的な深さを存分に表現しているのも特徴だ。この流れでグラスの弦楽四重奏曲第3番“ミシマ”におけるポリリズムや、ペルトの“フラトレス”のハーモニクスが登場するとき、西洋音楽としての連続性や各楽曲の調性音楽としての質感がまた違った角度からうかがえるのも面白い。異なるジャンルや客層を魅了するヴァーサタイル(Versatile:各方面に万能、という意)なクラシック演奏家が注目を集める今、アタッカがその筆頭格になった、というのもあながち間違いではないだろう。

関連アーティスト