Photo by Hirofumi Nakagawa

アフリカ・中東音楽で鍛え上げたグルーヴをサクソフォンで表現する意欲作

 フランスを拠点に活躍するサクソフォニスト、仲野麻紀が放つ新作は、2002年の渡仏以来、アフリカや中東なども舞台に積み重ねてきた活動が凝縮された充実作となった。タイトルの『OPEN RADIO』とは、2017年から仲野が主宰するインターネットラジオの番組名。番組さながら、彼女によるDJ風の語りが音世界への旅をナヴィゲートする構成は、ラジオ好きだったら心をくすぐられるに違いない瀟洒な演出だ。

仲野麻紀 『OPEN RADIO』 Nadja21(2021)

 楽曲は、ブルターニュ地方の民謡を一曲入れた以外は、すべて彼女がインスピレーションを受けた文学作品をイメージしたオリジナル(民謡にも独自のアレンジを施し、オリジナルさながらに仕上げている)。サクソフォンのほか、メタルクラリネット、そしてターリジャやシェケレといったアフリカの民族楽器も操り、多重録音をしてソロでありながら豊かなアンサンブルを生みだしている。

 「今回、ソロでやろうと決めたのは、コロナ禍でのセッションが難しいという事情もありました。そして、これまで私がアフリカのミュージシャンたちと共演してきた経験が生きたと思います」という仲野。ひとりで音を重ねる作業は、彼女にとってかなり大きなチャレンジだったという。

 「パリで駆け出しの頃、ブルキナファソのミュージシャンと共演したのがきっかけで、西アフリカをはじめ、北アフリカやトルコのミュージシャンともセッションし、現地を旅することで、彼らの音楽の深淵に触れることができました。そして、ひとつの音が持つ意味や、リズムを生みだすことの難しさを、これでもかと身にしみて感じたんです。セッションだったら自然と出来上がるグルーヴが、ひとりでやると、ともすると打ち込みよりもつまらないものになってしまう。だから、本作では、サクソフォンという単音を出す楽器を中心にして、いかに意味のあるグルーヴを作りだせるかが重要なテーマだったのです」

 仲野はジャズを起点に自らのキャリアをスタートさせているが、その音楽はより幅の広い層に訴える魅力を持つ。本作はワールドミュージックやアンビエントのファンにも受けるだろうし、ひょっとして古楽の愛好家が聴いても面白いかもしれない。

 「本作の内容は、いわゆるジャズ的なものとは違うかもしれないけれど、聴いた方が〈こんな表現方法もあるのか〉と思ってくれたらうれしいですね。特にサクソフォンを演奏される方には興味深く聴いていただけると思いますよ」

 


INFORMATION

仲野麻紀 LIVE情報
2022年4月29日 福岡 朝倉
2022年 8月27日 山形 月山
2022年 8月28日 山形 鶴岡
2022年9月3日  大阪 (浪曲:玉川奈々福/パンソリ:安聖民/サックス:仲野麻紀)
2022年9月18日(日)愛知・名古屋 ちくさ座
2022年10月16日(日)東京・神楽坂 赤城神社

仲野麻紀 ラジオ情報
月の満ち欠けに合わせ配信する仲野麻紀の「OPEN RADIO」こちらからお楽しみください。
https://www.mixcloud.com/makinakano/

仲野麻紀 レーベル情報
openmusicの情報はこちら!
https://openmusic-ky.bandcamp.com/