Page 2 / 4 1ページ目から読む

自分とは違う目線

 2021年にリリースされたシングルの表題曲“Under the Sun”と、昨年のライヴでも披露していた“Cry for the Moon” “Supernatural”という完成済みの楽曲に加え、工藤のオーダーをもとに平地が楽曲を新たに制作し、それに対して工藤がコンセプトにハマる歌詞を書くという工程で作られた今回のアルバム。「今までの作品は完全に私が主体の曲が多かったんですけど、今回は作詞家的というか外側からの目線で歌詞を書いているので、私とはまったく違う価値観の曲もあります」との言葉通り、これまでのように前向きで負けん気の強さが表に出た楽曲だけではない、多彩な表情を見せてくれる点が本作の聴きどころだ。ひときわヘヴィーなギターが疾走するリード曲“Cry for the Moon”では、自分にないものへの渇望をクールな歌唱と共に表現。〈この世界には「希望」があるはずだから〉というフレーズがいま聴くと余計に刺さる“HOPE”、ブルージーなギターと優しく包み込むような歌声の対比が印象的な“家路”といった、バラード調のミディアムも収録されている。そんななか、彼女が「自分からいちばん遠い」と断言するのが、別れの痛みや傷を歌った“Scar”だ。

 「私の場合、嫌だったり傷つくことがあっても、ここまで悲しく引きずらないし、その怒りや悔しさをガソリンに変えて進むタイプなんです。〈あの言葉、絶対に忘れない、許さないから〉みたいな(笑)。でも、その気持ちをストレートに歌詞にするのは違うと思うし、もっと美しく、悲しかった過去を抱きしめている人もいるはずと思って。逆にファンの方がこの曲を聴いて、〈くどはるにもこういうセンチメンタルな瞬間があるんだな〉と勘違いしてくれたら嬉しいです(笑)」。

 その一方で、いつもの彼女らしく快活に弾けた楽曲も多い。「この曲は勢いで歌詞を書いたんですけど、自分っぽさ全開ですね。やっぱり強気で進んでいくのが〈本当の私〉なんだなって」と語る、ダウン・チューニングのギターがゴリゴリと唸るファスト・チューン“Real me”。さらに“ROCK STAR”(『POWER CHORD』収録曲)の続編的なナンバー“ROCK STAR’s Brand new song”での、ロック・スター然とした威勢の良さで〈君は悪くない〉と歌う心意気も最高だ。

 「“ROCK STAR”は、好きなアーティストの音楽や言葉に救われたリスナーが、今度は自分がロック・スターになって誰かを救おうとする曲だったんですけど、この曲はその〈ロック・スターの新曲〉というテーマで書いていて。この歌詞を書いた当時、辛いことがすごく多くて、〈誰か私を褒めて!〉っていう気分だったんです(笑)。なので自分が誰かに言ってほしいことを書いたんですけど、たぶんファンの方はくどはるがそう言っていると捉えるので、二重の聴き方ができると思います」。