Kenta Dedachiがついにリリースしたメジャーファーストアルバム『Midnight Sun』には、インディーズ時代のアルバム『Rocket Science』(2019年)以降の彼の歩みが凝縮されている。ルーツである賛美歌やゴスペルの要素、そしてポップミュージックに親しんだシンガーソングライターとしての素養を存分に活かしながら、コロナ禍に突入した世界での心の揺れ動き、そのなかから生まれた曲が総決算されているからだ。“Strawberry Psycho”や“Stay with me”、“Fire and Gold”といったシングルで垣間見せてきた、変化し成長した〈新しいKenta〉が、『Midnight Sun』にははっきりと刻み込まれている。

KOSEN(Colorful Mannings)と作り上げた『Rocket Science』から一転して、本作で迎えられたのは、KOSENに加えて、レナート・イワイ(Renato Iwai)、Rouno、Kibunyaという4人のプロデューサーだ。そのコラボレーションがもたらしたのは、現代的でポップなダンスミュージックがあれば、オーガニックなサウンドの心温まるバラードもある、という音楽性の振れ幅の広さ。

その一方で、自身の感情を切々と歌ったリリックから、ストーリーテラーとして人々の人生や恋愛模様を映し出したドラマティックな歌詞まで、各曲が描く物語もかなり多様になっている。だからといってバラバラな作品になっていないのは、やはりKenta Dedachiの歌が軸として、主人公として作品の中心にいるからだろう。『Midnight Sun』は、Kenta Dedachiの歌の力を噛みしめる作品でもある。

ここでは、『Midnight Sun』の収録された全曲について、Kenta Dedachiにじっくりと話を訊いた。ボーナスディスクなどの豪華特典が付いた完全生産限定盤CDのリリースも発表された本作を、かなり深く知ることができるインタビューになったと思う。

なお、ここで触れていない“Tattooed Hollywood”と“Strawberry Psycho”、“Stay with me”、“Fire and Gold”という既発のシングルについては、それぞれのインタビューを参照してもらえると幸いだ。

Kenta Dedachi 『Midnight Sun』 エピック(2022)

 

メジャーデビューの実感

――4月にリリースしたシングル“Fire and Gold”がメジャーデビュー曲でしたよね。『Midinight Sun』はメジャーファーストアルバムということになりますが、変化は感じていますか?

「実際に感じていることはそれほどないのですが、アーティストとしての僕をサポートしてプッシュしてくれるチームのメンバーが増えたので、以前よりブラッシュアップされた作品を作れていると感じています。それが楽しいですし、自分もより成長できているな!って思いますね」

――5月の「Kenta’s Journal」では、〈セルフケアデイ〉として海辺でギターを弾いたり、フィルムカメラで写真を撮ったりしていましたよね。

「Kenta’s Journal Vol.76 SELF CARE DAY 小さい頃から大好きだった歌」

「自然が好きなので、自分自身を休めて気を落ち着かせるセルフケアデイには、海に行こうかなと思って。LAにいる時も、疲れたときは友だちと海に行ったりしていました。

フィルムカメラはeBayみたいなアメリカのサイトで買ったものなんですが、やっぱり写真の質感が良いんですよね。友だちといる時間とかをパシャッと撮ると、そのモーメントをもっと生きられる感じがします」

――海辺にギターを持って行くって良いですよね。ヘッドホンで聴いていたら、波の音がいい感じにミックスされていました。

「波の音、ちょっとうるさすぎたかも(笑)。でも、癒やされますよね」

――あの動画では、“アイ・キャン・オンリー・イマジン”(2020年)で共演された小坂忠さんへの思いを語って、賛美歌“ハレルヤ神の聖所で”を歌っていましたよね。小坂さんが4月に亡くなったことは、本当に残念でした。

「そうですね……。実は、ご体調についてはお聞きしていたので、心の準備はしていたんです。亡くなる前、会ってお話しすることが難しかったので、手紙をお送りしました。でも、その3日後くらいに亡くなってしまったので、読んでいただけたかはわかりません。

忠先生のことはすごく尊敬していましたし、自分もクリスチャンでミュージシャンなので、繋がっている感じがしていたんですね。音楽はもちろん、牧師先生としてグッドニュース(福音)を伝えることに対するパッションも強くて、お人柄にもそれが表れていました。たくさんアドバイスも頂きましたし、〈この人みたいに生きてみたい〉と思った僕のロールモデルです。なので、亡くなったのは本当にショックでしたね」

 

聴いてくれた人をハッピーにする、何かしらのエモーションを与える『Midnight Sun』

――では、本題のアルバム『Midnight Sun』についてお伺いさせてください。今回はどんなプロデューサーが参加しているのでしょうか?

「KOSENさんもレナートさんも参加していますし、Rounoさんという以前“Ambiguous”のリミックスをしてくれたプロデューサーの方と作った曲も入っています。それと、“Green Eyed Monster”は、トラックメイカーでトランペッターのKibunyaさんにサウンドプロデュースしてもらいました。なので、トータルで4人のプロデューサーに参加してもらっています」

『Midnight Sun』ティーザー動画

――特に先行シングルとして発表されたRounoさんとの“Beau”“Sparkling Lemonade”は、新しい扉を開いたかのようなフレッシュでポップなサウンドですよね。驚きました。

「すっごく明るくて、〈夏!〉って感じの曲になりましたね(笑)」

――アルバムのコンセプトやストーリーは事前に考えていましたか?

「聴いてくれた人をハッピーにする曲や何かしらのエモーションを与える曲を作りたいとずっと考えていたんです。たとえば、“Sparkling Lemonade”はポップで〈夏!〉〈ハッピーでいこう!〉という気持ちがスプラッシュしている感じ(笑)。他にも、いろいろなエモーションがこのアルバムには入っていますね」

――前作『Rocket Science』は〈これから冒険に出よう!〉という希望に満ちあふれた作品でしたが、本作ではKentaさんが迷いや悩みも率直に表現していると感じたんです。

「やっぱり、パンデミックがあったから書けた曲もあるんです。なので、“Green Eyed Monster”のような内省的でダークな曲もあります。“New Beginning”のように〈ここまで落ちたら、あとは上に行くしかない!〉という思いを込めた曲もありますし」

――アルバムタイトルからは、〈暗闇の中の希望の光〉というイメージが浮かんだんですよね。どんな意味で付けましたか?

「〈Midnight Sun〉は、〈真夜中だけどすごく明るく光っている太陽〉という意味なんです。北極や南極では太陽の動き方がちがうので、暗闇が何十日も続いたあとに太陽が照りつづける日が来るんですね。暗闇が続いたあとに昇ってくる太陽が〈Midnight Sun〉です。なので、暗闇の中に太陽が出ているのではなくて、すべてが太陽に包まれている、すごく明るいイメージですね」

――なるほど。イントロとして置かれているタイトル曲は荘厳なムードで、圧倒的で見事な幕開けだと思いました。

「あれはほぼ99パーセント、僕の声を重ねた曲ですね。アルバムタイトルを思いついた日に〈これはこういうメロディーだな〉と思って、すぐに作りました。ホーリーな感じや太陽のイメージ、ちょっと非日常的な現象を想像して……そういうことって、すごくパワーを感じるじゃないですか」

――Kentaさんのルーツであるゴスペル的なメロディーだと思いました。

「そうですね。ハーモニーの作り方とか、その影響が大きいかもしれません」

――エフェクトも若干入っていますね。

「レナートさんがアイデアを出してくれました。実は他に音を入れるとか、いろいろとトライしたんですけど、最終的には元のアカペラ的な、声をメインにしたところに落ち着きましたね」

 

〈試練の場所〉を歌った“New Beginning”

――それに続く2曲目の“New Beginning”は、現在のKentaさんの思いをストレートに表現した曲だと思いました。

「18歳の頃は雑誌を読んで〈これからこんなことをしよう!〉といろいろな想像を膨らませていたのに、20歳になってすぐにパンデミックになっちゃって、アメリカにいられなくなって……という、自分の気持ちをそのまま歌っている部分はありますね(笑)。

歌詞にある〈holy ground(神聖な場所)〉は、僕の好きな言葉なんです。この曲では、何も思い通りにいかない、自分で何もコントロールできない、どん底のような場所をあえて〈holy ground〉と呼んでいて。〈どん底に落ちたからこそ新しいことを学べる〉〈こんなに低いところまで来たんだから、あとは上に行くしかない〉と考え方を転換して、〈自分を成長させてくれる試練の場所〉として〈holy ground〉を歌っているんですね。暗い面も前向きに捉えて未来への希望を持つ、という歌詞になっています」

 

甘酸っぱい恋を描いた夏ソング“Sparkling Lemonade”

――シングルとして発表された3曲目の“Sparkling Lemonade”は、そこからいきなり突き抜けるような、弾けるようにポップで楽しい曲ですね。アルバムの構成として、切り替えが見事です。

「突き抜けてますよね(笑)。“New Beginning”で〈あっ、やっと太陽が見えてきた!〉と思ったら、パーッと晴れて〈夏だ!〉みたいな(笑)。そういうトランジションを感じられるので、この曲順は僕もすごく好きです。

元々、アルバムを夏に出すことは決めていたので、先行シングルとして夏っぽい曲を書こうと考えていたんです。それで〈Kentaにとっての夏って、どういうイメージ?〉と制作チームのみんなと話しているうちに、〈う~ん。『ビーチ』のことを歌うのは、ちょっとちがうかも。もっとユニークなテーマがいいね〉という話になって。それで、〈『Sparkling Lemonade』はどう?〉と提案したんです。

実は、LAにStereoscope Coffeeってコーヒーショップがあって、僕、そこのレモネードが大好きなんですよ。時々、Instagramに写真を載せたりもしています。“Sparkling Lemonade”は、そんな発想から生まれた曲なんです。僕の頭の中では、Stereoscopeの美味しいレモネードを飲んで暑い日々を過ごす、みたいなイメージだったんですね」

――軽快で爽やかなサウンドには、アイデアや遊び心が詰まっています。グラスのなかで氷がカラカラと転がる音が印象的でした。

「あの氷の音はRounoさんのアイデア、センスです。この曲は、そもそものスタートからRounoさんと一緒に作った曲なんですよね。僕がギターを弾きながら〈こういうコード、どう?〉と提案したり、“Lemonade”をテーマに詞を書いたりしながら一緒に作っていきました。出来上がった曲のアレンジは、Rounoさんにお任せして。

“Beau”もそうですけど、Rounoさんと一緒に作った曲はどれも明るくてポップで、夏に合う音に仕上がりましたね。Rounoさん、夏に合う曲を作るのがすごく上手いんです(笑)」

――〈You and I〉という印象的なフレーズから始まりますし、歌詞はラブストーリーですよね。

「ただこの曲では、〈sour and sweet〉というように、対照的な2つのものを歌っているんです。愛し合う2人にも、〈sour〉なときと〈sweet〉なときがある。でも、その2つが合わさってこそ夏に欠かせない美味しいレモネードが出来るんだよね、という。そういう、ちょっと甘酸っぱい恋を描きたかったんです」

――人生や恋愛など、さまざまな物事の二面性は、最近のKentaさんの曲や表現に通底するテーマだと思うんです。『Rocket Science』以降に次々と発表された曲を通して、Kentaさんの内面の成長や人生観の変化を感じていました。

「たしかに“Stay with me”のようなラブソングにも、そういう側面がありました。恋愛関係って常に楽しいわけじゃなくて、喧嘩をする時もありますよね。だけど、〈諦めないで一緒にいようよ〉と歌う曲を最近は書くようになりました。

『Midinight Sun』には、そういう表現がいろいろな曲に表れていると思います。『Rocket Science』からの成長が表れた曲が、ここにはあるのかもしれませんね」

 

〈これからやりたい音楽〉のモデル“Better days”

――“Tattooed Hollywood”“Fire and Gold”というシングルに続いて、アルバムの折り返し地点に置かれているのが、Michael Kanekoさんが参加した“Better days”。

「めちゃくちゃ気に入っている曲です。コナン・グレイのようなドラマチックな曲を作ろうと思って書きました」

――3月のワンマンライブ〈Transit Jam〉では、コナン・グレイの“Heather”をカバーしていましたよね。

「大好きなんです。

“Better days”は、歌詞のストーリーもメロディーもおとぎ話のような雰囲気もすごく気に入っています。〈メリーゴーランドで回っていたような、過去の日々は楽しかったよね。でも、そのメリーゴーランドが止まったら、僕たちの関係も止まっちゃった〉というような歌ですね」

――〈Better days〉というのは、その過去の日々のことなのでしょうか?

「そうですね。過去は良かったけど、いまはちょっと枯れてしまって、2人とも良かった頃のことを思いながらいまを過ごしている、という切ない曲です。

いつも希望のある言葉を入れたくなるんですけど、マネージャーさんが〈時には悲しい気持ちのままの曲を書いてもいいと思う〉と言ってくれて、すごくうれしかったんですね。それで、自分のバブルのなかから抜け出せた感じがしました。いままでになかったクリエイティビティーを発揮できた気がします。ストーリーテリングなどを含めて、自分がこれからやっていきたい音楽、作っていきたい曲のモデルになる曲だなって。

ライブで歌ったら感情入れまくりで、絶対楽しいはず(笑)。〈ブリッジを歌っているところでライトがどーんと来る〉とか、ライブの演出のイメージもすでに湧いてきています(笑)!」

 

〈妬み〉を乗り越えるための“Green Eyed Monster”

――ライブで聴くのが楽しみですね。7曲目の“Green Eyed Monster”は、〈Transit Jam〉でも披露されていました。

「僕の弾き語りのデモをKibunyaさんに渡してアレンジしてもらった曲ですね。

大学3年生の終わりに〈1時間のライブをやる〉というリクワイアメンツがあったのですが、コロナ禍でライブができなくなったので、〈30分の動画を提出する〉ということになって。そのために作った曲でした。歌詞もグルーヴもいままでの自分にはない新しい感じに出来たと思っていて、すごく気に入っています」

『Midnight Sun』収録曲“Green Eyed Monster”の弾き語りバージョン。〈Junior Recital S2021〉のために制作された

――Kentaさんの不安定な心情が表れた曲だと感じました。

「これは、心のなかの〈envy(妬み)〉についての曲なんです。〈Green Eyed〉というのは、シェイクスピアの『オセロ』に出てくる〈妬み〉を表した言葉ですね。

パンデミックでLAの学校に帰れなくなって、〈何もかもうまくいかない〉という気持ちになった時期があるんですよ。でも、Instagramを見ると、友だちはビーチに行って遊んでいたり、旅行に行ったり、外ではマスクを付けずに過ごしていたり……。それを見て、〈いいな~〉って。僕は一人だけ日本に取り残された気分になって、一時期はそのことしか考えられなくなるくらい妬んでしまったこともありました。

その時に、〈この気持ちをダイジェストして乗り越えよう!〉と思って書いた曲なんです。〈自分のなかに『Monster』がいるから、本当の自分を見せられない、本当の自分を忘れてしまった。でも、頑張ってそれを乗り越えようとしてるんだ〉というストーリーですね」

――NYドリルのような、うねるベースが強烈です。

「ベースが低音で曲を下支えしているんじゃなくて、かなりキャラクターがあって、まさに〈Monster〉みたいですよね(笑)。

Kibunyaさんが、すごく切ないトランペットも入れてくれました」

 

君の彼氏になりたいのに……複雑な恋愛模様を歌った“Beau”

――アルバムから最初のシングルとして発表された“Beau”には驚きました。〈パララッパッパ〉というフレーズの反復が中毒性抜群で、これまでのKentaさんの作品とはかなり異なるサウンドだったので。

「いろいろな曲調をやっていきたいんです。いまは、みんながみんな〈Kentaの曲は全部聴く!〉というわけじゃないと思いますし、それぞれ好きなテイストのものをピックして聴く人が多いはずなので。だからこそ、僕はこれからいろいろなスタイルやジャンルにトライしたいんですね。もっと幅広いオーディエンスに聴いてもらいたいからこそ、“Beau”のようなこれまでと全然違う曲に挑戦することには抵抗がなかったんです」

『Midnight Sun』収録曲“Beau”

――Kentaさんが敬愛するエド・シーランやテイラー・スウィフトも、曲調のバリエーションは幅広いですしね。

「そうですね。エド・シーランはヒップホップアーティストとのコラボが最近多いですし、テイラーもアルバムによって全然ちがいますよね。それを見ているから、自分もそういうことをやりたいなって思うんです」

――“Beau”はどうやって作っていったのでしょうか?

「まず僕が作ったものをRounoさんに渡して、アレンジしていただいて、一緒に作り上げていきました。サビの部分は、完全に新しいものを一緒に考えたところですね」

――かなりポップで、Kentaさんの楽曲のなかでもこれまでになくエレクトロニックなプロダクションですよね。

「アコースティックギターを叩く音や弦をキュッて擦る音を2人でレコーディングして、それをRounoさんがサンプリングして色々な場所に配置しているので、実はオーガニックな音もけっこう入っているんです。そのコンビネーションがおもしろい仕上がりになっていると思います」

――曲名の〈Beau〉は、〈恋人〉という意味ですよね。フランス語でしょうか?

「フランス語には男性名詞と女性名詞があるんですけど、女性名詞に〈美しい〉と言うときは〈belle〉、男性名詞には〈beau〉と付けるんです。でも、英語化していて、シグニフィカントアザー(大切な人)、ベイビー、パートナー、彼氏といったような意味で、アメリカ人もけっこう使います。

この曲では〈I wanna be your beau〉というフレーズを繰り返すんですけど、〈君の彼氏になりたい〉と思って近づいたのに、また遠くに行っちゃう――そんな関係性で、延々と、ぐるぐると回っているイメージなんですね。サウンドでもそのぐるぐると反復する感じを表しています」

――〈Love never last forever〉というフレーズはかなりドライだなと思いました(笑)。

「ドライですね(笑)。昔はディズニー映画のような永遠に続くラブを信じていたんですけど、実際に人生を生きてみると、それってなかなか難しいですよね。

かつて〈永遠に続くだろう〉と思ったもの、当たり前に感じていたものが失われていく――そういう感覚は、『Midnight Sun』の他の曲にも表れていると思いますね」

――〈You try to look happy on Instagram / But you don’t really stop 苦情〉も非常にリアリスティックなフレーズです。

「僕自身、ソーシャルメディア(SNS)で病んだことが結構あったんです。〈Instagramではみんなハッピーに生きているように見えるけど、本当はそうじゃないんじゃない?〉とか、いろいろと考えました。

たとえば、世界で大事件が起こるとソーシャルメディアでバズって、それ一色になってしまいますよね。しかも、そういう投稿をたった一つ見ただけで、アルゴリズムによってどんどん同じものばかり見させられる……。もしそれが全てだと思っちゃったら、それにコントロールされて、自分の人生にかなりアフェクト(影響)してくると思います。コロナ禍でソーシャルメディア内の雰囲気が暗くなった時期もあったので、そのときの感覚を歌詞に入れてみました」

――一方で、サイトウユウスケ監督のミュージックビデオはポップで可愛らしいアニメーション作品でした。

「サイトウさんがまた、素晴らしい世界観で描いてくれました。ストーリー的には、僕に似たキャラクターが人魚の女の子と一緒にいたくて、頑張ってスケボーのトリックをキメたりしているんだけど、ボードも割れちゃって、願い叶わずペンギンに取られちゃうっていう」

――えっ、あれってペンギンに取られるってストーリーなんですか(笑)?

「そういう物語だと僕は解釈しています(笑)。ヤシの木がいっぱい並んでいて、太陽の光が降り注いでいる風景は、LAのベニスビーチっぽいですね」

 

映画「20歳のソウル」の主題歌、壮大な“Jasmine”

――“Strawberry Psycho”に続く10曲目の“Jasmine”は、映画「20歳のソウル」の主題歌です。主人公のモデルである故・浅野大義さんが遺したメロディーを、KOSENさんと一緒に曲へと仕上げたのだとか。

「最初のAメロが大義くんが作ってくれたところで、そこにKOSENさんと一緒にプリコーラス(Bメロ)をつけて、コーラス(サビ)をつけて、ブリッジもつけて、という感じで作っていきました。

KOSENさんと僕とで共通する好きな音楽って、グー・グー・ドールズみたいなアメリカのロックなんですよね。だから、この曲のサビを作るときもそのことを意識して、ギターを弾きながら〈こういうコードやメロディーはどうかな?〉と2人で話しながら膨らませていきました」

『Midnight Sun』収録曲“Jasmine”

――アレンジはバンドサウンドで、ロックっぽさを感じますね。

「ドラムがどーんと鳴ってますよね(笑)」

――異例の作曲方法だった“Jasmine”ですが、浅野さんの原曲に感じたことってありますか?

「大義くんは吹奏楽部だったので、クラシックや管楽器の音楽の感じが、自分が作るポップソングのメロディーとはやっぱりちょっとちがうなと思いました。

でも、メロディーを聴いたときに、ちょっと賛美歌的な、ホーリーな感じがしたんですよね。そこで通じ合えた感じがしました」

――そんなホーリーな感覚も、映画の主題歌にふさわしい壮大なサウンドに活かされていますね。

「めっちゃ壮大です。レコーディングもすごくて、16人のストリングスセクションと録音しました。あと、空間オーディオミックスを前提に録ったので、マイクをぶわーっと36本も立てて。制作自体もすごく壮大だったんです」

「Kenta’s Journal Vol.77 “空間オーディオで撮ってみた #1” -This is how I feel-」。“Jasmine”の録音とミキシングをしたエンジニアの古賀健一と空間オーディオについて語っている

――作詞は、やはり映画の物語を意識したんですか?

「そうですね。映画の話を頂く前は大義くんのことを知らなかったんですけど、映画の映像を見てストーリーを掴んで、〈大義くんってどういう人だったのかな?〉とか、いろいろなことを考えて書きました」

 

セルフプロデュースの弾き語り“Dandy Lion”、前に進むこと歌った“Rewind”

――そして、“Stay with me”を挟んだ12曲目の“Dandy Lion”は、シンプルな弾き語りだからこそKentaさんの魅力が凝縮されているように感じました。

「いろいろな曲が出来上がったあとに、〈1日スタジオを空けておくから、セルフプロデュースで1曲作ろう〉と言われて、レコーディングの直前に作って録った曲です。アルバムの中で、最後に〈ふう〉って息をつける休憩場所みたいな曲ですね」

――“Dandy Lion”からラストの“Rewind”への流れが素晴らしいですね。レナートさんと制作した曲はすでに何曲か発表されていますが、この“Rewind”が初めて一緒に作った曲なのだとか。アコースティックギターやカホンの音が活かされた、オーセンティックなサウンドですね。

「アコギはコンハード・ゴイス(Conrado Goys)さんというブラジルの有名なギタリストが弾いてくれて、素晴らしく音がいいんですよね。聴くたびに最高だなって思います。

〈つまづいたときは、これまで通ってきた道で経験してきたことを思い出して前に進もう。一人じゃないよ〉と歌いかけるテーマで書いた曲です。書いたのはパンデミックの前だったので、つらいことに直面しているというより、前に進む緊張感を感じているときに少しうしろを向いて、〈みんなが助けてくれたよね〉〈いろいろなことがあったけど、いまここに来られている〉と思って前に進むイメージなんですね。

“New Beginning”の重さとはちょっとちがう、軽くてピースフルな感じがアルバムの最後にいいなって思っています。自分でもほっとする曲です(笑)」

 

自分を知ることができたスペシャルなアルバム

――『Midnight Sun』は、結果的にKentaさんにとってどんな作品になったと思いますか?

「本当にいろいろな曲が入っていて、〈よくこれがアルバムになったな〉って思います(笑)。

でも、自分にとってすごくスペシャルなものになりました。パーソナルな曲もあって、曲を書いた当時の心境を思い出したりもしますが、アルバムに出来たことで乗り越えられた、前に進めた感覚があるのでうれしいですね。たくさんのストーリーを書いて、さまざまなトライを重ねたので、ここにはいろいろなKentaがいると思います。この2、3年で自分のことをかなり知ることができました」

――Kentaさんが自分のことを知っていく過程が表れていますよね。

「あからさまに(笑)!」

――このアルバムもまたKentaさんの新たなデビュー作と言えそうです。

「そうですね。ただ、たとえば歌い方とか『Rocket Science』から変わったところもいろいろとあるんですけど、自分の中心にあるものは変わっていないなって再確認しました」

 


RELEASE INFORMATION

Kenta Dedachi 『Midnight Sun』 エピック(2022)

リリース日:2021年7月27日
配信リンク:https://kentadedachi.lnk.to/TiGGnR

TRACKLIST
1. Midnight Sun
2. New Beginning
3. Sparkling Lemonade
4. Tattooed Hollywood
5. Fire and Gold
6. Better days
7. Green Eyed Monster
8. Beau
9. Strawberry Psycho
10. Jasmine
11. Stay with me
12. Dandy Lion
13. Rewind

■完全生産限定盤(2CD+豪華特典付き)
リリース日:2022年8月24日(水)
品番:ESCL 5428~9
価格:5,500円(税込)

TRACKLIST
Disc 1
1. Midnight Sun
2. New Beginning
3. Sparkling Lemonade
4. Tattooed Hollywood
5. Fire and Gold
6. Better days
7. Green Eyed Monster
8. Beau
9. Strawberry Psycho
10. Jasmine
11. Stay with me
12. Dandy Lion
13. Rewind

Bonus Disc
1. Strawberry Psycho (Eng Ver.)
2. Stay with me (Eng Ver.)
3. Fire and Gold (Eng Ver.)
4. Beau (Eng Ver.)
5. Sparkling Lemonade (Eng Ver.)
6. New Beginning (Eng Ver.)
7. more feat. DedachiKenta & FUNTYME / AmPm
8. Unbreakable / FAITH × DedachiKenta
9. Walking In The Rain (Alright)
10. No Other Way feat. DedachiKenta & Sincere / The Burning Deadwoods
11. Jasmine (Jpn Ver.)
12. アイ・キャン・オンリー・イマジン feat. 小坂忠
13. Where We Started (Acapella Ver.)

 

LIVE INFORMATION
Kenta Dedachi メジャー1st AL『Midnight Sun』リリース記念ワンマンライブ “Set off Jam”

■東京公演
2022年8月17日(水)会場東京・渋谷 WWW X
開場/開演:18:00/19:00
ゲスト : Michael Kaneko
前売り:4,500円(税込/全自由) ※整理番号付

■大阪公演
 2022年8月23(火)大阪 umeda TRAD
開場/開演:18:00/19:00
ゲスト : Michael Kaneko
前売り:4,500円(税込/全自由) ※整理番号付
https://www.kentadedachi.com/live/

FM Nagasaki 40th Kenta Dedachi アコースティックライブ「Midnight Sun」
2022年7月31日(日)長崎県美術館 2Fホール
開場/開演:15:30/16:00
方式:FM長崎リスナー40組80名ご招待 ※要1ドリンク
※応募は締め切られました

TIMELESS SESSIONS in 山形 2022
2022年8月13日(土)山形 やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)
出演 : 岸谷香/miwa/川崎鷹也/Kenta Dedachi/武部聡志(音楽監督・ピアノ)
開場/開演:16:00/17:00
S席/U-25席:8,500円/3,000円(いずれも税込/全席指定) ※未就学児童入場禁止
http://timelesssessions-yamagata.com

 


PROFILE: Kenta Dedachi
米LAの現役大学生、22歳のシンガーソングライター。YouTubeのカバー動画が世界中の音楽ファンの間で話題を呼び、18歳の夏に渡米。同年11月、『This is how I feel / Memories』でインディーズデビュー。その後、LA と日本とを往復しながら制作を続け、2019年10月に発表したファーストアルバム『Rocket Science』はZ世代のボーダレスなポップスとして高い評価を得る。2022年4月リリースのメジャー第1弾シングル“Fire and Gold”(EPICレコードジャパン)よりDedachiKenta改めKenta Dedachi名義での活動をスタート。映画「20歳のソウル」の主題歌となった第2弾シングル“Jasmine”、第2弾シングル“Beau”と3か月連続で新曲を発表。7月20日に第4弾シングル“Sparkling Lemonade”、7月27日には待望のメジャーファーストアルバム『Midnight Sun』をリリースする。8月に東京と大阪でワンマンライブ〈Set off Jam〉を行った後に再渡米し、復学の予定。