熱い思慕と自由な歌心を持ちあう夫妻の、ワールド・プレミアなデュオ作
『Duo Cantando』、“歌うデュオ”。そう題されるのは、米国で活躍するマリンバ奏者と世界的なクラリネットのソリストのデュオのアルバムだ。スティーヴ・ ガッドとの “ミカリンバ” の活動でも知られるミカとリチャードは、 2012年に結婚している。
「リチャードのクロスオーヴァーのCDが特に好きで、マリンバで彼のようなアーティストになりたいと思っていたんですよ。その後、結婚しましたが、彼が私のバンドに入るとお客さんも喜ぶし、スティーヴもリチャードはマストだと言っていたんです。そんなおり、2人でデュオの公演をやってみたら、望外に皆さんに喜んでいただきまして、それからデュオのレパートリーを増やしていきました」(ミカ)
「普通の奏者はしないんだけど、僕はクラリネットを演奏する時にヴィブラートをかけるんだ。過去、僕はマリンバの音ってそんなに好きじゃなかった。だけど、ミカは柔らかいマレットを使い、トレモロをした時にヴィブラートがかかったような音になる。それが僕のヴィブラートしたクラリネットと重なると、新しいサウンドが生まれるんだ」(リチャード)
そうした積み重ねが結晶したのが、繊細さや滋味が溢れる『Duo Cantando』だ。ヨー・ヨー・マやウィントン・マルサリスら大御所を手掛けるスティーヴン・エプスタインの制作/エンジニアリングのもと、昨年の7月から録音は始まった。
「曲は、リチャードがやりたいことを考えて、ほとんど私が決めました。クラリネットとマリンバのデュオで活きる、新しい価値のある曲をやりたかった。だから、ほとんどの曲がワールド・プレミアなんです」(ミカ)
取り上げた楽曲は、武満徹の作が2曲、チック・コリアのピアノ・コンチェルトや彼が1970年代前半に書いた静謐曲(そこには、コリアも加わる)、さらにリチャードの朋友であるビル・ダグラス、ジョン・ゾーンや大島ミチルらへの委託曲など。それらが、デュオやそれぞれのソロ、はてはオーケストラが入る曲まで、様々な設定のもと開かれる。
「マリンバとクラリネットの音のイメージというのは、皆んなが持っていると思う。本作を聴いて、そのイメージを超えるものを認め、こんなのは聴いたことないと思ってもらえるんじゃないかな」(リチャード)
「マリンバの音は今まで私がこれまでレコーディングしてきた中で、ベスト。そして、私のヒーローであるチック・コリアとやることができて夢が叶いました」(ミカ)
研ぎ澄まされたやり取りの奥には、お互いへの熱い思慕や尽きぬ好奇心、率直な歌心などがこれでもかと息づいている。