ロックというテンプレートへの倦みを経た、新しいフォークロアの追求――。そうした野心的テーマを追求した前作『HEX』からわずか1年、ROTH BART BARONが放つニュー・アルバム『けものたちの名前』は、さらなる〈その先〉を見据えた充実作となった。
この間、各地ツアーを含む多数のライヴ演奏を通じて、サポート・メンバーを含めたバンドの紐帯とアンサンブルの強度はいや増し、演奏家としての圧倒的存在感を示し続けてきた彼らだが、昨今では、クラウドファンディングの積極的利用やFacebook上のファン・ページ〈PALACE〉などにおいて、新たなコミュニティー作りにも力を入れてきた。そんななかリリースされた本作は、(クラウドファンディング企画とふたたび連動する)めぐろパーシモンホールでのツアー・ファイナル公演を視野に入れ、これまでに増して雄大なスケール感を念頭に制作されたものだったという。
プレス資料に〈ROTH BART BARONの黄金比〉と記載される通り、『HEX』を経た彼らは、今一度自身のもっとも得意とする肉体性に溢れた壮大かつ幽玄なフォーク・ロックに照準を合わせたように見える。今も昔も、人間に引き継がれてきた〈けもの=獣性〉というものへの深い洞察によって達することになった地平は、ロックなどのポピュラー音楽における現在の閉塞的状況や、更には決して楽観的とは言えない社会的なイシューに対し、鮮烈な一撃を投げかけることとなった。バンドのフロントマン三船雅也にじっくりと話を訊いた。

10年代の最後に次を見据えるために
――前作『HEX』から1年ほどで今回の新作『けものたちの名前』の発表となりました。それまでのROTH BART BARONのリリース・ペースからするととても早いサイクルですね。
「前作リリース後にやりたいことがバッと出てきて、早く新作を作りたいなというモードになったというのがいちばん大きいです。それと、冷静に考えてみると、2010年代がもう終わるんだってことに気付いて。来年の2020年から大きく世界が変わっていくような予感があるなかで、10年代の最期に、次を見据えて新しいところに飛び込めるようなアルバムを作りたかったというのがありますね」
――前作のインタヴューで、自分の心を躍らせる曲がなかなか出来ない期間があった、とおっしゃっていましたが、そこから自身の意識もだいぶ変わってきたということでしょうか?
「そうですね。もっと自由に考えられるようになったと思います。前作では自分へのプレッシャーを強くかけていた感じなんですが、今回はリラックスして臨めました。
――創作面での充実に呼応するように、Facebookでのファン・ページ〈PALACE〉や、クラウドファンディング企画などを通じてのコミュニティー作りも上手く行っているように映ります。
「一般的にクラウドファンディングという仕組みもこなれてきて、ビジネス的選択肢のひとつとして実践するような流れもあると思うんです。でも自分たちは、予算的事情やレコード会社主導のタームへ依存しないペースで音楽を作る方法とか、リスナーと一緒にイヴェントを作り上げる体験とか、単純にバンドとファンのみんながやりたいことを実現するために使ってみよう、という発想ですね。
〈PALACE〉のメンバーたちがプラネタリウムでのライヴ・イヴェント※を独自に企画立案して、セットリスト選定、グッズの作成、VJ映像の編集など美術面まですべて自前でチームとしてやってくれたんです。僕らとファン双方にとってお金に代えられない忘れがたい体験を、もっと豊かに作り出せる可能性が見えてきたなと思っています。そういう盛り上がりを感じとってくれたのか、チケットも数時間でソールド・アウトして……」
――通常のクラウドファンディング企画だと、お金を集めてリターンしたらそれ一回限りで終わってしまうけど、同時に〈PALACE〉という場があるおかげで、その後も双方向的にやりとりが生まれていく感じがとてもおもしろいな、と思います。
「まさにそうですね」

自分の深層へ潜り、他者と繋がる
――そういった風通しのよい環境が、今作に感じる開放的な空気とも繋がっているのかな、と思いました。
「そうかもしれないですね。『HEX』もがんばって自分的には風通しよく作ったつもりなんですけど、なんというか、分厚い壁に囲まれたシェルターで作っていた感じというか……。それに比べて今回は吹きさらしの大地(笑)」
――『HEX』はロックという固定的なテンプレートをどうやって超えていくかという音楽的テーマがあったと思いますが、今回はバンドがもっとも得意としてきたスケールの大きなフォーク・ロックのようなものを思い切りやった、という印象を受けました。
「初めはシンプルに作ろうと思ったんです。〈今の視点をもってニック・ドレイクの曲をやる〉みたいなイメージ……。『HEX』が外へ飛び出そうと藻掻きながら扉を開けていくようなアルバムだったとしたら、今回は自分の深層へいかに息継ぎなしに潜っていけるかを考えた作品だと思う。そしてその深度を突き詰めた結果、他人にも繋がっていく、というような」
――作曲は主にギターで?
「そう。以前はギターの快楽性みたいなところを遠ざけるような意識があったんですが、ふたたびギターで気持ちよく曲を作れるようになりました」
――ダーティ・プロジェクターズが2017年にセルフ・タイトルのアルバムを出して以降、ロック的な快楽を伴ったギター・サウンドから、エレクトロニックでノン・フィジカルなものへと世界的なトレンドが推移していった印象だったんですが、ここへ来てふたたび演奏の肉体性みたいなものへ回帰しつつあると思っていて。
「そうですね。テクノロジーが取り巻く環境という部分で明確な地域差が無くなっているし、結局肉体の歓びに勝るものはないんじゃないか、という感じになっている気がしますね」

他人の子供を育ててみてはいかが?
――今回特徴的なのは、三船さんのヴォーカルに加えて女性4人の声を迎えていることだと思います。
「自分を取り巻く環境には、男もいて女もいて、いろんなジェンダー性を持つ人たちがいるのに、日本のバンド・シーンにいる人たちは妙に男性率が高い。そこを脱却して、自分の生活実態と近しい作品を作りたいと思ったんです。ミックス・エンジニアにもアジア系アメリカ人のジョナサン・ロウがいるし、多様なアイデンティティーが存在する状態を作品に取り入れたかった」
――1曲目“けもののなまえ”にはHANAさんが参加し、素晴らしいヴォーカルを聴かせてくれています。彼女はどんなヴォーカリストなんでしょう?
「彼女はとあるきっかけで紹介してもらった13歳の女の子で、本当に、ただ歌うために歌っているという感じ。大人になる前の〈けもの〉のような無垢性についてのこの曲にぴったりだなと思ったんです」
――社会性を纏う以前の歌声……。
「そうそう」

本作のリリース・ツアーの初日、11月27日(水)の東京・渋谷WWW Xでの公演にも出演
――“けもののなまえ”も含めてアルバム全体を通して、フォーキーな色合いがより濃くなったように感じます。たとえば2曲目の“Skiffle Song”。これもまたタイトル通りフォーク色が濃厚です。
「実はこれ、7年前くらいの曲なんですが、聴き直してみて〈自分の子供が育てられないのなら/他人の子供を育ててみてはいかが?〉という、かつての自分が書いた歌詞にドキッとしたんです。ここにはある種の〈家族の解体と再編成〉が歌われていたんだな、と思って、それがいかにもフォークらしい題材にも思えた。50年代に端を発する〈アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ〉的な核家族形態が一般的な家族のモデル・ケースにようになっているけど、それはあくまでひとつの形であって、本来いろいろな家族の形があるし、あるべきであって。
そういったテーマで今の視点から歌詞を再定義できるなと思った。元々フォークというのは、パーソナルなものというより、家族を超えたコミュニティーに向けて歌うものとして発生してきたという歴史もあるし、すごく腑に落ちたんです」
――ウディ・ガスリーが歌った数々の歌のように、元来フォークは公共的存在だった……。
「そう。砂嵐で土地を追われた人びとの話とか、ひどい仕打ちを受けたメキシコ移民の話とか、そこから生まれる共感を歌ってきた」
ヒーローになりたくない三船がカリスマティックに振る舞う理由
――4曲目の“TAICO SONG”は打って変わって複数のリズム・レイヤーが敷かれたエスノ的サウンドに聴こえました。インディー・ロック的なものが、R&Bやヒップホップへ色目を使わず発展したらとしたらこうなっていたのでは?という一例のようにも聴こえる。その一方でアフロやサンバの要素も感じますし、これはどのように作っていったんでしょうか?
「最初はドラムのビートやケチャのような反復的リズムも、すべてTR-808みたいな音で打ち込んでいたんです。けど、全然抑揚が出なくて……(笑)。ライヴで演るならもっと躍動感がないとダメだなと思って、もっとシンプルなアレンジに変えたんです。そしたら岡田(拓郎/サポート・ギタリスト)くんから突然、iPhoneで録ったパッセージの早いアコギのリフが送られてきて。これはおもしろい!となって」
――今年出たヴァンパイア・ウィークエンドのアルバム『Father Of The Bride』にも通じるような要素を感じました。完全に現代的な編集感覚に貫かれているんだけど、すごくフィジカル、っていう。
「ああ、確かに。岡田くんも発売当時あの作品にかなり反応してたし」
――あのアルバムは、ロック・バンドが非ロック的なものを取り入れる過程で頭で考えすぎて袋小路に入ってしまっていったような状況に対し、〈こういう突破の仕方がある〉みたいなのを提示してくれた気がするんですが、この“TAIKO SONG”にも同様の風通しの良さを感じて。
「たしかに。一方で単純な肉体性を全面に出しすぎないように、ドラムにビットクラッシャーをかけたりしてますね。なんというか……血の通ってないアフロというか……(笑)」
――そういう意味で、ちょっとデヴィッド・バーンに通じるものも感じます。
「それもわかる。ブライアン・イーノとコラボレーションをしてアフロ・ビートを取り込んでいた時期の作品は大好き。彼も最近そこへ回帰してますよね。でも僕は同時にどうしても土臭いものが好きだから、それを残しつつ、あの無機質なNYパンク〜ニューウェイヴ的要素との折衷的な質感を狙っているところがあるかも」
――7曲目の“HERO”。これは曲名からして構えが大きいなあと。ヒーロー不在を歌う詞がまたおもしろい。
「ある時期から世の中にリアルなヒーローがいなくなってしまったなと思ったんです。音楽は特にそう。映画でも、例えばマーベル作品とか、ヒーローが劇中に登場する作品が流行っていても、多くの人がそれを作っている監督の名前は知らずに楽しんでいる。興味深い状況ですよね」
――監督の作家性より、練り上げられた世界観とかプロットに注目が行きがちですよね。でも、ROTH BART BARONにおける三船さんには、強烈にヒロイックな佇まいを感じますよ。ヒーロー願望はある?
「うーん、元々僕はそれを諦めたうえで音楽を始めた人間なんで(笑)。名声とかにも興味がなかったし」
――でも、ステージ上においてはとてもカリズマティックだと思うし、実際に多くの人もそう評していると思います。
「そうならざるを得なかったっていうのが正しいのかも。じゃないとライヴ・メンバーを7人も束ねられないというのと、でかいハコでアジカンとかを相手にできないですしね……。仮に僕等の曲を1mmも知らない人たちの前で歌うには、俺が前に出るしかないのかな、っていう(笑)」

光の粒が散らばっているような、緩やかなコミュニティー
――優河さんをフィーチャーした9曲目の“ウォーデンクリフのささやき”は、ピアノと電子音による冒頭から歌へ入っていく流れがとても美しい。以前、〈自分を癒すため個人的にアンビエントばかり作っている〉と言ってましたが、そういう要素もバンドの音楽へ流れ込んでいるんでしょうか?
「ここ最近ジワジワ侵食され始めている感覚はありますね。この曲は、来年5月に僕らが生まれ育った地元にある〈めぐろパーシモホール〉でツアー・ファイナル公演をやることを想定して作ったものなんです。そういう広がりを持った空間に相応しい曲が足りないんじゃないか、と中原(鉄也/ドラマー)と話しているなかで、自宅スタジオでピアノを触りながら作り始めたらススっと5分くらいで出来たんです。アルバムが求めていたパーツはこれだ!って感じで」
――アレンジもはじめから見えていた?
「生ドラムも試したんですけど、どうもしっくりこなくて。ピアノはクリックに合わせずリッチに鳴っているけど、ドラムはマシーン的な反復を繰り返すみたいなところに終着しました。その他の楽器もそういった構造に呼応するようにカットアップされているんだけど、全体としては有機的なものを作りたかったんです」
――たしかに、バウンシーなリズムも、これまでのROTH BART BARONにはあまりなかったような新鮮さを感じました。
「目立つか目立たないギリギリのところでリズムが跳ねていて、クラーベとかも駆使しながらけっこう複雑に構築されているんです。これは優河ちゃんの声がすごく合うだろうなあと思っていたんですが、やっぱり絶妙にハマりましたね」
――普段の彼女の作品にはあまりなさそうな曲調だからこそ、かえって新鮮なおもしろさがありました。
「うんうん」
――そして、ラスト曲“iki”では他の曲に参加していた女声コーラスもみな勢揃いして、まさにアルバムの大団円感があります。
「この曲は元々クリスマス企画として2018年にアップしていた曲だったんですが、それをファンの皆さんにすごく気に入ってもらえて。〈なんでライヴでやらないんだ?〉とか、〈アルバムに入れるべきだ!〉とか怒られて(笑)」
――歌詞の面でもアルバムの他曲の世界観と少し違っているように聴こえますね。でも、こうした曲がラストに入っていることで救いのようなものも見えてくる。
「10年代が終わりを迎え新たな10年を迎えるという空気感を、あくまで希望のある形で提示したかったんです。1人の人間が見つける希望や、もっと大きく、時代が未来へ向かっていくなかでの希望……その一方で絶望感も入っているような……。そういう複層的な感情が現れている曲だから、このアルバムを締めくくるのに相応しいんじゃないかと思ったんです」
――みんなで歌っていることによるクワイア的な感じも、今バンドがいろいろな人たちと繋がりながら活動を行っているということの象徴のようにも聴こえました。
「声を張り上げて〈がんばっていこう!〉とかじゃなくて、ちょっと不安感も漂っている。サポート・メンバーの誰かが〈ノアの箱舟みたいな感じもするよね〉って言っていて……(笑)。嵐を経て、舟がバラバラになる不穏な予感を抱きながらも、緩やかな集合として豊かに歌っているという。なんだろう、それこそプラネタリウムのように、光の粒がそこここにポツ、ポツ、とあるみたいなイメージ」
――多様性というものがノンストレスな形でそこに存在しうるということが、ひとつの音楽として提示されている感じ。だからこそ仄かな希望を感じるんだと思いました。
「そう聴こえれば嬉しいですね」

人間のことを歌いたくない
――アルバムのテーマとして、なんというか……全編を通して人間同士のやりとりだったり、社会的な現実から離れたいという欲求が反映されているのかなと思ったんですが。
「それはあると思う。とにかく今回は人間のことを歌いたくない、って思ったんです。日々のニュースとか、ネット上で話題になっていることとかって、当たり前ではあるんですけど、人間についての話しかないな、と思って。例えば大規模な山火事とか、こないだの大きな台風とかで少しそれ以外の視野へ連れられるけど、やっぱり人間についての話に戻っていく。
例えば、こないだグレタ・トゥーンベリによる国連気候行動サミットでの演説があったときも、地球環境が深刻な状況に陥っているという事実をもとにした建設的な議論が発展していくわけじゃなくて、彼女の属性をあげつらうような、〈人間についての話〉にスライドしていってしまう…。いや、それはおかしいだろう、と。地球がマズいことになっているということは大前提としてあるわけだし、別に誰が訴えたかとかは本質には関係ない話であって」
――誰と誰が対立して、どういう人間がどういう意見かを持っているかが、加速度的にクローズ・アップされてしまう……。
「そう。当初SNSに期待されていた対話の可能性とそれによって繋がった人たちもいると思うんですが、むしろ実際に起こったことといったら、そこでの関係性が過剰に可視化されて、小さい島がたくさん出来てしまったということだと思うんです。すべてのイシューについて〈イエス or ノー〉で区分けされていって、グレーの部分がないっていうか。それを断絶というなら、まさにそうだな、と。でも、そこを見て見ぬふりをするわけじゃなくて、人間以外へ目を向けてみることで、緩衝地帯を見つける、というか」

〈けもの〉と〈名前〉が象徴するもの
――今作では、そういう緩衝地帯を、高度な社会化を経る前の世界の姿に求めているような気がします。資料でもモーリス・センダックやA・A・ミルンの名を上げていますが、この世界とは別に存在する、そういう原始的なコミュニティーの姿が浮かんでくるような……。
「そうですね。ある種、人間の根源に戻るというか……。けれど、そういう牧歌的な世界への逃避を歌っているつもりはなくて。現代は、文明の発達によって世界中の人がさまざまなテクノロジーを纏って生きているわけだけど、その〈デジタルな羊毛〉を剥いだら、結局人間の獣性が太古から薄れているわけじゃないんだろうな、ということが顕になってきた。いくら文明が高度化しても、本質的な部分で人間は高次の存在にはなれず、結局は荒々しさを保存している。そういう意味での原始性が蔓延していることは今の社会も変わらないわけで」
――でもその獣性というのは、一方で幼児のような純粋性でもある……?
「そうです。それをアンビバレントな感覚で描きたかったんです」
――まさにそれがアルバム・タイトルにも反映されているわけですね。
「はい。〈けもの〉というものが、そういう脈々と始原からあるプリミティヴさの象徴だとすると、〈名前〉っていうのは人類が発明した概念ですよね。貨幣や社会といった概念と一緒で、ある種の共同幻想。そういう、文明化によって生まれたものの象徴として〈名前〉を据えることで、アルバムのテーマを描きたかったんです」
――それは、幼児性と大人の社会性をきっちりと区切りたがる近代以降の趨勢を、批判的に見据えることにもなっている気がします。〈子供〉という概念の発生もそう古くないという説もありますよね。
「あくまで自分のペースを守りながら、〈けもの〉の側と、社会化された世界の両方を行き来するような目線をアルバムに据えておきたかったんです。動物が見ている世界と我々が見ている世界の同じ部分と差異というか……ある種超自然的な……うーん、いわゆる〈スピってる〉とかじゃないつもりなんですけど」
――いわゆる〈ニュー・エイジ〉とは違う感覚。自己改革によって何か霊的な存在と合一したいとか、社会性やリアリズムからの逃避としてのスピリチュアリズムではない。
「そう。肉体がある限り、この現実世界で生きなければならない。そういう前提から出発している思考だと思います」
逃避せず、ただ歓びを追求
――たしかに、ROTH BART BARONというバンドはその初期からとても現実的な肉体性に基づいてると思うし、逃避主義的にはなりえないのかな、と。
「そうだと思います。まあ、逃避的な音楽をやっている人はたくさんいるし……僕らがやらなくてもいいかな、と思っていて。〈ヨーロッパの音楽もアメリカの音楽もおもしろくない〉ってなった世界の人たちが、その先に見つけた〈本当はありもしない80〜90年代の日本風ノスタルジー〉に浸るという昨今の状況に、僕はどうも〈うーん〉と思ってしまう……。だから僕たちは、彼らが望む〈日本的なイメージ〉をあえて裏切っていきたいっていうか(笑)」
――それはヴェイパーウェイヴやシティ・ポップ・リヴァイヴァルへの批判?
「そうですね。その状況にいろいろと批評性を見出すことは可能かもしれないけど、でも、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』を見て、未体験の甘いノスタルジーに耽るのと本質的に何が違うんだろう?と。僕もある時期80年代の音楽に浸って、いいなあと思っていたので、その気持ちもわからないでもないですけど」
――そう考えると、今作に現れているように、ROTH BART BARONの音楽って、逃避主義的趨勢からさらにまた逃避して、結果今までと違う切り口で社会にコミットメントしようとしているようなところがあると感じます。それゆえ音楽自体にすごく〈強度〉を感じる。
「そうかもしれない」
――これまでのキャリアを通してROTH BART BARONならではの美学/黄金比として培ってきた壮大なフォーク・ロック的世界を、今一度じっくりと表現するということは、今話した〈強度〉を実現するにはもっとも適した方法だったのかもしれませんね。
「そうだと思います。パーソナルなことを身近な題材として取り出すってことじゃなく、自分の深い部分、深層心理に潜っていったら、自然とそういった表現になったということなんだと思います。
そこへ潜ることで、人間としての純粋な歓びが見えてきたというか……。それを〈けものになる〉ことでもあると捉えることもできる。その歓びは、イデオロギーの対立とか、肌の色とか性別とかでもなく、音楽のジャンル的区別や知識でもなく、もっと非言語的なものですね。何かをパッと一聴するだけで感動するということが確実にあるし、そこをシンプルに突き詰めていったら、今回のように、いろんな年齢やジェンダーの人と一緒に、自分たちが得意とすることをフィジカルなやり方でとことんまでやってみる、ということだったんです」
――なるほど。
「このアルバムがみなさんへどう届くかは、僕らにはわからないけど、もちろん今日話した以上のものがこの10曲に入っているはずだし、試しにでもぜひ聴いてみてほしい。その瞬間、夜道を突然走り出したくなるかもしれない……もしそう思ってくれたらすごく嬉しいですね」

INFORMATION
ROTH BART BARON ”TOUR 2019-2020~けものたちの名前~”
2019年11月27日(水)東京・渋谷 WWW X - 単独公演 - Opening guest act : 水野蒼生
2019年11月29日(金)宮城・仙台 darwin - 単独公演 -
2019年12月21日(土)台湾・台北 The Wall - 単独公演 -
2020年2月1日(土)富山・高岡 善興寺
2020年2月2日(日)石川・金沢 アートグミ
2020年2月7日(金)福岡・天神 the Voodoo Lounge - 単独公演 -
2020年2月8日(土)鹿児島 SR Hall
2020年2月9日(日)熊本 NAVARO
2020年2月10日(月)山口・岩国 Rock Country - 単独公演 -
2020年2月11日(火)大阪・梅田 Shangri-la - 単独公演 -
2020年2月22日(土)愛知・愛知芸術文化センター 中リハーサル室
2020年2月23日(日)広島・福山 Cable
2020年2月28日(金)北海道・札幌 mole - 単独公演 -
2020年3月7日(土)山形 肘折国際音楽祭
2020年3月8日(日)青森・八戸 Powerstation A7
2020年3月22日(日)京都 磔磔 - 単独公演 -
2020年5月30日(土)東京 めぐろパーシモン大ホール
★ツアーの詳細はこちら
三船雅也 “HOWL SESSION vol.1”
2019年11月24日(日)京都 恵文社 Cottage
開場/開演:17:30/18:00
料金:3,000円
出演者:三船雅也/西池達也
トークゲスト:近藤一弥
★イヴェントの詳細はこちら
タワーレコード インストア・イヴェント
2019年11月24日(日)14:00~タワーレコード京都店
対象店舗:京都店、梅田NU茶屋町店、梅田大阪マルビル店、難波店、あべのHoop店、神戸店
2019年12月6日(金)21:00~タワーレコード新宿店
対象店舗:新宿店、渋谷店、池袋店、秋葉原店、横浜ビブレ店
