北からガールズ・メタルの新鋭が登場だ。北海道は札幌を拠点に活動する4人組、ArkRoyal(アークロイヤル)が、4曲入りミニ・アルバム『Vengeance』を完成させた。Illumina(ヴォーカル/ギター)、いか(ギター)、めぐちゃん(ドラムス)らが集まって2018年3月に始動したこのバンドは、同年7月にデモCD『The Battle of sacred』を発表。翌19年5月に『Limited Edition EP』、8月にファースト・ミニ・アルバム『ARISE』を立て続けにドロップした。その後は2020年10月に新ベーシストのMarsaが加入して現体制が整い、地元の札幌や東京でのライヴ活動を中心にその名を徐々に浸透させている。
その前作『ARISE』はモノクロのジャケが物語るように、憂いを帯びたダークなインストから始まり、エクストリーム・メタルに接近したアグレッシヴな一面も垣間見せた内容だったが、現編成で挑んだ初作にあたる今回の『Vengeance』は、4曲入りというコンパクトさも相まって、新たな気概とパッションを凝縮した音像に仕上がっている。叙情的なダークさは後退し、ライヴ映えするエネルギッシュな空気感が見事にパッケージされていて、楽曲からも〈心機一転〉〈二度目のデビュー〉と形容したくなるフレッシュな勢いを感じずにはいられない。彼女たちの音楽的な特徴は、80年代の正統派メタルに軸足を置いた抜けのいいサウンド。とりわけ、いかは日本が誇るヘヴィ・メタル・バンドのGALNERYUSを筆頭に、スレイヤーやメガデスなどのスラッシュ・メタルも好んで聴いているようだ。そうしたバックボーンも伝わる、オーセンティックかつスラッシーなアプローチもバンドの持ち味となっている。
『Vengeance』というタイトルはジューダス・プリーストの名盤『Screaming For Vengeance』(82年)を連想させるものだが、唯一5分超えの楽曲となったオープニングの表題曲“Vengeance”は、文字通り復讐(Vengeance)の狼煙を上げるかのような意気盛んなサウンドに胸を焦がされる一曲だ。イントロから鋭いギター・リフと手数の多いドラムで幕を開け、そこにIlluminaが伸びやかな歌声を披露。後半は哀愁を帯びたギター・ソロがドラマ性を煽り、その緊張感はラストまで途切れることがない。
2曲目の“Novice”はノリのいいリフが先導するダイナミックな曲調に仕上がっている。無駄を削いだシンプルな演奏からは、首を振り、拳を上げて騒ぐ観客の姿が目に浮かぶよう。〈胸に宿る刃 尖れ 突き抜くまで〉と強い意志を秘めた歌詞も楽曲の強度を支えている。
続く3曲目の“業-karuma-”はポエトリー風の歌い回しや、随所にスクリームを織り込んだ変化球のナンバー。後半では邪悪なギター・ソロがうねりを上げ、メロデス風味のニュアンスを取り入れた攻撃性の高さを見せつける。ちなみに他3曲は詞曲をIlluminaが手掛けているものの、この“業-karuma-”だけはIllumina作詞/めぐちゃん作曲という分業制を取っている。作中でもひときわ妖しげなテイストは、めぐちゃんの音楽的嗜好も反映されたものに違いない。
そして、ラストを飾る“Reincarnation”はわかりやすいリフを用い、Illuminaのたおやかな歌声を押し出したナンバー。〈終わらない 闇の中で「目覚めよ」と呼び醒す〉〈戻れない 時流の中で来世(つぎ)へと光求め ゆけ〉といった歌詞の言葉は戦争やコロナ禍の現世を映し出しつつ、聴く者の背中を力強く押すメッセージのようにも読み取れる。新たな名刺代わりとなる今回の『Vengeance』を引っ提げて、彼女たちがシーンに頭角を現すのは時間の問題かもしれない。
ArkRoyal
Illumina(ヴォーカル/ギター)、いか(ギター)、Marsa(ベース)、めぐちゃん(ドラムス)から成るヘヴィーメタル・バンド。北海道の札幌を拠点に結成され、2018年3月に活動を開始。同年7月に初音源となる『The Battle of sacred』をリリースし、全国各地でライヴ活動を展開する。2019年にはEP『Limited Edition EP』とミニ・アルバム『ARISE』を立て続けにリリースし、札幌と東京で初のワンマンを開催。2020年10月にMarsaが加入して現体制となり、このたび新体制での初音源集となるミニ・アルバム『Vengeance』(Village Again)を7月27日にリリースする。