DedachiKentaの新曲“Strawberry Psycho”は、彼のシンガーソングライターとしてのイメージを覆す驚きの一曲だ。太いベースラインと4つ打ちのビートがパワフルなサウンドプロダクション、いつになく艶めかしいボーカル、英語と日本語が入り交じる歌詞が描くデンジャラスな恋愛……。デュア・リパの“Levitating”やエド・シーランの“Bad Habits”との共振を感じるこのダンスポップナンバーには、〈新しいDedachiKenta〉がめいっぱい詰め込まれている。
それだけでなく、リリースからの1か月間で、“Strawberry Psycho”はその存在感をどんどん増している。Spotifyの巨大プレイリスト〈Tokyo Super Hits!〉へリストインして多くのリスナーを惹きつける一方、J-WAVEの〈SONAR TRAX〉の1曲目に選ばれた。ネット上で、街中で、いま話題の曲――それが、“Strawberry Psycho”というわけだ。
では、この強烈で挑戦的な曲はどのようにして生まれたのだろう? 今回のインタビューでは、2019年の記念すべきファーストアルバム『Rocket Science』以降の活動を振り返りながら、プロデューサーのKOSEN(Colorful Mannings)とともに、新曲についてたっぷりと語ってもらった。
プロダクティブ、だけど長い一日を過ごしていたような2020年
――Kentaさんは、いまLAにいらっしゃるんですか?
DedachiKenta「そうです。3月に戻って春セメスターを終わらせて、夏休みを日本で過ごした後、また秋学期にアメリカへ帰ってきました」
――去年は大学の授業がリモートになって、日本に帰って受講していたとYouTubeの〈Kenta’s Journal〉で言っていましたよね。
Kenta「そうなんです。大変だったのは、アメリカとの時差でしたね。たとえば、朝10時のクラスが日本では午前2時頃なので、それがつらくて」
――話はさかのぼりますが、ファーストアルバム『Rocket Science』の手応えを改めて教えてもらえますか?
Kenta「〈Launch Party〉というリリース記念ライブを東京と大阪でやったことが大きかったです。ライブで演奏したときに〈アルバムが出来たんだ〉って実感したので。その後、Spotifyとかで聴かれているのを見ると、アルバムが成長していくのが見えるんですよね」
KOSEN「いまは、〈コロナ禍以前の幸せな時代に作った作品〉という印象がありますね。東阪のライブをやってみて手ごたえがあったので、〈もっとライブをやりたかったね〉という話をしたのを思い出します。Kentaくんは、そのあとすぐにアメリカに戻らないといけなかったんだよね」
――『Rocket Science』のリリース後に世界がパンデミックに襲われたわけですが、2020年を振り返って、どんな年だったと思いますか?
Kenta「アメリカに戻って2か月ちょっと経ったぐらいでキャンパスもクローズになり、日本にトンボ帰りしたわけですけど、そこからステイホームになって。でも、思っていたより作品を出せて、プロダクティブな年でした。ただ、ずっと同じ部屋で音楽を作っていたし、長い一日を過ごしていたような、不思議な期間でしたね。家族と過ごす時間が増えたのはよかったですし、去年の作品は自分だけの時間があったからこそ出来たものだと思っています。
あと、僕はギターで曲を作ることが多いんですけど、“Where We Started”はピアノで作ったんです。それは、ピアノがずっと目の前にあったから(笑)。そういうトライができた、というエレメントはあったかもしれません」
――昨年6月の〈Kenta’s Journal〉では、ブラック・ライヴズ・マター運動を受けて、“Old Dreams”という曲を発表していました。〈虹の中にはより多くの色があるだろう〉と多様性を表現したラインが素晴らしかったです。
Kenta「あのテーマは、自分のなかにずっとあったものでした。当時ボイスレッスンを受けていて、ブルーノ・メイジャーやマック・エアーズの曲を練習で歌っていたんですね。彼らの音楽のようなチル感のあるR&Bポップにインフルエンスされて作ったところもある曲なので、完成させたら、きっとかっこよくなると思います」
――〈愛をもって人と人とのちがいを受け入れ、あなたがあなたであることは素晴らしい〉ということを伝えたかった、と動画ではおっしゃっていましたね。
Kenta「当時は悲しいニュースばかりで、ソーシャルメディアから距離を置きたくなって、実際にInstagramは何か月か休んでいました。ちょうど自分の体が弱っていた頃でもあって、いろいろなことが重なった時期でしたね。そういうときだからこそ必要なのは、愛や赦す心、受け入れることなんじゃないかと思ったんです」