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レナート・イワイ

豪華でグローバルなメンバーと録音したNew Funk、“Fire and Gold”

――では、本題の“Fire and Gold”についてお伺いさせてください。どんなところからスタートした曲なのでしょう?

レナート「1年ほど前に僕が仮トラックを作って、そのときKentaくんはアメリカにいたので、データをリモートで送ったんですよね。それで仮歌を歌ってもらって、LINEで曲についてやりとりしながら作っていきました」

Kenta「当初は〈New Funk〉という仮タイトルだったよね。最初の歌詞は、ここ(レナートのスタジオ)で相談しながら書いていった記憶があります」

“Fire and Gold”

――そのときのデモはどんな感じだったんですか?

レナート「ピアノと仮ドラムが入った、すごく簡単なデモです。仮のベースラインも入っていました」

――“Fire and Gold”は、特にサビでベースラインが強調されていますよね。宇多田ヒカルさんの“One Last Kiss”を思い出す、ほのかにレゲトンっぽいビートも印象的です。

レナート「他の部分のビートは普通なのですが、Bメロはヘガトン(レゲトン)をイメージしたクラップを入れています。それで、Kentaくんにも、裏(拍)を意識する感じで歌を入れてもらいました」

――どういうサウンドを目指したのでしょうか?

レナート「もともとは明るい曲調を想定していて、はっきりとライブで演奏することをイメージしてたんですよね。

僕、ファンクが大好きなんです。最近はポップスとファンクを混ぜた明るいサウンドが流行っているのもあって、チャーリー・プースやデュア・リパのヒット曲をリファレンスとして聴いた覚えがあります。

あと、もちろん打ち込みも良いのですが、僕がイメージしていたのは生楽器をメインにしたサウンドなんですね。だから、ドラム以外のベースやフェンダーローズ、ギターなどは、全部生楽器で録っています。ハイブリッドな感じにしたかったんですよね」

――たしかに、電子音と生楽器の音が見事に調和したハイブリッドなサウンドですね。どんなメンバーが演奏しているんですか?

レナート「ベーシストは、アルトゥール・ヂ・パラ(Arthur De Palla)というブラジルでトップのすごいベーシストです。彼は、ジャヴァンのバックバンドや『ザ・ヴォイス』という音楽オーディション番組でベースを弾いているんですよね。キーボードはレナート・ネト(Renato Neto)。10数年間、プリンスのバックで弾いていた人です」

――えっ!? ジャヴァンのベーシストにプリンスのキーボーディストって、めちゃくちゃすごいですね(笑)。

Kenta「そうなんですよ(笑)」

レナート「そして、ギターのエリアス・チアゴ(Elias Thiago)は、今回のライブ(〈Transit Jam〉)にも一緒に出てくれるミュージシャンですね

みんな本当に音楽が好きなミュージシャンで、音楽こそが楽しみでやっているんですよね。こうやっていろいろな人が入ってくれると、本当に〈音楽〉って感じがしますよね」

※インタビューは〈Tokyo first one man live “Transit Jam”〉の開催前に収録した

Kenta「そうそう。〈生きてる音楽〉って感じだよね」

――ただ単にプログラミングするだけじゃなくて、人間の手が加わることで〈音楽〉になると。Kentaさんは、歌の面で難しさはありましたか?

Kenta「プリコーラス(Bメロ)は僕が作ったことのないメロディーで、いちばん難しかったですね。

僕が作る曲はよく聴いているエド・シーランやジャスティン(・ビーバー)の曲のようなポップスに近いので、〈こういうメロディーならこういう言葉を乗せると気持ち良い〉〈こういうシーンならこういう母音が入ったフレーズを入れると良い感じ〉というのがわかるんですけど、今回の“Fire and Gold”には新しいエレメントがたくさんあったので、〈この曲に乗せたら気持ち良いフレーズ、メッセージに合う言葉って何かな?〉と悩みました。本当に、いろいろなことを試しながら作った曲なんです。

あと、ベースにかかっているサイドチェインも、良いアクセントになっているよね?」

レナート「うん。そうだね」

Kenta「グルーヴが普通の4つ打ちとはちょっとちがう感じに聞こえます。裏拍が強調されているので、それに合わせて歌うのがチャレンジだったけど、ベースをしっかりと聴きながら歌ったことで、かっこよく仕上げられました。全部レナートのおかげです」

 

学生たちが世界へ出ていくこと、〈gold〉を純金に精錬すること

――今回は学校のCMソングということで、歌詞もすごく重要ですよね。

Kenta「最初は“Strawberry Psycho”寄りのバッドでダークな感じがちょっとあったのですが、CMソングに決まったことで歌詞を変えて、フレッシュなほうに思いっきりシフトさせました。

ダークさも残っているんですけど、遊び心を残しています。たとえば、〈monster〉という言葉を使ってみたりとか。〈おとぎ話のなかに出てくる怖いもの〉という感じのダークネスなんです」

東京国際工科専門職大学の2022年度ウェブムービー

――この曲全体で、どんなことを表現しようとしましたか?

Kenta「〈学生たちが世界に出ていくこと〉がCMのテーマだったので、それをこの曲のテーマにもしようと思いました。〈世界には『monster』のような困難がたくさん存在するけれど、助け合ってそれを一緒に越えていこうよ!〉という、大まかに言うとそういう内容なんです。

最初はレナートと一緒に歌詞を考えていましたが、リライトするときはレナートがブラジルに帰っていたので、相談せずにいろいろと変えちゃったんですけど(笑)。

これまでで、歌詞を書くのにいちばん苦労した曲かもしれません。たくさんのバージョンを作って、現在のものに至りました」

――そのテーマや世界を具体的に、どんなストーリーで表現しているのでしょうか? 〈Fire and Gold〉というタイトルの意味も気になりました。

Kenta「最初に考えたのは、〈gold〉を火で燃やしてピュアな純金に精錬していくイメージです。冒頭で〈Fire and gold / Deep in my soul / I gotta stay gold / But I don’t know〉と歌っているように、〈自分のなかに『gold』があるのはわかっているけど、それをピュアにするために僕は何をすればいいのかがわからない〉というところがスタートで、曲が進むにつれて、主人公がいろいろな人と出会ったり、たくさんの経験を積んだりすることで、自分のタレントやギフトがもっと価値のある、ピュアなものにどんどんなっていく――そういう意味で、〈Fire and Gold〉というタイトルにしたんですね」