話題沸騰中の“Strawberry Psycho”のリリースから2か月、DedachiKentaが新曲“Stay with me”を早くも発表した。今回届けられたのは、“Strawberry Psycho”とはまったく異なるテイストの親密で優しいバラード。一聴して彼らしいアコースティックでオーセンティックな柔らかさをたたえた曲だと感じるが、じっくり向き合ってみると〈新しいKenta〉が随所で顔を覗かせる曲になっている。
まず、バイリンガルのシンガーである彼にとって、もっともナチュラルなのは英語詞や英語と日本語をミックスした歌詞だったが、“Stay with me”はなんとほぼ全編が日本語詞だ。日本語の響きや語感を最大限に活かした“Stay with me”の歌詞は、DedachiKentaの類まれな歌声で運ばれることによって、聴き手にそっと寄り添うものになっている。もちろん音楽面での挑戦も込められており、こだわり抜かれたプロダクションや立体的な音像、ブラジルの名手コンハード・ゴイス(Conrado Goys)がアコースティックギターを担当していることも注目すべきポイントだ。
ここでは、DedachiKentaに、彼が生み出した新たな名曲“Stay with me”について訊いた。インタビューには、プロデューサーとして参加したColorful ManningsのKOSEN、そしてレコーディングやミキシングなどを担当したレナート・イワイ(Renato Iwai)も同席してくれた。

コーヒーショップスタイルの曲を作りたかった
――前回のインタビューでは、“Strawberry Psycho”に至るまでのお話と“Strawberry Psycho”について詳しくお伺いしました。“Strawberry Psycho”はリリース後、Spotifyプレイリスト〈Tokyo Super Hits!〉やJ-WAVEの〈SONAR TRAX〉に選ばれるなど、反響が大きかった曲ですよね。Kentaさんの周囲の方々の反応はいかがでしたか?
DedachiKenta「これまでよりも友だちからのレスポンスが多くて、おもしろかったですね。リリースした日にアメリカの友だちがみんな〈Yo! This is pop!〉〈この歌、めっちゃいいじゃん!〉と言ってくれたり、ドライブ用のプレイリストに入れて車のなかでかけてくれたり。これまでとはちがうスタイルの曲でしたが、みんながそれをアクセプトして(受け入れて)くれたのがうれしかったです。いい形で新しいページを開けました」
――そんなポップな“Strawberry Psycho”から打って変わって、新曲“Stay with me”は感動的なバラードです。この曲は、そもそもどういうところから作りはじめたんですか?
Kenta「最初はテーマがあって、〈コーヒーショップスタイルの曲を作りたい〉というイメージだったんですね」
――リラクシンな感じの曲、という意味でしょうか?
Kenta「そうですね。アンプラグドの、ルームアコースティックスタイルの曲です。それで、Logicでデモを作ったんです。最初はカホンやボンゴなど生のパーカッションやクラップをたくさん入れて、シンコペーションを効かせたリズムのループでしたね」
――ビートからこのバラードが生まれたというのは意外ですね。
Kenta「最初は全編英語詞で、ただの〈Kentaバージョン〉でした。でも、そこにKOSENさんやレナートが加わってくれて、チームで話し合いながら制作を進めていった曲です。みんなのミュージシャンシップが加わって、コライト(共作)した感じで作れたのがよかったと思っています」
〈完璧じゃない〉2人のラブストーリー
――今回は全編日本語詞であることがポイントで、Kentaさんのオリジナル曲では初なんですよね。そして、その歌詞がまた素晴らしい。ラブソングではあるのですが、難しい局面を迎えた2人のことを歌っていて、歌詞にもあるとおり〈宙ぶらりん〉な関係性が描かれています。
Kenta「“Strawberry Psycho”にも、ちょっとそういうところがあったと思います。この曲は、完璧な2人のラブストーリーじゃなくて、2人とも〈完璧じゃない〉ということを感じながら、その関係性をどう続けていくかというステージにいる、もっとリアルな2人の物語なんですね」
――イマジネーションで書いたんですか?
Kenta「イマジネーションもありますね。ただ、“Strawberry Psycho”では自分が足を踏み入れたことないような世界を描いたんですけど、この曲は部屋でコーヒーを飲む場面から始まるように、より身近なものを作りたいというイメージでした」
――そのアイデアはどこから出てきたのでしょう?
Kenta「具体的にどこから来たのかはわからないんですけど、最近はこういう歌詞を書くことが多いですね。自分の生き方、学業のことや人間関係、それにコロナ禍など、人生において思い通りにいかないこと、〈完璧じゃないこと〉って、誰にでもあると思うんです。常にハッピーではいられないし、常に笑顔でいられるわけでもない、というか……。なので、ストレートなラブソングもいいのですが、いまの僕が書きたくなるのはもっとリアルな歌なんです。たぶん、そういった最近の僕の考えや経験が反映されていると思いますね」
――なるほど。最近は物事に白黒つけたがる人が多いと思うのですが、現実の世界で生きていくことってそうじゃないですよね。グレーゾーンやグラデーションがたくさんあって、〈0か1か〉では決められないことが多い。“Stay with me”は2人のことを歌った小さな物語ですが、そんな現実が表れていると思います。

コピーライター浦野紘彰と生んだ情感豊かな日本語詞
――作詞については、Kentaさんの英語詞を浦野紘彰さんと日本語詞に変えていったそうですね。コピーライターである浦野さんとの作業も、Kentaさんにとって新しいチャレンジだったのではないかと思います。
Kenta「そうですね。まず、浦野さんに曲の背景やストーリーをお伝えして、英語を日本語に変えていきました。なかでも〈Forever don’t seem too long with you〉というフレーズを日本語にするのが難しくて……。でも、浦野さんが出してくれたアイデアが素晴らしかったんです。
歌っていてすごくいいなと感じますし、ユニークな表現が多くて、僕が書いたときの気持ちが残されていながらも新しいストーリーが生まれていて、素敵だなと思います」
――2人で試行錯誤してこの日本語詞が出来たんですね。
Kenta「KOSENさんやチームのみんなにも相談して、助けてもらいながら作りました。日本語って難しいですよね(笑)」
KOSEN「英語詞の節回しからなるべく離れないように、違和感のない日本語の節回しをプリプロで探ったりして、何パターンも歌ってみたよね」
――僕が一番のキラーフレーズだと思ったのは、〈解けない魔法はいらない〉というラインです。二重否定なので日本語としておもしろいですし、歌詞に合わせてメロディーが上昇していくので、すごく印象に残りました。ここが、さっきKentaさんがおっしゃった〈Forever don’t seem too long with you〉にあたる部分ですよね。
Kenta「僕も、そこはすごいと思います(笑)」
――Kentaさんは、英語詞とはまた異なる世界が描かれたこの日本語詞について、どう感じていますか?
Kenta「魔法がかけられた感じですね。さきほど言ったように、元の英語詞は自分に近い場所で展開されるストーリーをイメージしていたのですが、日本語詞はより大きなアイデアや世界を描いていて、開放感があります。この曲の新しいインタープリテーション(解釈)が生まれたと思いますし、大好きな曲になりました」
――ドラマティックで、一本の映画の脚本のようですよね。さらに、〈春色の服とか〉から始まる四季の移ろいを歌ったブリッジは歌のリズムも変わるので、アクセントになっていて印象的です。
Kenta「元々は、秋から冬にかけてのサンクスギビングやクリスマスの頃をイメージしていた部分です。でも、あの日本語詞になったことで、いつ聴いてもいい曲になったと思います。春に聴いてもいいし、夏でも……〈ノリノリの夏〉って感じではないけど(笑)。ゆったりした夏にも合いますよね。すごく好きなパートです」
――日本語詞を歌ってみていかがでしたか? 日本語の響きや語感を活かした歌詞なので、難しかったのではないでしょうか?
Kenta「チャレンジでしたが、新鮮でしたね。これまでも部分的に日本語に置き換えた曲は歌っていたんですけど、歌い方やノリ方には毎回苦労していたんです。今回は全編日本語詞なので、デモを録る時はワンラインずつ録っていきました。英語のリズムから抜け出すのは難しかったですね。でも、新しい経験で、すごく勉強になりました。
僕にとって日本語詞の曲を作ることはゴール(目標)のひとつだったので、それに一歩近づけたかなと思います」

レナート・イワイの大きな貢献
――今回、KOSENさんはこれまでと同様にプロデューサーとしてアレンジやプロダクションを担っているのだと思うのですが、レナートさんはどんなふうに関わっているのでしょうか?
Kenta「レナートは、アコースティックギターをリモートで録ってくれたり……」
レナート・イワイ「コンハード(・ゴイス)はブラジルのすごいミュージシャンで、メジャーな曲でたくさん弾いているような名ギタリストなんです。あと、僕は今回、歌も録りました」
Kenta「レナートのスタジオで録ったんだよね。ミキシングもレナートです。Thank you, Renato!」
――レナートさんの手腕や人脈が活かされているんですね。8月にリリースされた“Tattooed Hollywood”と“Strawberry Psycho”も、レナートさんがレコーディングとミキシングを担当していました。
KOSEN「実は、“Stay with me”は“Tattooed Hollywood”よりも先に録りはじめたんです」
レナート「最初でしたね。それより前に作った曲が他にもあるんですが、それはまだリリースしていません」
――前回のインタビューで、レナートさんといろいろな音楽を作ったとおっしゃっていましたね。
Kenta「けっこうな数の曲を一緒に作ったよね。“Stay with me”は僕が作ったデモをみんなとシェアして作っていった曲ですが、最初からレナートとコライトした曲が何曲もあるんです」
――それはリリースされるのが楽しみですね。
DedachiKentaらしさを活かしたプロダクション、最新の空間オーディオへの挑戦
――話は戻りますが、KOSENさんはKentaさんのデモをどのようにプロデュースしていったのでしょうか?
KOSEN「Kentaくんが作ったものを多少整理はしましたけど、すでに大枠が出来上がっていたので、基本的にはそれを活かしました。Kentaくんが録った音をなるべく残したいなと思って。カホンの音やサビに使った厚いコーラスは、Kentaくんが録ったものですね。プリコーラス(Bメロ)に使ったキックの音もKentaくんが録った音で、EQ(イコライザー)を調整して使いました。最初にデモを聴いたときは違和感があったんですけど(笑)」
Kenta「アコギの後を叩いた音ですかね。そっか。そんなに僕の音を残してくれたんですね。Thank you!」
KOSEN「(笑)。あと、サビは音数を少なめにはしています」
――なるほど。〈間〉が活かされたアレンジですよね。バース(Aメロ)にビートを入れていないのも、あえてなんでしょうか?
KOSEN「そうですね。Kentaくんらしいアコースティックな響きを活かした曲なので、音色(おんしょく)についてもなるべくソフトシンセを使わず、アナログシンセを弾いたりしました」
――それと、スティールギターの音が曲の雰囲気に合っているのと同時に、アクセントとして効いていると思いました。
KOSEN「スティールギターは、僕が好きだから入れました(笑)。〈これを入れたらいいな〉って、ピンときたんですよね。シンセでもよかったんですけど、この曲ではなるべく生楽器の響きを活かしたかったので」
――リスナーにとっては親密に感じられる曲ですが、一音一音に耳を傾けていくと聴きどころがたくさんあるおもしろい曲ですね。
KOSEN「ただオーセンティックなだけの曲じゃなくて、シンセベースを加えたり、TD(トラックダウン)のときにビートの音量を上げたり、現代的な要素は残しているんです」
レナート「ロー(低音)をけっこう出しましたよね」
KOSEN「うん。〈いまの時代を生きているKentaくんというアーティスト〉というのを見せたかったし、現代的な音楽を聴いているリスナーにも聴いてもらいたいんですよね」
――聴き手を包み込むような音像は素晴らしいと思いました。“Stay with me”は現在、ロンドンのメトロポリス・スタジオでマイク・ヒラーさんによる360 Reality AudioとDolby Atmos用のミックスが制作中なんですよね。
KOSEN「“Tattooed Hollywood”と“Strawberry Psycho”も360 Reality AudioとDolby Atmosミックスをしているので、3曲目なんです」
Kenta「空間オーディオと言われる新しいミキシングはたくさんの音が聴こえますし、めちゃくちゃかっこいいですよ」
――ヘッドホンで聴くだけなく、試聴会などでぜひ体験したいですね。
日常的なライフのなかで聴ける歌
――最後に、さかいゆうさんなど、たくさんのミュージシャンと仕事をされているレナートさんにとって、この“Stay with me”という曲はどんな曲でしょうか?
レナート「素晴らしい曲ですね。最高だと思っています。
ボーカルのリバーブについては、僕のこれまでの仕事のなかでいちばん苦労したかもしれない(笑)。ディレクターの方から〈言葉で説明できないけど、もっと新しい感じで〉と相談があって、僕がそれを理解するまでに時間がかかったので。でも、結果的にKentaくんのおかげで新しいリバーブを作れて、自分にとっていい経験でした」
Kenta「Yeah!」
KOSEN「ボーカルがダブルになっているので、ミックスも難しかったんですよね」
レナート「そうですね(笑)。でも、作業は本当に楽しかったです。ダブルにするとコーラスのエフェクトをかけたような響きになるので、おもしろいですよね」
――KOSENさんはいかがですか?
KOSEN「最近の曲のなかで、Kentaくんがもともと持っているものにいちばん近い、彼らしい曲だと思います。日本語で歌うことにはちょっとドキドキしていたんですけど(笑)。でも、こういうふうに響くんだ、独特のKenta節だなっていう新しい発見もあって。たとえば、K-Popシンガーの方が日本語詞の曲を歌うのとも、またちがうんですよね」
――Kentaさんとしては、どんなふうに聴いてもらいたい曲ですか?
Kenta「春夏秋冬、いつでも聴ける曲になったので、いつでも聴いてもらえたらうれしいです(笑)。あとは、やっぱりイマーシブ(空間)オーディオでも体験してほしいですね。BGMとして流してもらってもいいし、高級なヘッドホンやオーディオで聴いてもらってもいい。みんなの日常的なライフのなかで聴いていただける歌になったと思います。そのことが、すごくうれしいですね」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2021年12月22日
配信リンク:https://erj.lnk.to/nH9zN5
TRACKLIST
1. Stay with me
PROFILE: DedachiKenta
米LAの大学に通う21歳のシンガーソングライター。99年11月26日、長崎生まれ。幼少期よりアコースティックギターをはじめ、さまざまな楽器を嗜む。14歳から始めたYouTubeへのカバー動画投稿が世界中の音楽ファンの間で話題となり、18歳の夏に渡米留学。2018年11月にオフィスオーガスタの新生レーベル〈newborder recordings〉より第1弾アーティストとして『This is how I feel / Memories』の2曲でサブスク先行配信デビュー。R&B、フォーク、ゴスペルなどのフレーバーを併せ持つメロウかつポップなソングライティングのセンスで、洋邦の枠を越え全国FM 29局のパワープレイに選出された。2019年、YouTubeが注目するアーティスト10組〈Artists to Watch〉に選ばれ、4月にはタワーレコード限定CD『breakfast for dinner』を発表。AmPmが5月にリリースした“more feat. DedachiKenta & FUNTYME”ではボーカルとリリックで参加。LAと日本を往復しながら1年をかけて制作された待望のファーストアルバム『Rocket Science』を10月にリリース。2020年、Kan Sano、mabanuaによるリミックス、日本語詞を交えた自身のオリジナル楽曲のリメイク、小坂忠を客演に迎えた映画の主題歌をコンスタントに発表するかたわら、話題のCMソングの歌唱などで活動の幅を広げる。長引くコロナ禍で一時帰国となった日本滞在は丸1年に及んだが、2021年に入り大学が再び開校。3月にLAに戻り、今夏より4年目の大学生活をスタートさせた。10月15日に“Tattooed Hollywood”に続く新曲“Strawberry Psycho”をデジタルリリース。YouTube/Instagram IGTVにて月初の水曜日にレギュラー企画〈Kenta’s Journal〉を配信中。洋楽カバーやLAでの日々の暮らしを発信するTikTokアカウントも開設した。
