2018年12月、7インチ盤としてリリースされたデビュー・シングル『This is how I feel / Memories』から音楽ファンの耳目を集めていたシンガー・ソングライターのDedachiKenta。楽曲のクォリティーの高さはもちろん、その最大の魅力は、やはり伸びやかで透き通った歌声の美しさだろう。

そんな彼から、早くもファースト・アルバム『Rocket Science』が届けられた。故郷・日本と、音楽大学に通う学生として生活する米LAとを行き来しながら制作された本作は、〈19歳〉という絶妙な年齢だからであろう、10代と20代の間で揺れ動く思い、そして日本とアメリカのカルチャーの違いから受けた刺激から生まれている。

もともとはYouTubeでカヴァー・ソングを発表していた彼が、いかにしてソングライターとして、シンガーとしての才を花開かせていったのか。底知れないポテンシャルを感じさせるDedachiKentaに、スタート地点となる『Rocket Science』について、そして彼の現在地についてじっくりと訊いた。

 

ルーツは教会のゴスペルや賛美歌とポップス

――ファースト・アルバムということで、DedachiKentaさんのルーツからお伺いできればと思います。もともとは教会で歌ってらっしゃったんですよね。

「父親が牧師で、教会でゴスペルや賛美歌を聴きながら育ちました。ギターを始めて、最初は教会で弾いていたんです。日曜日に僕がギターを弾きながら賛美歌を歌ってみんなをリードしたり、他の人がカホンのリズムを入れてくれたり。すごくシンプルな演奏をしていましたね」

――シンガーやジャズ・ミュージシャンには教会出身の方が多いですよね。DedachiKentaさんの周りにもいますか?

「いま通っている音楽大学もキリスト教系なので、みんなそんな感じですね。賛美歌って世界中一緒なんですけど、それぞれの国でつくられた讃美歌もあって、それを聴くと違う国の言葉でも同じことを歌っているんだなって感じられるのが面白いんです。アフリカ系の人にとってはパーカッションが入ったグルーヴのあるゴスペルが賛美歌で、逆に僕はオーソドックスなものや最近のポップな賛美歌も知っていますし。

ワーシップ・ソングってコード進行が決まっていて、すごくシンプル。いま僕は大学で音楽を勉強しているんですけど、音楽理論のなかでも讃美歌の形式は認められているんですよね」

――そのルーツを意識することはありますか?

「意識はしていないんですけど、ナチュラルに出てくるものが〈ゴスペルっぽい〉って言われることは多いですね。なので、自分のなかにはそういうものが流れているんじゃないかな」

――一方で、エド・シーランなどポップ・アーティストの音楽が好きだとお聞きしました。その両面があるからこそ、DedachiKentaさんの音楽はユニークなんだと思います。

「毎週、教会で賛美歌を歌っていたんですけど、iPodでいつも聴いていたのはポップスで、どちらも楽しんでいましたね。テイラー・スウィフトやジョン・メイヤー、ボーイズ・ライク・ガールズ……バンドも聴いていたし、フランク・シナトラも聴いてました。ちょっと意外かもしれないけど(笑)」

――メインの楽器はオルガンやピアノではなくギターなんですよね。

「ティピカルな教会のイメージってオルガンだと思うんですけど、逆にオルガンで演奏するところは少なくなっていると思います。アメリカには〈ワーシップ ・ミュージック〉っていう、すごくポップなジャンルもありますし」

――そうなんですね。では、ギターを手に取った理由は?

「僕が通っていた学校はすごく小さくて、小学1年生から高校を卒業する12年生まで、全校生徒が60人ぐらいのところだったんです。そこで先輩たちがギターを弾いていて〈かっこいいな〉と思って、それにインフルエンスされて始めました。最初は簡単な賛美歌を弾いていたんですけど、そのうちエド・シーランの“Lego House”とか、ポップスも弾き語りで歌うようになりましたね。

SSWの音楽を聴くことが多くて、オーガニックでアコースティックな音が好きなんです。僕がアコギを好きな理由は、音をそのまま感じられるからで、音を身体で感じて聴くっていうのが好きですね」

 

YouTubeでカヴァーを歌っていた時代

――音楽を発信しはじめたのはYouTubeが最初ですか?

「そうですね。14歳の頃からです」

――それは周りにやっている人が多かったから?

「やっている人も多かったですし、お金がかからないし、やりやすいし。YouTubeでカヴァーをする人をよく見ていたんです。他の人の曲だけど、その人が歌ったら全く違うものになる――それがとてもかっこいいなと思っていました。

僕の親友もYouTubeをやっていて、そのマイ・ベスト・フレンドが〈Kentaもやってみたらいいじゃん〉ってプッシュしてくれたのがきっかけなんです。YouTubeはオーディエンスが見えない点も好きでした。当時は人前に出るのが好きじゃなかったし。自分の部屋でできるんだけど外に出せるっていうバランスがすごくいいなと思っていたんです」

――自作曲はいつからつくられていたんですか?

「YouTubeを4年間やっていたんですけど、最初はカヴァーをやるのが楽しかったから、オリジナルをつくることは考えていませんでした。

オリジナルをつくりはじめたのは17歳ぐらいのときで、本格的にはサウンド・プロデューサーのKOSENさん(Colorful Mannings)と出会ってからですね。“This is how I feel”が初めてつくった曲です。去年の5月にKOSENさんと会うまでは、それ以外はそんなになくて。そこからいろいろな曲が生まれました。だから、僕のソングライティングのヒストリーはまだ短いんです。今もたくさん学んでいます」

〈人生は難しい〉けど〈信じていれば不可能はない〉

――では、最初のオリジナル・ソング“This is how I feel”が生まれた背景を教えてください。

「姉のウクレレを部屋でポロポロ弾いてたら、〈♪This is how I feel〉っていうメロディーが頭の中で鳴ったんです。それまで歌をつくったことがなかったから、どうやって形にすればいいのかもわからなかったんですけど、ポロンポロン弾きながら浮かんできたものを紙に書いていたら一曲できちゃった、みたいな感じです(笑)。自然と生まれたものだから、そのときの自分が表れているのかなって思います」

『Rocket Science』収録曲“This is how I feel”

――ウクレレは録音でも印象的に使われていますよね。ご自宅には楽器がたくさんあるんですか?

「ありますね。妹も弟も弾くので、今はギターが必要以上にあって(笑)」

――楽器に囲まれて育ったんですね。

「そうですね。YouTubeをやっていたときは楽器以外にもドアを閉める音とか壁を叩く音とかも使って。なんでも音にしてつくるのが好きです」

――アルバムの1曲目“Rocket Science”には環境音や人の声など、いろいろな音が入っていますよね。

「旅先の海の音、実家の周辺の音とか電車の音とか、弟が笑っている声とか……。大学の寮のルームメイトの家にサンクス・ギヴィングで行って、そのときに撮ったビデオの音も入れているんです。彼の家族の末っ子が笑っている声も入っています。めっちゃ可愛いんですよ(笑)。

アルバムにはいろいろなジャンルの曲が入っているので、そのイントロダクションになる曲をつくるなら、ブリーフだけどアルバムのことをちゃんと説明しているものがいいなって。今までの自分があって、ここから飛んでいくよ、(アルバム・ジャケットを指して)こんな感じでジャンプするよっていう作品にしたかったんです。

なので、家族や自分の周りの音、経験してきたことを音でコラージュして、アルバムを聴いたときに当時の自分を〈このときがスタートだったんだな〉って思い出せるようにしました」

『Rocket Science』表題曲

――その“Rocket Science”では〈人生は難しい〉けど〈信じていれば不可能はない〉と英語で語られていますね。これが宣言にもなっていて、アルバムの幕開けを飾るにふさわしい一曲です。

「それは、今の僕のホット・トピックスっていうか。この一年、人生っていろいろなことがあるんだなって感じることを経験しました。時には簡単じゃないこともあるけど、信じて進めば前に行けるんだってことをすごく学んだんです。だから、これからもそうやって生きよう、これがいいスタートだなって。

1曲目の“Rocket Science”で言ったことがベースになって、それをエクスパンドしていくとアルバムの他の曲になっていくっていう感じなんです」

――でも、〈人生は難しい〉と〈不可能はない〉は真逆のことだとも思うんです。

「どちらかだけに傾いちゃうとよくないかなと思って。〈Nothing is impossible〉なんて、軽くは言われたくないじゃないですか(笑)。だから、ちゃんとバランスを取りたかったんです」

 

日本とアメリカ、カルチャーの違いから生まれる歌

――音楽以外では、どんなことからインスピレーションを得ますか?

「人との関係とか、誰かと話したこととか。あとLAは、日本とは環境もカルチャーも違うから、すごく刺激を受けます。でも、刺激を受けたときはそれをアウトプットしなきゃいけないっていうマインドセットでいつもいるので、それをすぐ音にして、 よくボイスメモに録っていますね」

――では、日本とLAを行き来していて、いちばん感じることは?

「アメリカには一人で行っているからか、すごく自由を感じます。あと、自分らしさを出せるっていうのが大きいですね。いろいろな国から人が集まっているから、みんな自分のいいところを出そうとしていて――出さないと負けちゃうっていうか。そういう場所なので、どんどん自分のスタイルのミュージックを出していきなって先生にも言われますし」

――逆に、日本のいいところを感じることはありますか?

「コミュニティーがあるところですね。アメリカにもコミュニティーはあるんですけど、本当にインディペンデントな人は一匹狼みたいな感じですし(笑)。その点、日本だとみんながみんなをリスペクトして人と人との繋がりを大事にしているし、そこがいいなと思います」

――ご自身もコミュニティーを大事にしながら音楽をつくっていますか?

「そうですね。このアルバムでは、本当にたくさんのミュージシャンと一緒にやらせてもらっていて、そのサポートがあってのものなんです。やっぱり人との関係は大事だって感じます。特に“Fly Away (feat. Kan Sano)”はバンドやストリングスが生だったし、Kan Sanoさんにも入ってもらいましたし」

『Rocket Science』収録曲“Fly Away (feat. Kan Sano)”

――そのKan Sanoさんの参加はどういった経緯で?

「“Fly Away”は去年の時点で完成していたんですけど、ブリッジ(間奏)のところにまだ何も入っていなくて、どうしようかなってKOSENさんと相談していたんです。やっぱり上手い人に頼みたいねってなって、Kan Sanoさんにお願いしました」

――感動的なローズ・ピアノの演奏ですよね。出来上がったものを聴いてどう思いました?

「Kan Sanoさんが入ったところは、自分にとっては〈宇宙〉なんですよ。大気圏を突破した宇宙へ行っちゃった感じです(笑)。自分で聴いていても〈これ、すごいな〉って思いますし、新しいものを感じるので、大好きですね。

Kan Sanoさんについては、スタイルもすごく好きなんです。(演奏や歌やミックスを)全部自分でやるっていうのもイマっぽいし、パーソナリティーもすごく好き。表面的にはすごく柔らかい方なんですけど、いつも燃えていて、音楽を本当に理解している感じがするんですよね」

どんな歌も、DedachiKentaの歌になる

――本作『Rocket Science』にはジャズ風からトラップ・ビートのものまで、幅広い音楽性の曲が収められています。いろいろなサウンドに挑戦したくなる理由は?

「KOSENさんと出会う前は超アコースティックだったんですけど、彼と出会ってからたくさん曲を書くようになったし、様々なジャンルの音楽と出会うとすごく成長することができるんだっていうことを知ることができました。もっともっと成長しつづけていきたいなって思って、いろいろな音楽にトライしてみましたね。

YouTubeをやっているときに感じたのは、どんなことをやっても自分が歌ったら自分のオリジナルにできるんだっていうこと。だから、恐れずにチャレンジできました。ジャズを歌っても〈DedachiKentaのジャズ〉になるんだって」

――やっぱり歌声が力強いからなんでしょうね。DedachiKentaさんはいま音楽を勉強されているということですが、高度で難しい音楽に気持ちが向くことはないんですか?

「勉強をし始めてから、シンプルな音楽ってつまらないなって思うこともあったんです。でも、讃美歌はシンプルだからこそ、みんなが歌えるんだなとも思って。SSWとしての自分がすごく難しいものを追求したら、みんなで一緒に歌うっていうのは難しいと思うんです。僕が一番のゴールだと思っているのは、コンサートでみんながひとつになること。音楽的にレベルが高いことも目指してみたいけど、できるだけシンプルにいいものをつくりたいなって心掛けています」

――では、音楽をシェアしたい気持ちがある? YouTubeで音楽を発信しはじめたこととも関係していそうですが。

「ありますね。音楽って自分にとってすごく大切なもので、音楽にはたくさん救われた経験があるので。それはたぶん、他の人とも分かち合って共有できると思うんです」

――逆に、世に出すのが恥ずかしかったり、〈しまっておこう〉って思ったりはしないんですか? 

「ときどき思います。パーソナルな歌が多いので、世界に出すことが怖くなることもあるんです。だけど、パーソナルな歌に自分も励まされるんです。だから、他の人を励ますこともできるんじゃないかって思って。それだったら自分の中にだけ入れておくのではなく、シェアしたいといつも思っていますね」

――やはりご自分の音楽をパーソナルなものだと思いますか?

「このアルバムに入っている曲は全部パーソナルだと思いますね。最初のアルバムだし、自分のベースになるアルバムをつくりたいなと思ったんです。これからいろいろなところに行きたいと思っているんですけど、やっぱり最初はスタート地点、ファウンデーションをちゃんとつくりたいなと思ったので」

 

ルーツと〈今のDedachiKenta〉が詰まった『Rocket Science』

――アルバムには日本語と英語がナチュラルに混ざった曲も多いですよね。いまお話を聞きながら、それもDedachiKentaさんの普段の感じなのかなと思いました。

「日本語と英語、どちらもナチュラルすぎて、自分が普段どっちで考えているのかわからないんですよね。“Life Line”や“Fly Away (feat.Kan Sano)”“Ambiguous”には日本語も入れてみたんですけど、実際やってみるとメロディーやリズムに乗るように日本語を乗せるのは難しかったんです。でも、最終的にはすごくナチュラルなものになったって感じています。

自分のなかから出てくるメロディ一やグルーヴは、やっぱり英語が乗りやすいんです。でも、全部英語で歌うよりも日本語を入れたほうが自分らしい。だから、それにトライしてみたという感じです」

 『Rocket Science』収録曲“Life Line”“Ambiguous”

――英語と韓国語を混ぜて歌うK-Popなど、ローカルな感覚を出しているほうが世界で受け入れられる現象が起きていますよね。

「そのほうが新しくてユニークなんでしょうね。僕の先生や友だちも日本語が入っている曲を聴くと〈これ日本語? どういう意味なの?〉って訊いてくるんです。日本を好きな人も多くて、〈いいね〉って言ってもらえたりして」

――節目を感じさせるファースト・アルバムの制作にあたって、ご自身の過去やルーツに立ち返る作業もしましたか?

「“I'll be fine”はアルバムをイメージしてから書いた曲で、教会で弾いていた讃美歌のシンプルなコードやYouTubeでカヴァーをやっていた頃のスタイルを思い出しながら書いたんです。なので、そのときに戻った感じがしましたね。自分のルーツはここなんだって」

 『Rocket Science』収録曲“I'll be fine”

――逆に、〈最新のDedachiKenta〉が聴ける曲は?

「今の自分を表しているのは“20”だと思います」

 『Rocket Science』収録曲“20”

――“20”は本作のコアのような曲ですよね。そこで歌われているように、〈20歳〉は区切りだと感じていますか?

「〈I’m jumping straight into twenty〉って歌っているように、これから旅立って行くよっていう感じなんです。そういうふうに自分自身をセットしてプッシュしてくれる歌かなって。アメリカだと成人が18歳のところも多いですし、お酒を飲めるようになるのも21歳。なので、〈20〉ってどうでもいい数字なんです。でも“20”っていう曲を入れることで、日本人としてのアイデンティティーが出せるかなって」

 


LIVE INFORMATION

DedachiKenta presents “Rocket Science” Launch Party
東京公演
2020年1月7日(火)東京・渋谷 Veats Shibuya
開場/開演:17:30/18:30
出演:DedachiKenta
ゲスト・アクト:さかいゆう/FAITH
ゲスト・ミュージシャン:Kan Sano
前売り:4,000円(ドリンク代別)
一般発売:2019年11月30日(土)10:00
チケットぴあ(0570-02-9999 https://pia.jp/t)/ローソンチケット(0570-084-003 https://l-tike.com/)/イープラス(https://eplus.jp/)/SOGO TOKYO オンラインチケット(http://sogo.pia.jp/
お問い合わせ8SOGO TOKYO):03-3405-9999 http://sogotokyo.com/

大阪公演
2020年1月8日(水)大阪・梅田 Shangri-La
開場/開演:18:30/19:00
出演:DedachiKenta
ゲスト・ミュージシャン:Kan Sano
前売り料金:3,500円(ドリンク代別)
一般発売:2019年11月30日(土)10:00
チケットぴあ(0570-02-9999 https://pia.jp/t)/ローソンチケット(0570-084-003 https://l-tike.com/)/イープラス(https://eplus.jp/)/モバイルサイト GREENS! チケット(https://www.greens-corp.co.jp/)/LINE TICKET(https://ticket.line.me/
会場販売(Shangri-La):06-6343-8601
お問い合わせ(GREENS):06-6882-1224(平日11:00~19:00)https://www.greens-corp.co.jp/

timeloop
2019年12月23日(月)大阪 Zepp なんば大阪
出演:BASI/tofubeats/向井太一/YOSA&TAAR/AAAMYYY/大石晴子/DedachiKenta
https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/572