物語の先にあるものとは――音楽がナビゲートするふたつのファンタジー

 この冬、音楽とアートにより観る者を新たな世界に誘う斬新な公演がふたつあるので、紹介したい。

 まず、11月22日に行われる〈アンデルセン童話の調べ〉。「人魚姫」、「マッチ売りの少女」、「裸の王様」をはじめとするアンデルセン童話の世界観を、ケルト音楽をベースとしたフォークトリオ、トリコロールが、山福朱実による木版画とともに紡ぎ出していく。アンデルセン童話の底に流れるのは、キリスト教に基づく倫理観や生死観。山福の手による木版画は、〈きれい〉とか〈かわいい〉といった言葉だけでは片づけられないアンデルセン童話の世界を、力強く、かつファンタジックに表現していて味わい深い。見つめていると、懐かしさが心の奥底からじんわりとこみあげてくるような、不思議な魅力がある。

 トリコロールが奏でるのは、アンデルセンを生んだ国、デンマークのトラッド・シーンを牽引する若き3人組、ドリーマーズ・サーカスによる楽曲。ドリーマーズ・サーカスはメンバー全員がクラシック音楽の素養を持ち、その音楽性にはアーシーなだけでなくシンフォニックでテクニカルな要素も多分に含まれている。そんな彼らの曲を、ケルト音楽ならではのおおらかな包容力をもってアレンジしたトリコロールの演奏は大きな聴きどころ。加えて、彼らは朗読も手がけ、自らのオリジナル曲も披露する予定なので楽しみにしたい。

 ふたつ目は、フランスから。サン=テグジュペリによる地球規模のベストセラー「星の王子さま」の世界を、パリ在住のサクソフォニスト仲野麻紀が描き出す〈星の王子さまとの出逢い〉だ。公演は12月16日に行われ、細かい内容は現在詰めているところだが、音楽に加えてイラスト、映像、言葉など、多方面から「星の王子さま」の世界観に迫る公演になりそうだ。

 ジャズをルーツに持ちつつ、パリに拠点を移してからは、ウード奏者ヤン・ピタールとのユニット、Kyでエリック・サティの作品を独自の解釈で表現するなど、多国籍かつジャンルレスな活動を続けている仲野麻紀。そのベクトルは、音楽だけでなく食文化や俳句などをはじめ、まるで生きること全般に広がっているように思えるほど幅が広い。そんな彼女だから、いい意味で我々の予想を裏切るような、プリミティブだけどスタイリッシュな「星の王子さま」が展開されることだろう。

 「いちばんたいせつなことは、目に見えない――」

 この、「星の王子さま」を貫く有名な台詞は、いま、この時代にも我々をはっとさせる力がある。個性あふれる音楽がナビゲートする、アンデルセン童話と「星の王子さま」。ふたつのファンタジーの先にあるものは、何だろう? 北欧のこころ? フランスならではの洒落心? もちろんそれもあるだろう。だけど、最後に出会うのは、普段は心の奥にしまったままになっている、自分自身のリアルな姿なのかもしれない。

 


LIVE INFORMATION

アンデルセン童話の調べ
2021年11月22日(月)東京 中野区野方区民ホール
開場/開演:18:00/19:00
出演:tricolor
http://earthmusic.jpn.org/andersen2021.html

星の王子さまとの出逢い
2021年12月16日(木)東京 三鷹市芸術文化センター 星のホール
開場/開演:19:00/18:30
出演:仲野麻紀(サックス/クラリネット)
http://earthmusic.jpn.org/LePetitPrince2021.html

主催・お問い合わせ:地球音楽プロジェクト実行委員会 http://earthmusic.jpn.org/
チケット取り扱い:プランクトン 03-6273-9307(平日13時~17時) http://plankton.co.jp