ストルツマンの人生と音楽性を網羅した注目作

 クラシックのソリストとしてはもちろん、チック・コリアやウェイン・ショーターなどのジャズ・アーティストとも共演を重ね、グラミー賞の受賞者でもあるクラリネット奏者リチャード・ストルツマンが、生誕80年を記念して『ラスト・ソロ・アルバム ―フロム・マイ・ライフ―』を発表。6月から日本各地でアルバム発表ツアーを行い、8月にはチック・コリアに捧げるコンサート・ツアーも並行して行う。

 「音楽は古臭いが、過去から現在に至る時間の描写が素晴らしい」という『New Cinema Paradise』のテーマでアルバムは幕を開ける。同時収録の“Deborah’s Theme”と共に、映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの作品だ。“Begin Sweet World”は旧友ビル・ダグラスの1970年頃の作品で、「シンプルながらジーンとくる曲で、音楽に対する姿勢が変わり、人々が音楽を求める理由を再認識して、クラシック以外の音楽とも真剣に取り組むきっかけになった」という。

RICHARD STOLTZMAN 『ラスト・ソロ・アルバム -フロム・マイ・ライフ-』 コロムビア(2022)

 クラシックを学び始めた頃のリチャードにとって、ブラームスが美しいクラリネット作品を書いていたのは重要な発見だった。“間奏曲Op.118-2”はピアノ曲だが、最晩年の作品として共感を覚えたという。レノン&マッカートニーの“Michelle”は挾間美帆による現代曲風のアレンジで、「クラリネットの音域の使い方が絶妙で、昔親しんだビッグバンドを思わせるハーモニーのセンスも良いと思ったら、彼女もクラリネットを勉強した経験があり、自身のビッグバンドも持っているというので納得した」とのことだ。

 “anima -the waxing light- +an ode to spring+”は、ジョン・ゾーンがリチャードと知り合ったのをきっかけに書かれた作品のうちのひとつ。エリオット・カーターの“Gra”はポーランドの作曲家ルトスワフスキの80歳の誕生日を記念した曲で、本作の趣旨にもぴったりだ。アルバムを締めくくる“Seventy-Eight?”は、ユーディ・ワイナーが2年前にリチャードの誕生日のプレゼントとして書いた曲である。

 アルバムでは、妻でもあるマリンバ奏者のミカが7曲で共演しているが、彼女はゾーンや挟間とリチャードとの橋渡しやバッハの“シンフォニア第11番”などの選曲でも重要な役割を果たしている。「マリンバは特定の時代との結びつきが希薄だからこそ、時代を超えたシンプルで深みのある表現ができると思う。ミカのマリンバと演奏していると、全てがピュアになったような気になるんだ」

 


LIVE INFORMATION

ワークショップ&ミニコンサート
2022年7月2日(土)~7月3日(日)福島県相馬市

リチャード・ストルツマン80歳記念バースデー・コンサート
2022年7月12日(火)東京・富ヶ谷 白寿ホール
協力出演:ミカ・ストルツマン/小菅優/鈴木大介 ほか

デュオ・リサイタル
2022年7月16日(土)東京・代官山 ヒルサイド プラザホール
2022年7月26日(火)東京 武蔵野市民文化会館

MUZAサマー・ミューザ&ジャズナイト
東京シティ・フィル+藤岡幸夫

2022年8月4日(木)神奈川 ミューザ川崎シンフォニーホール
「Tribute to Chick Corea」ジャズSextetとの共演
2022年8月6日(土)神奈川 ミューザ川崎シンフォニーホール

「SPIRITS OF CHICK COREAツアー」(with Steve Gadd)
2022年8月9日(火)、11日(木・祝)、14日(木)福岡・博多 キャナルシティ劇場
2022年8月16日(火)大阪・梅田 ビルボードライブ大阪(未定)
2022年8月17日(水)、18日(木)東京・南青山 ブルーノート東京(予定)