Photographer: James Bort
Copyright: Parlophone Records Limited

40歳記念――20年間の録音の軌跡と新録音で構成したベスト盤

 フランスを代表するチェリストのひとり、ゴーティエ・カピュソンが40歳の誕生日を記念し、『Souvenirs/思い出』と題する3枚組の録音をリリースした。

 「1枚目は2020年11月のパンデミックの最中に、気持ち新たにフィラルモニ・ド・バリで録音を行いました。J.S.バッハ、コダーイ、デュティユーの無伴奏作品と、最後に僕のチェロの弟子で、いまは作曲家として活躍しているハビエル・マルティネス・カンポスの曲が収録されています。バッハとコダーイとデュティユーの作品は当初から決めていたのですが、マルティネスが〈曲が仕上がったよ〉といって持ってきてくれたので弾いてみたら、これがすばらしい! そこで急遽新譜に入れようと考えたわけです」

 ゴーティエは以前から後進の指導に尽力しているが、現在は18歳から25歳の若手音楽家に演奏の場や録音の機会を提供する財団を作り、熱意を傾けている。

 「アルバムの2枚目と3枚目は、僕がワーナーに録音を始めてから20年間の記録のなかから選曲しています。アルゲリッチ、ハイティンク、ユジャ・ワン、ブラレイをはじめ、本当に数多くの共演者との足跡をたどっています。これまでの録音を振り返ると、いずれも思い出深く、どれひとつとして同じ演奏はありません。僕は1701年製のマッテオ・ゴフリラー〈L’Ambassadeur〉を使用していますが、これは一目ぼれした楽器。とても気難しくてすぐには弾きこなせなかったけど、いまは相思相愛。昨日よりは今日、今日よりは明日の方がいい音が引き出せると、常に前向きに考えています」

GAUTIER CAPUÇON『Souvenirs/思い出』 Erato(2021)

 このCDはジャケットの写真がとても美しい。緑豊かな自然のなかで撮られた写真が印象的だ。

 「僕はフランス東部のサヴォワ県シャンベリの出身なのですが、いまも両親がそこに住んでいて、CDジャケットはサヴォワで撮ったんです。家の隣が農場で、写真には羊が写り込んでいる。子どものころから乗馬が好きで、馬も登場。10代のころに乗っていたバイクも出演しちゃった(笑)」

 世界を飛び回る多忙な身だが、今回の来日直前にはウクライナに演奏に行ったという。

「感動的なコンサートでした。音楽家はこういう時期にこそ、演奏で平和を訴えるべきだと思う。みんな涙して喜んでくれました」

 来日時の演奏は自信に満ち、各曲で独自の物語を創造した。実力派の道を邁進しているゴーティエ、新譜にそれが凝縮している。